2018年1月22日更新

キム・ギドク、韓国黄金世代を代表する鬼才監督が撮った10の映画たち

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キム・ギドク
©Marechal Aurore/Sipa USA/Newscom/Zeta Image

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韓国黄金世代を代表する鬼才キム・ギドク監督

キム・ギドクは、1960年12月20日生まれ、韓国出身の映画監督・脚本家・プロデューサーです。 20歳からの5年間を軍隊で過ごします。1990年に絵画勉強のために渡ったフランス・パリで観た、映画『羊たちの沈黙』などに感銘を受けたのだとか。帰国後、脚本執筆に着手し、1996年に低予算で制作された映画『鰐~ワニ~』で監督デビューを果たしました。 その後も安定したペースで作品を発表し、2001年の『悪い男』や『サマリア』、『うつせみ』などが高い評価を得て知名度が上昇しました。2008年から3年間、撮影中の事故が原因で制作活動を休止しますが、2012年に『嘆きのピエタ』で第69回ヴェネチア国際映画祭の金獅子賞を受賞しています。 社会の闇や不遇な人々に焦点を当て描く、男の暴力や激情と贖罪。女の崇高な愛が一体となった、独特の作風を特徴とする鬼才の作品の中から、おすすめの10本をご紹介します。

1.浮浪者の青年と恋人に捨てられ自殺を図った女の悲劇の愛を綴る監督デビュー作【1996年】

漢江の川辺に住み、”鰐”と呼ばれる浮浪者の青年ヨンペ。生活を共する老人や少年に暴力を振るい、橋から投身自殺した者を拾い上げて金品を盗るなど、非道な行いを繰り返していました。しかしある日、恋人に降られて身投げした美女を助けた彼は、そのまま強姦し性の捌け口として弄ぶのですが・・・・・・。 1996年に韓国で公開されるも、日本ではキム・ギドク監督幻の処女作と呼ばれた作品。映画『サマリア』、『うつせみ』などが高い評価を得た後、制作から10年を経た2007年に日本での公開が実現しました。

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2.1970年代の米軍基地の町に生きる若者たちの姿を描く群像劇【2001年】

1970年代、米軍基地のある韓国のとある村。西洋人相手の娼婦だった母と、黒人の父の間に生まれた青年チャングクは、母と村はずれの赤い廃バスで暮らしていました。母は米国にいる夫が、いつか2人を迎えに来てくれると信じて手紙を送り続けるも、差出人不明のスタンプが押され戻って来てしまいます。 さらに、幼い頃の事故で片目の視力を失った少女ウノクと、彼女に思いを寄せるチャングク唯一の親友である気弱な青年ジフム。痛みを抱えた3人の若者の希望と絶望、村で暮らす人々の悲劇を、混血児や障がい者に対する差別といったテーマなどを交えて描きました。

3.寡黙なヤクザと売春婦にされた女子大生の倒錯した愛憎を描く衝撃作【2001年】

Satoko_Suzuki これが私の「初ギドク」でした。興味はあったものの、すごくハマるか、ショッキングな内容のみに逃げているだけで期待ハズレになるか、賭けでした。もちろん前者でした。 とても共感できない主人公の、業の深さと贖罪(これはキム・ギドク映画のずっと中心にあるものだと思いますが)に、目が離せません。かわいそうなヒロインの心の変化も垣間見れて。もう、キリキリ、と言うかギュウギュウに心が痛めつけられる映画です。変化系の純愛、が好きな方にお勧めします。
Daiki_Kinoshita 監督:キム・ギドク 2001年公開 マジックミラーの演出とかかなり好きだった。 海での写真が理解できない点もあったけど、そこがまた考えさせられる。 前世とかを表しているのだろうか。 それとも、幻覚混じりなのか。 そういった裏設定が、最初の強烈な出会いの場面に繋がっていたりするのか、とか勝手に考え出しちゃう。 制作者の自己完結で終わる作品が嫌いな人もいると思うけど、映画ってそういうのもありだと思う。ドラマはダメだけど。

傷付けることでしか愛情を表現できない男と、人生を狂わされていく女の屈折した純愛を綴り、韓国では空前の議論を巻き起こした衝撃のラブ・ストーリーです。 売春街を取り仕切るヤクザの頭、ハンギが街で見かけた女子大生のソナに一目惚れするも、彼女から侮蔑的にあしらわれてしまう羽目に。屈辱を味わされたことへの復讐心、所有欲に駆られたハンギは、ソナが自身の仕切る売春宿に売り飛ばされるよう画策し始めて・・・・・・。 ”悪い男”の主人公・ハンギを演じるのは、ギドク監督作常連のチョ・ジェヒョン。彼に愛される女子大生のソナは、ギドク監督作『魚と寝る女』で映画デビューを飾った、ソ・ウォンが熱演しました。

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4.一人の男の波乱に満ちた人生を耽美的な四季の風景と共に語る【2003年】

Satoko_Suzuki 国際映画祭で観ましたが、意外と混んでいてビックリ。ほぼ満席の映画館を、静かな静かな空気が流れました。 キム・ギドク、とうとう悟りを開いたか?ってくらいの俯瞰っぷりでした。 でもやっぱりテーマは、人間の業と贖罪。狂い始める歯車、、、。そう来なくちゃ!
Miyako__Nagumo 四季折々の風景が美しい。ただ、やはりキム・ギドクなので、美しいだけで終わってくれるはずはなかった…

変わっていく四季の美しい風景と共に、山奥の湖面に佇む小さな寺に暮らした少年僧の一生、その生き様を静かに見つめ続けた老僧の姿を描くヒューマン・ドラマ。社会の負の部分、人間の激しい感情を扱ったこれまでの作風から一変し、人の一生を移ろう自然に重ね情感豊かに綴ります。 春、夏、秋、冬、そしてまた春。5つのパートに別れて、人間の罪と癒し、再生までの物語が展開する中でも、監督自ら主人公を演じる冬のエピソードは必見です。

5.援助交際に走る2人の少女の瑞々しい友情が引き起こす悲劇の顛末【2004年】

Moto_Ishiduka 何がって言われたら答えられないんだけどただただ寂寥感に浸った。あるべきものがそこにはなくて、それはティーンが持つ華やかさだったり煌びやかさだったり、とにかくトキメキなんてワードとは程遠くて暗い。やってることは確かに綺麗じゃないけど(自分の父親と同世代の男との援交とか)汚くも見えなかった。なんでだろう、たぶん彼女たちの友情愛がみえたから。あとは父が子にもつ愛。最初にラブホの窓から飛び降りて死んだ子の親は全く登場しなくて、たぶんもう一人の子の父親の子を思うところをより鮮明にさせるためかも。 キムギドク監督の作品はいつもだけど、内容何て実は何もなくて、考えるんじゃなくて感じる映画であると思う。感じてみて初めてなにか見える。私もこの作品で全てを理解したわけではないし解説なんてもってのほかだけど、実際に観て感じてほしい。寂寥感と表現した意味がわかるはず。
Satoko_Suzuki キュートなビジュアルと裏腹に、かなりハードな内容。過激な題材ながらも、何故かちょっとファンタジックに感じてしまう。 胸の奥をギュム〜って掴まれる感じの一本。

刑事の父を持つ女子高生ヨジンは、援助交際に手を染める親友チェヨンに複雑な思いを抱きながら、見張り役として行動を共にすることに・・・・・・。警察の取り締まりから逃れようとチェヨンが命を絶ち、自責の念からヨジンが起こした行動、娘の真実を知った父の苦悩と決意を3部構成で描きました。 当時問題になった援助交際を扱った、第54回ベルリン国際映画祭の銀熊賞(監督賞)受賞作。新人女優のクァク・チミンとソ・ミンジョンが好演し、残酷かつ美しい少女たちの悲劇が胸に突き刺さります。

6.衝撃的な出会いを果たした男女の静かな愛のファンタジー【2004年】

yumixx 思ってたのと違う感じだったけど、セリフがほとんどないのにあれだけの感情が表現できるってすごい。 あのシーンは良かった。 ゴーストみたいな、ファンタジックな純愛が好きな人におすすめ。
Satoko_Suzuki 実は、ギドク作品の中で、コレが一番好きかも(2014現在)(あっ、まだ観ていないものかなりあった!)です。 かなーり静かな、変態的ラブストーリー。 この男女が惹かれ合う理由が今ひとつハッキリしないんですが、そんなのどうでもいい、ってくらい引き込まれました。 もう、始終ドキドキしっぱなし。息を殺して観てしまうため、結構疲れます(^_^;) 結局、現実世界の話なのか、妄想なのかは観た人が判断すればいい、って感じです。 静かで、美しく、スリリング!!

留守宅に侵入しては、住人が戻るまでそこで暮らす奇妙な犯罪を繰り返し、各地を放浪する生活を送るミステリアスな青年テソク。ある日忍び込んだ豪邸で、暴力夫から監禁状態にされていた人妻ソナを連れ出し、彼女と共に再び留守宅を転々とする秘密の旅と交流を綴りました。 主演のジェヒとイ・スンヨンには一言も台詞が無く、物語はほぼ無言劇で進んで行くものの、2人の幻想的な心の触れ合いを豊かな演技力で表現しています。 孤独な男女が寄り添う愛を静かに見つめ、予想を遥かに超える結末を迎えた今作。第61回ヴェネチア映画祭では、銀獅子賞(監督賞)を始め4部門の受賞という偉業を成し遂げました。

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7.韓国の整形事情を背景にした衝撃のラブ・ストーリー【2006年】

Hitomi_Okamoto コンプレックスを感じているからこそ、他人事じゃなかった。この映画を見て、狂ってるとは思ったけど、わからなくなかった。絶対整形なんてしないけど。自分の今の考え方が悲しくなった。突き詰めればこうなる。ないものばかりを求めて自己破滅していくのだけは嫌だ。自分の長所を伸ばせばいい。こういう気持ちをドストレートに表現できるキムギドク監督にびっくりする。そしてその先をみて、映像化する。男の人にとっては、わけのわからない映画かもしれないけど、女の人で気持ちがわからなくもない人は結構いるはず。見た後は映画の主人公のように、自分の中で何かが失われた気がした。ぽっかり穴が空いたような。
Satoko_Suzuki すっげーい、、、。怖い。 なんか途中、「カルネ」を思い出した(全然違うけど)。警告されるわ、こりゃあ。 整形ネタ、ってとこでは、傑作漫画「ホムンクルス」を思い出したり。 「顔」ってなんだろう。顔を変えると全て変わる?? 、、、まー、韓国らしさを皮肉を込めて描いちゃったキム・ギドク、狂気の一本。

世界でも有数の整形大国と謳われる韓国。恋人のジウと付き合い始めて2年になるセヒは、彼が自分に飽きてしまう不安に駆られるあまり、整形を決意し突然姿を消します。顔と名前を変えた別人として再び現れ、彼の愛を繋ぎ止めようと必死にあがく、一人の女性の壮絶な運命を描きました。 整形してまでも永遠の愛を求める主人公に、『スカーレットレター』のソン・ヒョナ。恋人役を『許されざる者』のハ・ジョンウが演じ、絶対の愛を望み過ぎた故に、負のスパイラルに陥る男女を熱演しています。

8.沈黙の3年間を描いた異色のセルフ・ドキュメンタリー映画【2011年】

Miyako__Nagumo 撮影中の事故をきっかけに映画を撮ることができなくなったキム・ギドクが、山にこもり、自らにカメラを向けたドキュメンタリー。悲夢→アリラン→嘆きのピエタの順番でみると、キム・ギドクの覚醒を体感する感じになります…が、どっぷり暗い気持ちになるので、注意が必要

2008年に発表した『悲夢』の撮影中に起きた、女優イ・ナヨンが命を落としかける事故にショックを受け、表舞台から姿を消したキム・ギドク監督。一匹の猫だけを連れて人里離れた山小屋に籠り、自問自答を繰り返した隠遁生活の一部始終を、脚色を加えつつ赤裸々に映し出しました。 監督だけでなく、脚本や主演などの作品に関わる全てを、ギドク監督一人で敢行したのだとか。もがく自分とそれを鼓舞する自分、2人を見つめるもう一人の自分の対話を通して、沈黙していた3年間を綴ります。

9.第69回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を獲得した問題作【2012年】

35DH1 #063 やっと観て来たこの作品。話自体は既にどこかでありそうな感じなのですが、『オールド・ボーイ』や『殺人の追憶』、『トガニ』等と並ぶ韓国映画の底力みたいなものを感じる逸品であります。とにかく、出てくる人(動物)全てが救われない…主人公の母親を名乗る女性の心情と、“愛(慈悲?)”を知った主人公の心情の変化が正に“ピエタ”。決してハリウッドや日本映画では作りえない、心に突き刺して来るような“痛さ”がここにも。これこそ韓国映画の醍醐味の一つでありますね。 そして、この監督にしては珍しく主人公が喋りますw http://www.u-picc.com/pieta/
Shearer 韓国映画を観たのは初めて。 憎しみと愛情が密接で どちらも激しい感情の分コントラストがはっきりしていた 終盤、ガンドが翻弄される姿は すごく滑稽で 新奇で巧妙な展開にのめり込むように観てしまった。 ラストはそこまでやるとは思わなかったというほど最初から最後までが繋がっていて謎の感嘆を漏らすほど。 キム・ギドク監督だからこそなのかもしれないけど、韓国映画がここまで興味深いものなんて思わなかった。 20141202

韓国の男性にとって、最優先の存在である”母親”を切り口にした作品。タイトルの”ピエタ”とは、イエス・キリストの遺体を抱く聖母マリア像のことで、母の愛の象徴を意味しているそうです。 古びた街工場が並んだ、ソウルの清渓川近く。債務者に重傷を負わせ、保険金で返済させる非道な借金取りイ・ガンドは、親の顔も知らず孤独の中に生きてきました。そんなある日、母親を名乗る謎の女チャン・ソミンが現れ、疑念を抱きながらも注がれる無償の愛に心を開いていって・・・・・・。 ドラマ『愛してる、泣かないで』のイ・ジョンジン、ベテラン女優チョ・ミンス主演。2人の気迫に満ちた演技と、明らかになっていく残酷な真実、予想を超えたラストシーンに圧倒されます。

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10.朝鮮半島の南北分断をテーマに描かれる社会派ヒューマンドラマ『THE NET 網に囚われた男』【2017年公開予定】

物語の舞台は、南北に分断された朝鮮半島。ある事故で国境を越えたために、理不尽な運命にさらされる男を通して、常に弱者が犠牲となる現代社会の闇を描くキム・ギドク監督最新作です。 北朝鮮で妻子と平穏に暮らす漁師ナム・チョルは、漁の最中に船のエンジンに網が絡り、韓国側に流されスパイ容疑で身柄を拘束されることに。家族の元に帰りたい一心の彼は、韓国警察による亡命の強要や激しい拷問を受けながらも、必死に耐え続けるのですが・・・・・・。 主演を務めるのは、『ベルリンファイル』などで有名なリュ・スンボムです。残忍な取調官役は、ギドク監督作でお馴染みのキム・ヨンミンが熱演し、イ・ウォングンやイ・ウヌらの好演も見所。第73回ヴェネチア映画祭のプレミア上映で大反響を呼び、日本では2017年1月7日より全国で順次公開されます。