砂の器

砂の器

1974年製作 日本 143分 1974年10月19日上映
rating 4 4
33 5

『砂の器』とは

『キネマの天地』の野村芳太郎監督、山田洋次と橋本忍の脚本で送るサスペンス映画。松本清張の同名小説が原作となっている。出演は丹波哲郎・森田健作・加藤剛ほか。1974年度ゴールデンアロー賞作品賞をはじめ、第29回毎日映画コンクール大賞・ゴールデングロス賞特別賞・モスクワ国際映画祭審査員特別賞など数々の賞を受賞している。本作は、蒲田の国鉄操車場で発生した殺人事件を追う刑事の執念と、犯人の背負う昏い宿命を描いた作品である。

『砂の器』のあらすじ

蒲田にある国鉄の操車場内で男性の死体が発見された。身元がわからず捜査は難航するが、警視庁の今西栄太郎刑事たちの必死の捜査によって前日の深夜に被害者と話し込んでいたという男性の存在が浮かび上がる。2人は東北なまりのズーズー弁で会話をし、「カメダ」という単語をしきりに口にしていた。秋田県に「羽後亀田」という名前の駅があると気付いた今西刑事は、その場所の付近を不審な男がうろついていたという情報を手に入れ、若手刑事の吉村を連れて捜査に乗り出す。しかし、成果は得られず戻ろうとしたところ、駅で話題の若手文化人集団「ヌーボー・グループ」のメンバーたちが人々に取り囲まれているのを目撃する。

『砂の器』のスタッフ・キャスト

『砂の器』の感想・評価・ネタバレ

  • Junichi  Nakamura
    Junichi Nakamura 0 2016年12月26日

    20161218 TOHO 上大岡

  • mince

    12月7日 西宮5

  • HM world-traveller
    HM world-traveller 4 2016年3月2日

    松本清張の同名小説が原作。約40年前の映画とあって演出・セリフ・衣装など随所に古さは感じるけれど、それを補って余りある見応えある人間ドラマ。登場人物の誰にも感情移入できないドラマも少なくない中、本作は加害者やその父親の心の機微を感じ、思い巡らさずにはいられない。犯人はなぜ犯行に及んだのだろうか。 これを観ようと思い立ったのは樹木希林さんの自然な演技が心にすうーっと沁みた映画「あん」を観たのがきっかけ。どちらもハンセン病の黒歴史を物語の下敷きにしている。この病いは手足や目鼻の変形など目に見える症状を伴うため差別や偏見, 迫害の対象になってきた。かつては遺伝性と考えられ「業病」などと呼ばれ、前世の罪の報いとか血筋による病という迷信がまかり通り、親族に発病者が出ると地域社会からつまはじきにされたり、強制隔離で一家離散に追い込まれたという。 以前原作を読んだ時には、おもしろいと思いこそすれ、心が感じ入ることはなかった。が、映画でその印象はガラリと変わった。ハンセン病への政府の対応や差別への警鐘がメインテーマではない。これは宿命でさえも断ち切れない親子の強い絆を描いた物語だ。 当時の社会通念と善意が裂いてしまった親子の人生。あの善意が紛れもなく人生の大きな転換点であり、あれがなければ親子は野たれ死にしていたかもしれないし、犯人の今の姿ももちろん無かっただろう。が、何とか凌ぎ冷たい世間の仕打ちに耐えながら人生の多くの時を共にしていたかもしれない。 途中まで、惹き込まれるけどそれ以上でも以下でもないと思っていた私の涙腺が終盤いきなり緩んだ。加藤嘉が写真を見て我が子だと確信しながら「こんな人は知らねぇ」と叫ぶ場面だ。病気と年齢のため朽ちかけた身体と心で思いの丈を内に秘めて精一杯絞り出したその声が胸に突き刺さった。 「宿命」の旋律にすべてを注いで渾身の演奏をする主人公。映し出されるのは父子が苦楽を共にしながら歩き続ける旅のシーン。引き裂かれた父への 誰にも言えない思いを、何者にも邪魔されず表わし浸ることができるのが音楽なのだろう。このシーケンスはセリフがほとんど無いのにとても饒舌だ。正義感に溢れた善良な恩人を殺める動機への充分な納得感はないけれど、作中の人物の気持ちにほんの少し近づいた気がした。 犯人は序盤から明らかだし、サスペンスとしてはあまりにも偶然が多過ぎたり捜査が雑だったりと目につくアラもある。が、宿命という音楽が深い意味を携えて迫り、観る者もまた宿命と呼ぶには些細であったとしても何らかの抗えないものがあるから、こんなにも心に強く響くのだと思う。

『砂の器』に関連する作品