
『廃市』のスタッフ・キャスト
『廃市』の感想・評価・ネタバレ
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DVDでレンタルして観た。 小林聡美の若い頃って、今の大後寿々花に似てるなと個人的に思った。 根岸季衣が安子(小林聡美)の姉である郁代を演じていて、とても魅力的だった。美人だと思うんだけど、木村多江みたいに幸薄そうな女性に見えるけど、意思がとても強そうな、そんな顔って言えばいいのかなと思った。そして郁代という役も、ずばりそういう役だから凄くハマってた。 監督のインタビューが35分ほど入ってて、それも見ると、この映画を2週間ほどで撮ったとあって驚いた。短い期間の分、寝るのも惜しんで撮っていたそうだ。 インタビューより、予算も「時をかける少女」の10分の1にも満たない予算だったそうだが、にしても出ている人がスッゲー豪華な事や映像も豪華なので驚いた。ATG映画だから、低予算映画だとは思っていたけど、主演女優お二方や根岸徹、入江若葉、入江たか子が出ているし、町の道楽者がやる歌舞伎を、皆が川に浮かんだ船から眺めている場面は、観客がとても多くて結構贅沢な場面だ。 撮影を行ったのは福岡県の柳川で、当時映画で尾の道を有名にした大林監督が柳川を舞台に映画を撮ってくれるということで協力してくれた、とこれもインタビューにあったけど、住民の皆さんの協力であのシーンが出来たのかと知ると、この監督ってやっぱり凄いなと驚かされた。 冒頭も良かった。冒頭がああだったのは、きっと記憶を辿る過程を表現する為に行ったのだと思うけど、郷愁(主人公の故郷ではないけど昔訪れた場所を惜しむ意味合いで)を感じるし、記憶をはっきり思い出す過程にもなっていて素晴らしいと思った。 でも、そんなに明るい話じゃない。町が死んでいるという言葉や時折響く鉄琴か風鈴の音が、失われていく悲しさというか、良い方向に進むことも出来ないし、まして逃げ出すこともできない、八方ふさがりな状況を引き立てて、空しさが全体的に漂うけど、綺麗な映画だった。(でも話の内容的には2時間ミステリーでよくやる話とも似てるような気もする) 自分の故郷がもう10年経ったらそんな感じになるかもなと、薄々感じている私にはちょっと辛い映画だった。