2020年9月7日更新

「攻殻機動隊」の笑い男を徹底解説!【SACの重大ネタバレ注意】

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笑い男 サムネ

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「攻殻機動隊」サイバーテロ犯人の「笑い男」に迫る!【SACの重大ネタバレ注意】

笑い男とは「攻殻機動隊」に登場するサイバーテロ事件を起こした犯人です。笑い男というのは通称で、何故そう呼ばれているかには理由があります。 それは笑い男が初めてメディアに顔を出した時の事です。彼は素性がバレないようにメディアをハッキングし、笑い顔のマークを自分の顔の上に上書きしました。そのことから通称“笑い男”となったのです。 最終的には1人の犯人へと行きつくのですが、模倣犯が登場したり笑い男が他の人間に利用されたりした経緯から、笑い男とは実態のないネット上の複合体ではないかと推察されことも。 彼の起こした事件には実際にモデルとなった事件があり、一連の企業を脅迫したグリコ・森永事件や、3億円の窃盗事件である三億円事件がそれにあたります。 ※本記事には『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の重大なネタバレが含まれますので、読み進める際は注意してください。

笑い男事件の真相!?サイバーテロ犯の正体とは

笑い男事件の概要

“笑い男事件”とは笑い男が関連している最初の二つの事件で、セラノゲノミクス社の社長・瀬良野(せらの)が誘拐された事件と、セラノゲノミクス社と同じくマイクロマシンを開発していたメーカーに対するサイバーテロを含んだ事件のことを示しています。 正式な事件の名称は「広域重要081号事件」。誘拐されていた瀬良野本人と、笑い男本人がテレビに登場した事で話題になった事件でもあります。

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笑い男の正体は……。

実はこの事件、瀬良野の誘拐事件とマイクロマシンメーカーへのサイバーテロ及び脅迫は別の人物が起こしています。 誘拐事件の方の犯人はアオイタカシで、彼こそが本当の笑い男です。アオイはある時、ネットで電脳硬化症という不治の病に効果がある薬が開発されていたこと、効果があるにも関わらず認可が下りなかった事などを書いた告発文を見つけます。 その事実に憤りを覚えたアオイは真実を公表させようとしました。その結果、企てたのが瀬良野の誘拐です。瀬良野はアオイに拘束され一時は真相を発表することを約束したのですが、自由になった途端に約束を破棄。 逃げ出した瀬良野と追いかけてきたアオイが中継中だったテレビに映りました。瀬良野の裏切りにより真相は発表できず、アオイは姿をくらまします。 もう1つのマイクロマシンメーカーへの脅迫の真犯人は、警察の上層部や政治家といった国を動かす組織の人間たち。彼らは笑い男事件の模倣犯であり便乗者です。彼らは嫌がらせじみた妨害工作で企業の評判を落とし、公的資金を導入する代わりに裏金を貰うという取引を行っていました。

警視総監殺人未遂事件の真相に迫る!犯人は「笑い男」ではなかった?

事件の概要

警視総監殺人未遂事件は笑い男事件から5年後に起きました。 笑い男事件の特捜部にいた山口という人物は、警察上層部に不審な動きがあることを察知し、その事実をかつての同僚だったトグサに知らせようとします。しかし証拠となる写真を入手したものの山口は何者かに殺害され、写真は山口の妻からトグサへ渡りました。 写真を解析した結果、特捜部の刑事たちがインターセプターを埋め込まれており、その写真がインターセプターを通してのものだと気づきます。インターセプターによるプライバシーの侵害は禁止されているはずなので「これは何かある」と公安9課は真相を探り始めることに。 そして警察に真相の開示を求めるのですが、警察はあくまでも警部補個人の問題だと言い切ります。9課の部長・荒巻大輔(あらまきだいすけ)がこれは警察の自作自演では?と疑い始める中、長官への襲撃予告が。 この事件ではナナオAという人物が笑い男の容疑者と認識されていたので、公安はナナオの見張りと長官の護衛の両方を受け持ちます。長官護衛の現場では、ウィルスに感染したSPが長官を殺そうとするのですが、その場にいたマスコミや一般人までもが「自分こそが笑い男だ」と襲撃を始めました。 そしてもう一方で公安が追っていたナナオAが、謎の人物によって殺害されてしまいます。

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犯人の正体は、笑い男事件の犯人とは別!

この事件はアオイも絡むのですが、前回と同じく真犯人と模倣犯が起こした事件でした。 アオイは警察が「これは警部補個人の問題だ」と言い切って真相を隠そうとしたことに憤り、長官殺害を予告していたのです。そのため長官殺害の予告、及びSPに対してウィルスを埋め込んだところまでは、アオイの犯行でした。 しかしその他大勢が一度に浸食され「笑い男だ」と名乗り長官を狙ったのは、アオイの計画ではありません。笑い男は過去の事件以来ネット上で英雄扱いされており、聴衆を操ったのは笑い男に感化された不特定多数の人物だったことが判明しました。 なのでこの事件に関しては個人が行ったというよりも、ネットが生み出した偶像による犯行ということになっています。 また殺害されたナナオAは今回の事件を有耶無耶(うやむや)にするため、警察上層部が犯人に仕立て上げた人物です。そして最終的にはナナオAを始末することで、事件の収束を図りました。裏側は多くの思惑が絡む複雑な事件だったのですね。

セラノゲノミクス社とは?笑い男が暴いた真実……

セラノゲノミクス社はマイクロマシンメーカーの1つです。もともと電脳硬化症の特効薬・村井ワクチンを開発したのは村井という博士でした。この特効薬を使うには労働省に認可が必要だったため、村井も当然許可を貰おうと申請したのですが、何故か認可が下りなかったのです。 実は当時の労働省のトップには今来栖尚(いまくるすひさし)という男がおり、彼は村井の同期。村井に嫉妬した今来栖はワクチンを不認可にしたのです。 しかし電脳硬化症への対策は必要だったため、今来栖は当時開発中だったマイクロマシン療法に目をつけます。セラノゲノミクス社も認可を申請していたので、今来栖は当時まだ無名だったその会社に目をつけ、強引に認可しました。 結果セラノゲノミクス社は注目を浴びて一躍大企業へと躍進。一方で村井は失意のうちに亡くなってしまうのでした。 実際に効果のあるワクチンが不認可となり、効果のないマイクロマシンが認可され広まっている。瀬良野はアオイが暴いたこの真相を知る数少ない人物となり、それをバラされては困る警察上層部に軟禁される立場となったのです。

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笑い男マークとは?ポップなマークで社会現象を巻き起こす!

笑い男マークとはアオイがTVに顔を出した際に、自分の素性を隠す為に映像をハッキングして自分の顔に張り付けたマークです。ニコニコと笑う少年が帽子をかぶっているようなマークで、白地に紺色のラインで書かれており、円形をしています。 アオイは自分の顔以外にも天気予報の画面などにもそれを張り付けており、センセーショナルな事件であったことから注目を浴びました。 一部の若者にはロゴマークとして人気に。グッズやTシャツなど、いろいろな場所で見られるようになりました。実際にこのマークのデザインを手がけたのは英国のデザイナーであるポール・ニコルソンです。

笑い男のモデルは『The Laughing Man 』

笑い男にはモデルとなっているものがあります。それはJ・D・サリンジャーの『The Laughing Man』という小説です。 その中で団長と呼ばれる青年が、おとぎ話のように笑い男の話をしています。その内容は「笑い男はある時山賊に攫われ、醜い顔にされてしまった。彼は芥子の花びらで仮面を作り、自らも山賊になった」というものです。 ちなみにこの内容もヴィクトル・ユーゴーの小説『The Man Who Laughs(笑う男)』が元ネタになっています。 笑い男であるアオイは施設を去る時に「I thought what I’d do was, I’d pretend I was one of those deaf-mutes」(僕は耳と目を閉じ、口をつぐんだ人間になろうと考えた)という文言を残していました。この文言もJ・D・サリンジャー著書の『ライ麦畑で捕まえて』の文言を引用しています。

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笑い男事件は再現可能なのか?検証してみた

笑い男事件で印象的なのは、自身の顔をあらゆるメディアや目撃者の記憶から消去し、笑い男のマークを上書きしたセンセーショナルな手口です。映像の上書きという意味では、スマホやデジカメに搭載されている顔認識機能を利用することで可能となるでしょう。 作中では電脳化や義体化の技術が進んでいるため、義眼(ぎがん)などにもより高度に進んだ顔認識機能が搭載されていると考えられます。自分の顔にマッチするものを探し出し、指定した画像に上書きすればいいのです。 監視カメラなど周囲の映像機器も、脆弱性などを把握していれば複数を同時にハックすることも可能だと思われます。 笑い男はマークを人の顔として認識させ、記憶を変換していました。これはAR技術が進み、精度の高い偽りの映像が目前に展開されるようになれば、再現可能となる手口です。事実とは違うことも正しいことだと脳に認識させることで、記憶の捏造(ねつぞう)が可能になります。 トグサの元同僚・山口は車の事故で死亡しました。これを引き起こしたのは、彼の中に埋め込まれていたインターセプターですが、近年では車も様々なシステムが搭載され、自動運転する車も登場しています。インターセプター自体がなくとも、車側のシステムをハックすることで事故も起こせるでしょう。 より技術が発展することが前提とはいえ、笑い男事件といわれるひとつひとつの事件は、決して再現不可能ではないものであることが分かります。

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笑い男の名言・名セリフまとめ

「僕は耳と目を閉じ口を噤んだ人間になろうと考えたんだ」

J・D・サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』が元ネタとなるこのフレーズは、笑い男マークの周りに縁に書かれている言葉です。作中でこれにいち早く気がついたのはトグサで、事件の全貌に近づくきっかけになりました。 笑い男の名言としても知られるフレーズですが、アニメ1話の冒頭では公安9課の少佐こと草薙素子(くさなぎもとこ)も似たようなセリフを言っています。それが「世の中に不満があるなら自分を変えろ。それが嫌なら耳と目を閉じ、 口をつぐんで孤独に暮らせ。それも嫌なら…」というセリフ。 まさに『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』を象徴する名言と言えるでしょう。 元ネタの登場人物も少佐も、そして笑い男も、このフレーズを口にしながらも結局口を噤(つむ)ぐことはできずに行動を起こしているという共通点があります。

「だがならざるべきか」

「僕は耳と目を閉じ口を噤んだ人間になろうと考えたんだ」に、後に笑い男が付け加えた一文が「だがならざるべきか」です。 アオイは正義感に駆られ最初の誘拐事件を起こしました。結局約束を反故(ほご)にされ、笑い男は何者かによって利用され、アオイは失意のうちに姿をくらましています。「耳と目を閉じ口を噤んだ人間」になることを選んだのでしょう。 しかし後に付け加えた「だがならざるべきか」という言葉から、本当にこれでいいのかという彼の葛藤もうかがえます。

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「残りの人生をいい人で過ごすか、死して尚悪人と後ろ指を指されるか、選ぶのは貴方だ」

村井ワクチンを不認可にした張本人である今来栖と笑い男が対峙した際のセリフです。笑い男はこの言葉とともに、今来栖に事実を自ら公表しろと迫りました。 笑い男が自らの利益のためではなく、強い正義感に駆られる形で行動を起こしていることを象徴する言葉といえます。また必ず真相を白日の下に晒すという強い意志も感じられるセリフです。

「残念ながら僕、野球が下手ですから。」

最終回に登場したセリフです。少佐がアオイの元を訪れた際、自分は逮捕されるのかと問うアオイの前に荒巻課長が登場します。そして荒巻は笑い男のオリジナルは不在という形で事件は決着することを伝え、彼を公安9課へスカウトしました。 「我々9課の9人目のレギュラーにならんか?」と尋ねる荒巻に対し、アオイが返したセリフが「残念ながら僕、野球が下手ですから。」です。楽しそうと言いながらも、彼はチームプレイを必要とする野球を引き合いに出し申し出を断ります。 アオイという青年のウィットに富んだ一面を見られるシーンといえるでしょう。

もし笑い男が公安に入っていたら?

S.A.C最終回で笑い男は公安9課にスカウトされている

少佐に特A級クラスといわれる程のハッカーの腕前を持つ笑い男ことアオイ。最終話で荒巻課長直々に、公安9課へスカウトされています。逮捕されることを覚悟していたアオイは驚いた様子を見せながらも、結局その申し出を断りました。 笑い男のオリジナルとされる存在は不明のままですが、アオイは一通のメールをきっかけに一連の行動を起こしています。その根幹(こんかん)には青臭いまでの正義感があり、それは荒巻課長や少佐、トグサらにも通じるものといえるでしょう。 実際に彼は公安9課に入る道は選びませんでしたが、もし入っていたとしたらその正義感とハッカーとしての技術で活躍したはずです。

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少佐と最強のコンビニなっていた?

最終話でアオイの元を訪れた少佐。2人は偉人たちの名言を引用した高度な会話を繰り広げていました。そのやりとりだけでも、2人は気が合うような印象を抱きます。 さらに2人とも笑い男事件の中で、スタンドアローンコンプレックスを起こし、それぞれ笑い男として行動するという共通の体験を持ちました。同僚として仕事をしてもいいコンビとなりそうです。 ウィザード級と称されるハッカーと特A級のハッカーの2人がタッグを組めば、9課はより怖いもの知らずの最強の組織となっていたでしょう。

実はヅラなのをイジられる?

アオイは普段、黒髪のカツラを着用しています。カツラの下はスキンヘッドで、あえてその髪型にしているのか、何らかの理由で髪が生えてこないのか。そのあたりの経緯は明らかになっていません。 彼は自らのことを「電脳化の権化」と評していました。髪の毛がないのも、電脳化が関係しているとも考えられます。 9課のメンバーは仲間同士であけすけにものを言うところがあり、少佐に対してメスゴリラとあだ名をつけるほど。それを考えると新メンバーを可愛がるという意味も込めて、カツラであることをネタにされる可能性は大きいです。

『攻殻機動隊』で笑い男を演じたのは声優・山寺宏一(やまでらこういち)

笑い男の声を担当しているのは、トグサの声優も担当している山寺宏一(やまでらこういち)です。メインキャラを一人二役こなすとは非常に器用ですね。流石7色の声を持つ名高い山寺宏一、というところでしょうか。 山寺は1961年6月17日生まれ、宮城県の出身で通称山ちゃん、などの愛称で親しまれています。 1985年に『メガゾーン23』の中川真二役にてデビュー。1989年『らんま1/2』で響良牙と豚のPちゃんを演じたことで広く知られるようになりました。 彼はとにかく役の幅が広く、アニメ以外にも洋画の吹き替えでウィル・スミス役やエディ・マーフィ役、ジム・キャリー役なども担当しています。

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実写版「攻殻機動隊」の『Ghost in the shell』で笑い男を演じたのはマイケル・ピット

2017年公開のハリウッド版攻殻機動隊『ゴースト・イン・ザ・シェル』。実写版では笑い男にあたる役はクゼというキャラクターになっており、この役を演じるのがマイケル・ピットです。 クゼは原作アニメにも登場するキャラですが、実写版では原作の笑い男とクゼを足して2で割ったようなキャラがクゼとして登場しています。 マイケル・ピットは映画『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』で頭角を現し、2005年に公開された『ラストデイズ』では主演に抜擢。同作ではカート・コバーン役を務め絶賛されました。 また彼は音楽活動も精力的に行っており「pagoda」のボーカルとしても活動しています。

笑い男の正体は一体!?「攻殻機動隊」サイバーテロについて徹底解説!

「攻殻機動隊S.A.C.」のストーリーの軸となる事件・笑い男事件について紹介しました。結局笑い男のオリジナルは不明のまま。アオイや少佐をはじめとする複数の人間がスタンドアローンコンプレックスを起こし、模倣犯となっていった事件として描かれました。 電脳化が進んだ世界では、どこにいても誰でも情報は共有され並列化されます。その中で個性とはどこにあるのかを考えさせられる事件でもありました。 近年の技術の発達により「攻殻機動隊」の世界が次第に夢物語ではなくなってきています。フィクションとして描かれた笑い男事件と同様のサイバーテロも、現実味が増してきているのです。そういう前提で改めて笑い男事件を見直してみると、新たな発見や面白さが見つかるのではないでしょうか。