2017年7月6日更新

ジョルジュ・ドルリュー、『ピアニストを撃て』の作曲家としても知られる親日作曲家を知ってる?

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隣の女

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ジョルジュ・ドルリューって誰?

ジョルジュ・ドルリューは1925年3月12日生まれ、フランスのルーベ出身の作曲家です。フランスをはじめ様々な巨匠監督の作品で音楽を担当し、350曲以上の映画音楽を残しました。 ドルリューはアマチュア・オーケストラを率いる祖父や、歌とピアノが得意な母など、音楽に囲まれて育ち、14歳のときには地元の楽団でクラリネットを演奏するようになります。家計を助けるため学校を退学し、工場で働きながらも楽団での活動を続け、のちにピアノに転向しました。 1945年に奨学金を得てパリ音楽院に進学し、1949年の卒業時にはローマ賞を受賞しイタリアに留学しています。オペラの作曲や短編ドキュメンタリーの仕事を経験した後、1959年にアラン・レネ監督の『二十四時間の情事』で初めて映画音楽を作曲。その後から映画音楽やテレビ映画用音楽の作曲を主な活動としました。

フランスを代表する監督の作品になくてはならない存在!

ジョルジュ・ドルリューはフランスを代表する映画監督、フランソワ・トリュフォーの作品になくてはならない存在として知られています。

ヌーヴェルヴァーグらしい自由奔放なサスペンス【1960】

『ピアニストを撃て』は、アメリカの小説を原作としたモノクロ作品で、舞台はアメリカからフランスに移され、登場人物の性格にも変更がされています。 揺れるカメラの映像や、アメリカの犯罪映画やハードボイルド映画のような奇想天外なストーリーに、脈略のないカットを混ぜたヌーベルバーグらしい作品となっており、コミカルな内容に、ドルリューの軽快な音楽がマッチしています。

昔の恋人が偶然隣の家に引っ越してくる…【1981】

ベルナール(ジェラール・ドパルデュー)が妻子とともにしあわせに暮らしていた家の向かいに、彼の昔の恋人マチルド(ファニー・アルダン)と夫のフィリップ(アンリ・ガルサン)が引っ越してきます。最初はふたりを避けていたベルナールでしたが、マチルドと再び深い仲になっていきました。 ふたりの愛の悲劇に、ドルリューの音楽が静かに盛り上げていきます。

トリュフォー監督の遺作となったミステリー【1982】

『日曜日が待ち遠しい!』は、アメリカ人作家チャールズ・ウィリアムズの『土曜を逃げろ』を原作としたコメディタッチのミステリーです。『隣の女』のワンシーンで、拳銃を持ったアルダンが夜道を歩くのを見たトリュフォーが「今度は彼女のためにミステリー映画を作ろう」と思いついたそうです。 トリュフォーの遺作となったこの作品でも、ドルリューが音楽を担当しています。

ジョルジュ・ドルリューの代表作をご紹介

原爆の影響を描いた日仏合作映画【1959】

「外部からやってきたフランス人が原爆をどこまで知ることができるか?」をテーマに、現実を批判しながら自分の心の置き所を探っていく作品です。 被爆地広島を舞台に、反戦映画の撮影にやってきたフランス人女優が原爆で家族を失った日本人男性と出会い、恋に落ちる物語です。 この作品は1959年度のカンヌ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞と1960年度のニューヨーク映画批評家協会賞で外国語映画賞を受賞し、「ヌーヴェルヴァーグの最も重要な作品」と評価されました。

ジャン=リュック・ゴダール監督が描く愛の不可能性【1963】

ブリジット・バルドー演じる女優のカミーユと夫で脚本家のポール(ミシェル・ピッコリ)は、アメリカからやってきた映画プロデューサーのジェレミー(ジャック・パランス)と知り合います。カプリ島での撮影にカミーユをさそったジェレミー。そこから夫婦の関係はぎくしゃくしていきます。

アカデミー賞外国語映画賞受賞作品【1973】

『パメラを紹介します』という映画の撮影を軸に、監督の苦悩やさまざまな人間関係が描かれる『映画に愛を込めて アメリカの夜』。トリュフォー監督自身が劇中映画のフェラン監督役で出演し、斜陽化していく映画産業を描いています。

70年代以降はハリウッドでも活躍!

大統領殺害計画を阻止するサスペンス・スリラー【1973】

1960年代のフランスを舞台に、シャルル・ド・ゴール大統領の暗殺を企てる武装組織が雇った殺し屋”ジャッカル”と、暗殺を阻止しようとするフランス憲兵の追跡を描くスリラー映画です。 オーストリア出身のフレッド・ジンネマン監督がメガホンを取ったこの作品は、ヨーロッパ各地でのロケやドキュメンタリータッチの作風、特注狙撃銃などの演出により、原作の雰囲気を忠実に再現しています。 殺し屋”ジャッカル”を演じたエドワード・フォックスの出世作となりました。

修道院で起きた嬰児殺害事件を描く【1985】

カナダのモントリオールにある修道院で、ある日ベッドで血まみれになった若いシスター・アグネスと、ゴミ箱から生まれたばかりの乳児の遺体が発見される事件が起きます。法定精神科医のマーサは、アグネスが出産にいたった経緯を調べるため、彼女に催眠術をかけることに。 医師のマーサを演じたジェーン・フォンダがアカデミー賞主演女優賞、若いシスター・アグネスを演じたメグ・ティリーが助演女優賞にノミネートされました。

ベトナム戦争を描いた名作【1987】

自身もベトナム帰還兵である名匠オリバー・ストーン監督が、ベトナム戦争の悲惨な真実を描き出し、アカデミー賞作品賞に輝いた戦争映画の名作です。 当時まだ無名だったチャーリー・シーンやウィレム・デフォー、フォレスト・ウィテカー、ジョニー・デップなどが出演しています。

凸凹コンビが双子を演じたコメディ【1988】

アーノルド・シュワルツェネッガーとダニー・デビートのコンビが、生き別れになった双子を演じたコメディ作品です。 アメリカ政府の施設では、6人のエリート男性の精液から人工的に女性を妊娠させ、肉体的・知能的に優れた人間を生み出す実験が行われていました。しかしトラブルが発生し、生まれたのは超優秀なジュリアス(シュワルツェネッガー)となんの長所もないダメ人間ヴィンセント(デビート)でした。大人になったジュリアスはヴィンセントと再開し、母親を探す旅に出ます。

ジョルジュ・ドルリューの受賞歴

アカデミー賞オリジナル楽曲賞を受賞!【1979】

ダイアン・レインのデビュー作として知られる『リトル・ロマンス』は、高IQのため孤独な日々を送っている少年ダニエル(テロニアス・ベルナール)と、同じく高IQのアメリカ人富豪の娘ローレン(レイン)がルーブル美術館で出会い、恋に落ちる物語です。 この作品の音楽を手がけたドルリューは、アカデミー賞オリジナル楽曲賞に3度目のノミネートを果たし、見事受賞しました。

セザール賞音楽賞を受賞!【1979】

フランソワ・トリュフォー監督の代表作、『大人は判ってくれない』(1959)の続編第5作目で、第1作から20年後を描いています。現在のシーンと回想シーンをパッチワークのようにつなげた実験的な作品で、この手法はのちに大ヒットしたフランス映画『アメリ』(2001)にも引用されました。 ドルリューはこの作品の音楽を担当し、フランスのアカデミー賞とも言えるセザール賞で音楽賞を受賞しました。

セザール賞で音楽賞を含む10部門受賞【1980】

ナチス・ドイツ占領下のパリ。南米に逃亡したユダヤ人の夫に代わり、女優のマリオンは劇場を切り盛りしていました。しかし、実は夫は劇場の地下に身を潜めており、国外脱出の機会をうかがっています。しかし、新作の公演が始まると作品はユダヤ的と批判され、劇場にゲシュタポの抜き打ち捜査が入ってしまいます。 この作品でドルリューはセザール賞音楽賞を獲得し、作品自体も作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞、主演女優賞など主要10部門を受賞しました。 このほかにも、『ハンカチのご用意を』(1979)でセザール賞楽曲賞を受賞。『ブラック・ローブ』(1991)でカナダの映画賞、ジニー賞オリジナル楽曲賞とオーストラリア映画協会賞オリジナル楽曲賞を受賞しました。

映画音楽以外のジョルジュ・ドルリューの仕事

ドルリューは映画音楽の仕事を始める前の1957年、作家のボリス・ヴィアンと合作でオペラ「Le chevalier de neige」を作曲しました。その後も「Ariane」、「Une regrettable histoire」、「Médis et Alyssio」の合計4つのオペラを残しました。 また、「L'emprise」などのバレエ作品や、ギターのための曲、弦楽四重奏、ピアノ曲やヴァイオリンソナタなど、多くのクラシック音楽を作曲しています。

大の親日家だったジョルジュ・ドルリュー

ジョルジュ・ドルリューは、親日家としても知られており、「日本でも仕事があればよろこんで受ける」と語っていました。しかし飛行機嫌いのため来日はかなわず、1992年3月10日、66歳でその生涯を終えました。