2017年7月6日更新

マーティン・スコセッシ監督の素晴らしい音楽と映像の調和15選

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マーティン・スコセッシ監督の音楽と映画の調和に注目!!

ボブ・ディランやザ・ローリング・ストーンズのドキュメンタリーの監督などもつとめているマーティン・スコセッシ監督は、映画の中でも重要な場面に完璧な音楽を選ぶことでよく知られています。 監督は音楽によって場面の雰囲気を作ったり、アクションに勢いをつけるだけでなく、キャラクターがどんな人物なのかさえ、音楽で表現してしまうのです。 ここでは、そんなスコセッシ監督の、映像と音楽が化学反応を起こしているような15の場面をご紹介します。

1.作品のテーマともなっていたアイリッシュ・パンク『ディパーテッド』【2007】

「アイム・シッピング・アップ・トゥ・ボストン」ドロップキック・マーフィーズ

ボストン生まれの伝説的なアイリッシュ・パンクバンド、ドロップキック・マーフィーズによる、ラウドで勢いのあるアイルランド音楽の流れを汲むアンセムは、ボストンを舞台にアイリッシュマフィアと警察の探り合いを描いたサスペンス映画『ディパーテッド』の世界観にぴったりはまっています。 物語の中で何度も流れる「アイム・シッピング・アップ・トゥ・ボストン」ですが、この曲が流れる最も印象的な場面は、ジャック・ニコルソン演じるマフィアのボス、フランクがある重要な仕事を片付けるために車に飛び乗り、高速を飛ばすシーンでしょう。

2.印象的なナレーションと音楽で語られるギャングたちの末路『カジノ』【1996】

「朝日のあたる家」アニマルズ

犯罪映画『カジノ』でスコセッシ監督はラスベガスの華やかなカジノの世界と、それを牛耳るマフィアたちの暴力的な世界を描いて見せました。FBIの捜査が入りボスたちが逮捕されると、不利な証言をするのを防ぐため子分たちを次々に殺していきます。 アニマルズのカバーするアメリカのフォークソング「朝日のあたる家」の流れる中、ギャングたちの末路が、用心棒ニッキーを演じるジョー・ペシのナレーションで語られるシーンはまさに名場面。 売春宿の娼婦たちの罪と後悔についての歌ですが、この場面での「家」はギャングたちの出入りしていたカジノを指しているようです。

3.タクシードライバーの孤独を際立たせるメロディ『タクシードライバー』【1976】

「レイト・フォー・ザ・スカイ」ジャクソン・ブラウン

『タクシードライバー』で、ロバート・デ・ニーロはベトナム戦争帰りの不眠症のタクシードライバー、トラヴィス・ビックルを演じアカデミー主演男優賞にノミネートされました。 周囲になじむことができず次第に孤独感を増していくトラヴィスは拳銃を手に入れ大胆な行動に出ます。 テレビ画面の中で幸せそうにダンスを踊る人々と、拳銃を手にして物思いにふけるトラヴィスの孤独が印象的な名場面です。

4.悪だくみを胸に煙草をくゆらせる姿が最高にクール『グッドフェローズ』【1990】

「サンシャイン・オブ・ユア・ラブ」クリーム

実在のギャングの自伝を基にした犯罪映画『グッドフェローズ』。ロバート・デ・ニーロ演じるギャングのボス、ジミーが手下を全て見捨て、強盗して奪ったお金を自分のものにすることに決める場面です。 クリームの「サンシャイン・オブ・ユア・ラブ」の前奏が流れる中、カメラがゆっくりズームインしてゆき、邪悪な企みを胸に抱いたジミーの顔に不敵な笑みが広がります。 クリームの迫力のあるギターリフがこの瞬間、映画史の中でも最高にクールで凶悪なギャングのテーマ曲となりました。

5.思い上がった天才を紹介するのにぴったり『ハスラー2』【1996】

「ウェアウルヴス・オブ・ロンドン」ウォーレン・ジヴォン

ポール・ニューマンとトム・クルーズが共演した映画『ハスラー2』。トムの演じる、うぬぼれたビリヤードの若き天才ヴィンセントがキューを手にテーブルからテーブルへ渡り歩き、技を見せつけます。 ウォーレン・ジヴォンの歌うオオカミの遠吠えが、ヴィンセントの思い上がったキャラクターをうまく描写している場面です。

6.カメラワークと音楽が酔っ払った気分を演出『ミーン・ストリート』【1980】

「ラバー・ビスケット」ザ・チップス

犯罪映画『ミーン・ストリート』ではハーヴェイ・カイテルとロバート・デ・ニーロが下っ端のやくざを演じました。 バーでの一場面では、ハーヴェイ演じるチャーリーが大酒を飲み、ふらふらと歩き回って最後には気を失ってしまうまでの様子を、正面から1つのカメラワークでとらえています。 酔っ払った気分を音楽と映像が絶妙に表現していました。

7.ストーカーの愛し方『キング・オブ・コメディ』【1984】

「カム・レイン・オア・カム・シャイン」レイ・チャールズ

ロバート・デニーロが駆け出しのコメディアンを演じる『キング・オブ・コメディ』の冒頭ほど、スコセッシ監督作品の中で、これから物語で何が起るかをはっきりと示している場面はないかもしれません。 ジェリー・ルイス演じる有名コメディアンが、サインを求める人々を押し分けて自分のリモに乗り込もうとすると、中には偏執狂的なファンのマーシャが待ち受けています。 マーシャが死にものぐるいで伸ばした手のショットで画面がフリーズし、クレジットが流れ出します。「私は誰よりもあなたを愛する」というレイ・チャールズの優しい歌声と、ストーカーが伸ばした手がとてもちぐはぐな印象を与えますが、後でつじつまがあうことになるのです。 彼女が後にジェリーをダクトテープでぐるぐる巻きにして「デート」をしますが、このときに彼女が歌っているのもこの曲でした。

8.目と目があい、恋に落ちる瞬間を描いた音楽『カジノ』【1996】

「ラブ・イズ・ストレンジ」ミッキー&シルヴィア

『カジノ』でロバート・デ・ニーロ演じるエースがシャロン・ストーン演じるジンジャーに一目惚れする場面です。スコセッシ監督は映像と音楽を巧みに組み合わせてアメリカの(犯罪者たちの)男らしさを表現することに長けていますが、女性版での試みはこのシーンのみかもしれません。 美しく輝くジンジャーがチップを空中に放り投げ、エースと目が合い、一瞬音楽が止まります。エースがその名の通り、奇妙な恋に足を踏み入れてしまった瞬間を私たちは目にすることになりました。

9.印象的な長回しのシーンに注目『グッドフェローズ』【1990】

「ゼン・ヒー・キスト・ミー」ザ・クリスタルズ

『グッドフェローズ』では、ザ・クリスタルズのポップスが流れるなか、ヘンリーとその彼女が店の裏口を入り、キッチンを抜け、クラブのテーブルにたどり着くまでの様子が長回しで撮られています。 まるで私たちもヘンリーと彼女の背中を追って歩いているような気分になりますね。 もともと素晴らしい場面を、注意深くセレクトしたポップミュージックでさらに印象深いものにするスコセッシ監督の手腕が遺憾なく発揮されています。 本作には優れたシーンがたくさんありますが、この長回しのカットは映画史の中でも指折りのシーンの1つと言えそう。

10.ニコラス・ケージのぶっ飛んだ演技とパンクロックがベストマッチ『救命士』【2000】

「ジェニー・ジョーンズ」ザ・クラッシュ

ドラマ映画『救命士』は見過ごされがちな作品ですが、医療補助員フランクを演じるニコラス・ケイジのぶっ飛んだ演技は一見の価値あり。サウンドトラックもアメリカのオルタナティブバンドR.E.M.やイギリスのレゲエポップバンドUB40、そして伝説的なパンクロックバンド、ザ・クラッシュなど意外性のある曲が集まっています。 特に印象的なのがザ・クラッシュの「ジェニー・ジョーンズ」が鳴り響くなかフランクが街中で救急車を飛ばすシーン。救急車のライトの点滅で頭が痛くなりそうですね。ラジオからはスコセッシ監督の声が聞こえてきます。

11.監督の映像と音楽に対するこだわりが表われたオープニング『ミーン・ストリート』【1980】

「ビー・マイ・ベイビー」ザ・ロネッツ

スコセッシ監督の初期の名作『ミーン・ストリート』はハーヴェイ・カイテル演じるチャーリーが夜寝付けずに暗い部屋の中を歩き回る場面から始まります。 壁には十字架がかかり、パトカーのサイレンが外から聞こえてきます。観客がこの映画の世界観を読み取ると同時に、ザ・ロネッツのポップスとホームビデオの映像が流れ出します。 陽気な音楽と青年の陰を帯びた姿のコントラストが印象的でした。ただ映像に音楽をつけるだけではなく、融合させ衝突させるというスコセッシ監督のコンセプトが表われたオープニングです。

12.映画のテーマとシンクロしたローリング・ストーンズの1曲『ディパーテッド』【2007】

「ギミー・シェルター」ザ・ローリング・ストーンズ

スコセッシ監督がローリング・ストーンズの大ファンであることはよく知られています。特に「ギミー・シェルター」はお気に入りのようで、『カジノ』や『グッドフェローズ』、そして『ディパーテッド』と3回も使っています。 「ギミー・シェルター」は「避難所をくれ」という意味ですが、この曲がもっとも効果を発揮しているのが、『ディパーテッド』の冒頭シーン。 ジャック・ニコルソン演じるアイリッシュマフィアのボス、フランク・コステロがボストンの裏社会にはびこる悪について語るナレーションと、「レイプや殺人はすぐそこにある」と歌う曲がうまく調和しています。

13.悲劇的な結末を彩る秀逸なアウトロ『グッドフェローズ』【1990】

「いとしのレイラ」デレク・アンド・ドミノス

『グッドフェローズ』のエンディングで、スコセッシ監督は「いとしのレイラ」の印象的なピアノのアウトロを使っています。 血に染まったピンクのキャデラック、ごみ収集車、ミートトラックから死体が発見され、デ・ニーロ演じるギャングのボス、ジミーが空港での強盗に関わった仲間を殺したことが明らかになるのでした。 監督は撮影時にもこの曲を実際に流させたと言われています。報われない愛を歌ったこの曲のピアノとギターのメロディが、悲劇的な結末を彩っていました。

14.映画の心髄をとらえたオープニングシーン『レイジング・ブル』【1981】

「カヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲」ピエトロ・マスカーニ

ここでは、これまで見てきたスコセッシ監督の選んだ音楽とはひと味違う音楽が使われています。実在のボクサーの自伝をもとにした傑作は、白黒の画面でロバート・デ・ニーロ演じるジェイク・ラモッタが試合の前の練習をしている様子から始まります。 マスカーニのオペラの名曲が流れ、もやがリング上に渦巻く中、スローモーションでとらえられたジェイクの動きはまるでダンスを踊っているかのよう。 自己破滅的で嫉妬と怒りにまみれた男が、家族や妻との関係をも破壊していくという、もっとも暴力的な映画の1つですが、美しいオープニングが物語全体に気品と優雅さを与えています。

15.デ・ニーロの印象的な登場シーン『ミーン・ストリート』【1980】

「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」ザ・ローリング・ストーンズ

ロバート・デ・ニーロだけでなく、スコセッシ監督にとっても出世作となった『ミーン・ストリート』。デ・ニーロ演じる三流のやくざジョニー・ボーイの登場場面はこれ以上ないほど印象的です。 悪魔的な真っ赤な光の中、両脇に女の子を連れてバーに入ってくるジョニー・ボーイ。キース・リチャーズの伝説的なギターリフが完璧にマッチしているだけでなく、ジョニーが薄っぺらで危険で、でも間違いなく楽しい男であることが一目でわかる場面となっています。