あの夏、いちばん静かな海。

あの夏、いちばん静かな海。

作品情報

新着感想・ネタバレ

Daiki_Kinoshitaの感想・評価
1991年公開。

台詞無しのト書きだけで、十分に2人の関係も感情もしっかりと伝わってきた。

主人公と彼女と2人を取り巻く人々の人間味が素晴らしく、観終わってこんな気持ちになれてとても心地よい。

この色味、やはり自分はとても好きだし、この作品の構成がとても勉強になった。
southpumpkinの感想・評価
ある夏、サーフィンを始めた男とそれを見守る女の物静かなカップルの物語。
言葉少な男が折れたサーフボードを見つけ、彼女と思われる女と仲良く海に出かける。主人公の二人が喋らないせいで、説明的なセリフは全くありません。しばらくすると二人に関するある事実が自明になります。が、それもあまりに自然。注意深く見ていないと気づかないように見えますが、しかし誰にでも気付くような演出です。このあまりに自然体な演出はラストでも現れます。僕は身を乗り出して「ん?」と声が漏れてしまいました。
二人の間に過剰な喜怒哀楽を表現する演技は存在しません。基本的に無表情。アキ・カウリスマキを思わせます。純愛映画にもかかわらず、キスシーンすらないのです。ですが言葉を交わさずとも、表情に表さずともわかる、男と女がお互いを思う気持ち。それを物語とカットだけで繊細に表現していくのです。
キタノブルーが本当に美しい。淡い青色が海と空だけではなく、映画全体に配置されています。青く、淡く、そして不可逆な夏の思い出を切り取ったような映画です。北野武最高傑作でしょう。
____RiN____の感想・評価
あの有名な淀川長治をして、「モダン、粋、上手い」と言わしめた北野作品において、この作品は一番の異色作ではないかと思います。黒澤明にも絶賛された今作、美しい映像と久石譲によるノスタルジックな音楽に綴られ、彼のもっとも得意とする暴力表現を封印し、聾唖の恋人たちを主人公に据え、純粋に恋愛をのみ表現する映画です。
ソナチネ以降、「キタノブルー」とファンの間で評された青の表現は、この映画でこそ強く感じました。海のブルーは言うまでもなく、全編を通して寒色のフィルターを通したような、哀し気な静謐さが満ちます。
会話を交わさない恋人たちは、つかず離れず、すべてを共有しているかのように沈黙を交わします。村上春樹が「完璧な恋人」と評した、まるで二人で一つであるかのような恋人たちを映像にするとこうなるのでは、と思いました。
それは理想的で完璧で美しいものであるとともに、どこか破滅的に見え、それが意図したものかはわかりませんが、恐ろしくすらありました。

ひたむきな茂の姿勢とか、それを見守る貴子の眼差しとか、そんな二人に心動かされる周りとか、夜、手をつないで歩くふたりとか、言い出したらきりがないくらい好きなシーン、登場人物があるのですが、まとめると、好きだなあ…としみじみ思います。北野作品に対しての思いはもう、恋です。
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