2020年11月13日更新

「日本沈没2020 劇場編集版」が公開!ヒット作を連発する天才監督・湯浅政明に迫る5つのこと

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日本沈没2020
©“JAPAN SINKS : 2020”Project Partners

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「日本沈没2020 劇場編集版」を手がけた天才監督・湯浅政明とは?

日本沈没2020
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「湯浅政明(ゆあさ まさあき)」と聞いても、ピンとこない人も多いかもしれません。実はアニメ業界で大活躍し、日本が世界に誇る監督なのです。名前は知らなくても、彼の作品を1度は見たことがあるはず! 2020年11月13日にNetflixアニメ『日本沈没2020』を自ら再編集、再構成した「劇場編集版 シズマヌキボウ」が公開され、今要注目の監督なのです。名アニメーターとなり、ヒット作を連発する天才監督となるまでに、彼はどんな道のりをたどったのでしょうか。 この記事では、天才アニメ監督、湯浅政明を5つの項目に分けて紹介しつつ、作風やその魅力についてぐぐっと迫っていきます。

1. 『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』で原画マンとして経験を積む

湯浅政明は1965年3月16日生まれ、福岡県出身。九州産業大学芸術学部を卒業後、1987年にアニメ制作会社の亜細亜堂に就職しました。 湯浅は能力の高さからすぐに原画担当に昇格し、1990年から放送中の『ちびまる子ちゃん』では本編作画、初代OP・EDの作画を担当。お馴染みのED曲「おどるポンポコリン」の絵を描いたのは、湯浅監督だったのです。 フリーランス転向後からは『クレヨンしんちゃん』に各話作画監督・設定デザイン・原画として参加し、業界内で知名度が上昇します。1993年から始まった劇場版シリーズでは、第1作目から設定デザイン・原画を担当し、クライマックスの原画なども任されました。 映画「ヘンダーランドの大冒険」(1996年)と、「ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」(2014年)では絵コンテも担当しており、『クレヨンしんちゃん』に欠かせない存在です。

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2.映画初監督作品『マインド・ゲーム』でアニメ映画賞を多数受賞

名作アニメ『キテレツ大百科』(1998年)、究極の異色作『ねこぢる草』(2001年)などに携わる傍ら、2004年に『マインド・ゲーム』で長編監督デビュー。脚本も自ら担当し、第8回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞、パリ・KINOTAYO映画祭大賞ほか多数の賞を獲得しました。 ロビン西の同名漫画を原作に、初恋の人と再会したばかりの主人公・西がヤクザに殺され、決死の思いで神様に逆らい現世に戻る様を描くファンタジーです。 湯浅監督の作風は、童話のような色彩と流曲した線、斜めに傾いた構図が特徴。本作もデフォルメされたキャラクターが活き活きと動き、独特の世界観を構築しています。また、声優を務めた今田耕司をはじめ、藤井隆ら吉本興業の芸人が実写で出演するシーンも!既存の手法にとらわれない、実写と2D、3Dを融合させた斬新な映像表現に注目が集まりました。

3. 次々と名作アニメを世に送り出す!

冒頭で触れたとおり、原画や作画、絵コンテなどを担当したアニメだけでなく、監督として世に送り出した作品も名作タイトルばかりです。 ここからは、湯浅政明が監督を務めた主なアニメを紹介しましょう。

アニメ『ケモノヅメ』(2006年)

2006年にWOWOWで放送された『ケモノヅメ』にて、TVアニメの監督としてデビュー。湯浅は原作とシリーズ構成も手がけました。2020年現在はNetflixにて配信中です。 本作のストーリーは、食人鬼を狩るための戦闘集団「愧封剣(きふうけん)」の師範代・桃田俊彦と食人鬼の上月由香が許されない恋に落ち、逃亡を決意するというもの。俊彦の弟である桃田一馬は、「愧封剣」を運営し始め、駆け落ちした2人の行方を追い始めます。 食人鬼と人間の禁断の愛に生きる俊彦、そして組織の改革に狂奔奔走し、精神的に追いつめられていく一馬。さらに、一馬を支えつつも何かを企てている大葉久太らそれぞれの思惑が絡み合い、物語は進んでいきます。 エロティックかつバイオレンス、ホラー、ラブコメディと多くの要素を含む本作。エロとグロ、湯浅監督の芸術性が混ざりあった大人向けのR-15指定作品です。

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アニメ『カイバ』(2008年)

前作『ケモノヅメ』から一転し、絵本のような世界を創り上げた『カイバ』。タイトルの「カイバ」とは、脳の記憶を司る器官「海馬」を意味しています。 本作の舞台は、記憶をデータ版に保存することが可能になり、若く美しく新しい肉体に乗り換えることが可能となった世界。この世界では記憶を管理することも可能となり、記憶の売買や改ざん、さらには他人の記憶を盗むことすら行われます。 主人公カイバはなぜか記憶を失っており、様々な星で様々な人に会い、記憶を巡る冒険を経て次第に記憶が蘇っていくのですが……。 『カイバ』では原作・監督・脚本を手がけ、第12回文化庁メディア芸術祭にてアニメーション部門優秀賞を受賞しました。

アニメ『四畳半神話体系』(2010年)

湯浅が監督と脚本を務め、森見登美彦の同名小説をアニメ化した『四畳半神話大系』。TVアニメ作品としては史上初めて、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で大賞を受賞しました。 原作と同じ京都市を舞台としつつも、1年間の物語を1晩の出来事に再構成。大学生の「私」がバラ色のキャンパスライフを目指し、パラレルワールドを旅するという青春学園モノです。 「私」が選ぶサークルが分岐点になるため、各話でそれぞれ異なるサークルに入ったり、組織に所属したりします。すべての世界は違うようで似通っており、第4話では「私」はこれらの並行世界を横断する展開になるので必見です。 本作は原作の小説的な言葉遣いを活かしたことから、“脚本家泣かせ”とも言われました。早口のセリフとナレーションが多用されるため、演じる声優にも早さが求められたのだとか!

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4.湯浅政明が設立した「サイエンスSARU」とは?

株式会社サイエンスSARUとは、2013年に設立された日本のアニメ制作会社です。湯浅が国際色豊かな仲間と立ち上げた同社は、作業効率を上げる工夫をしつつ、作品のクオリティも維持。その上で、労働環境の改善が可能だと示すことを目標としています。 設立のきっかけは、米の大人気アニメ「アドベンチャー・タイム」シリーズで湯浅がゲスト監督を務めた際に、発注の関係上、会社単位での依頼を望まれたから。 同作では「Food Chain」というエピソードの監督・脚本・絵コンテを担当し、東洋的な世界観も取り入れられました。海外では“全編フラッシュで撮影する”技法が主流で、サイエンスSARUが制作した多くの作品でも使用されています。 湯浅は2020年3月25日付で代表取締役社長を退き、取締役のチョン・ウニョンが後任に就任。2021年公開予定の『犬王』には、引き続き監督として関わるそうです。 ここで、株式会社サイエンスSARUが制作したアニメ作品をピックアップしてみましょう。

アニメ『ピンポン THE ANIMATION』(2014年)

窪塚洋介主演で実写化もされた、松本大洋の人気卓球漫画を原作とする「ピンポン」。2014年4月から月まで、フジテレビ「ノイタミナ」枠にて放送されました。 卓球に魅了され、スポーツに青春をかけた高校生たちの友情と成長を描く青春ストーリー。原作の絵をほぼそのまま再現する試みが行われ、アニメならではの躍動感を実現。原作では形にならなかったアイデアの数々が取り入れられており、群像劇の要素がより強くなりました。 本作ではあらかじめ用意された脚本はなく、湯浅監督が自ら絵コンテを描き下ろし、その作業中に台詞などを考案したのも特徴です。

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映画『夜は短し歩けよ乙女』(2017年)

『夜は短し歩けよ乙女』
(c)森見登美彦・KADOKAWA/ナカメの会

森見登美彦の第20回山本周五郎賞を受賞作にして、累計売上130万部突破の大ベストセラー『夜は短し歩けよ乙女』をアニメ映画化した作品です。 物語の舞台は、京都大学らしき大学とその周辺。冴えない男子大学生の「先輩」と可憐な「黒髪の乙女」の視点から、彼らの恋模様と周囲で起こる不可思議な事件が描かれます。監督の湯浅政明、脚本の上田誠ら『四畳半神話大系』の制作陣が6年ぶりに再集結しました。 ドラマ「逃げ恥」(2016年)で一躍注目を浴びた星野源が主演を務め、ヒロインの花澤香菜、神谷浩史や中井和哉ら人気声優が出演したことも話題に!本作は第41回日本アカデミー賞にて、最優秀アニメーション作品賞を受賞しました。

5.配信アニメも良作揃い

デビルマン
(C)Go Nagai-Devilman Crybaby Project

2018年に配信されたNetflixアニメ『DEVILMAN crybaby』を皮切りに、湯浅は配信アニメを多数手がけており、中には劇場公開が決まった作品も! 「DEVILMAN」は画業50周年を迎えた漫画家・永井豪の代表作を初めてほぼ忠実に、結末まで映像化したことが話題を呼びました。配信アニメは制約が少ない分、作品の特徴であるエロ・グロ表現の映像化が可能となり、『ケモノヅメ』との類似も見られます。 2019年はAbemaTV、TERASAで独占配信された『SUPER SHIRO』の総監督を務め、約5年ぶりに「クレヨンしんちゃん」シリーズに参加。本作は外伝シリーズの最新作で、野原家の飼い犬・シロがスーパーヒーローとなり、世界征服を企む発明犬・デカプーと戦う物語です。

日本沈没2020
©“JAPAN SINKS : 2020”Project Partners

2020年にはSF界を代表する知の巨人、小松左京の小説が原作の『日本沈没2020』がNetflixで全世界独占配信され、こちらも大きな注目を集めました。 舞台を2020年東京オリンピック終了直後、巨大地震が発生した架空の日本に変更し、危機から逃れようとする一家のてん末が描かれます。大胆なアレンジを加え、祖国を失った人びとのリアルを描いた本作は、2020年11月13日に劇場編集版が公開されました。

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湯浅ワールドから目が離せない!『夜明け告げるルーのうた』で大快挙

『夜明け告げるルーの歌』
(c)2017ルー製作委員会

2017年には、自身初のオリジナル長編映画『夜明け告げるルーのうた』が、アヌシー国際アニメーション映画祭長編部門クリスタル賞(最高賞)を受賞しています。これは、『紅の豚』の宮崎駿と『平成狸合戦ぽんぽこ』の高畑勲に次いで、日本人史上3人目の快挙です。 2019年は「ルーのうた」と同じ「水」をモチーフに、サーファーの女性と消防士の男性の関係を綴る青春ラブストーリー『きみと、波にのれたら』が公開。2020年は「アニメ制作」をテーマとする『映像研には手を出すな!』が放送され、幅広いジャンルのアニメを手がけました。 近年は従来の作風に加え、描き込みの増加やリアルに寄った王道のアニメ演出も見られます。世界が注目する湯浅監督はどこまで進化するのか、今後から目が離せません。