太陽を盗んだ男

太陽を盗んだ男

日本 147分 1979年10月6日上映
rating 4.2 4.2
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『太陽を盗んだ男』とは

ある中学校の物理講師が原爆を作り、政府を脅迫する姿を描くアクション映画。監督は、『青春の殺人者』(1976年)の長谷川和彦が手掛けた。そして、脚本は監督でもある長谷川和彦とアメリカの映画監督でもあり、『男はつらいよ 寅次郎春の夢』(1979年)で脚本を担当したレナード・シュレーダーが共同で執筆をした。撮影は『祭りの準備』(1975年)の鈴木達夫が担当。 主演は沢田研二が演じ、菅原文太、池上季実子、北村和夫、神山繁らが共演した。

『太陽を盗んだ男』のあらすじ

ある日、中学校の物理教師の城戸誠(沢田研二)は、茨城県の東海村の原子力発電所から液体プルトニウムを盗み出した。しかし、この事件について警察庁長官は公式発表で盗難の事実を隠してしまう。同じ頃、誠は自宅で手作りの原爆を作っていた。 そして、誠は「9番」と名乗り完成した原爆で政府を脅迫するのだった。そこで、誠は交渉相手に丸の内警察署捜査一課の山下警部(菅原文太)を指名する。まず、第一の要求のプロ野球のナイターの完全中継。これは成功。そして、第二の要求の「ローリングストーンズの日本公演」もまた成功。しかし、第三の現金5億円の要求には山下警部が抵抗したのだ。 山下警部は、誠との電話を逆探知し罠を仕掛けるのであった。そしてついに、誠と山下警部が接触する時が来るだが......。

『太陽を盗んだ男』のスタッフ・キャスト

『太陽を盗んだ男』の感想・評価・ネタバレ

  • エミデブ
    エミデブ 4 2017年10月30日

    素晴らしい! 日本映画も捨てたもんじゃないなと思わせる。いや、この荒削りというかあまりにもツッコミどころが多い点は国内だからこそ許されるようなものだと思うが。西部警察や大都会などのバックグラウンドを知っめてなりたつ「当時らしい映画」ではある。しかし本作が描くのは、日本では特にタブーと言って良い内容だ。三上寛やRCサクセションのCDが発売禁止をくらうなら、この映画はDVD化規制がかかっててもおかしくはないはずだ。そんな内容。 沢田研二演じる中学校教師は、プルトニウムを盗み、自身で原爆を製作する。その途中でもちろん被爆している身体のだが、完成した原爆を盾に国家を動かすほどの要求をする。 最高にエネルギッシュな映画であることは間違いないんだけど、なによりも感じられたのがイデオロギーを主張する人々である。例えば赤派などの団体がデモ行進をしていたり。当時の情勢を反映しているのだが、今やこう言ったものは危険思想とみなされる。よく知らない人がなんとなく良くないものだと思い込み、なんとなくマジョリティに加勢する。まぁ、最近言われるサイレントマジョリティーだろうか。平和ボケとも言えるかもしれない。この時代は若者が真剣に考え権力に対抗している。この映画も一種の主張のように思える。広島長崎に歴史的な悲劇を巻き起こした原爆をこの映画に登場するラジオのパーソナリティは「希望」という。そのような主張が特に表れていたのが、沢田研二と菅原文太のローリングストーンズの話ではないだろうか。 犯人は特になにか望みを果たすわけではないが、派手な事件を起こし、警察に捕まりたくないと逃げる。その根底から汲みとれることはたくさんありそうだ。 プールにプルトニウムを撒くシーンと、ラストシーンはかなり衝撃的。あれは銀座だろうか、、、。 個人的には高中正義の曲が使われててテンションが上がった。

  • Daiki Kinoshita
    Daiki Kinoshita 4 2017年10月21日

    本当に面白かった。 ブラックユーモアあふれつつ、コミカルに人間が描かれていた。物語の設定上都合の悪い壁はコミカルになかったかのように乗り切り、クレイアニメーションを見ているかのような演出。 結局主人公は自分のスゴさを認めて欲しいと強く思うが故に菅原文太に喧嘩を売り、世間へのアピールをし、自己肯定の強さが伺えた。キャラは全然違うけど、男のそういうエゴみたいなところがデスノートのライトのようなそんな気にも思えてくる。 原爆を作るシーンでは、ワクワクが止まらなかったが、あの瞬間に主人公のタイムリミットが動きだし、この映画そのものが主人公の余命として描かれていが、何より最後は結局自滅というような形で終わる。 プルトニウムを簡単に盗めたり、まんまと原爆を取り返せたり、ビルの屋上から落ちてた電線と木に引っかかって奇跡的に生きてたり、地味に学校の庭でやってたターザンとかがしっかり繋がっていてアホかと突っ込みたくなった。 ありえないカーチェイスや上半分がえぐれる山下の車とか、ヘリコプターに片手でしがみついてくる山下とか、何発撃たれても起き上がる山下とか、とにかく山下本当にゾンビだった。 水谷豊さんや西田敏行さんも若々しくて、とても新鮮な気分でした。 見る価値大有りの作品です。

  • 森本航洋
    森本航洋 4 2017年10月8日

    プルトニウムを盗んで原爆を完成させ、その莫大な力を利用して国家を脅かす理科教師の話。 ボロいアパートの一室で原爆を作る工程を一つ一つ丁寧に見せてくれる描写で主人公の未知数な狂気感とこの後どうなるんだろうという異常な興奮で完全に作品に引き込まれました。 あの針の糸を通すような丁寧な演出はどうやって作ったんだろうか。感無量です。 大盛り上がりの最終局面で菅原文太と沢田研二のバックの引っ張り合いは思わず吹いてしまいました。

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