マジック&ロス

日本・韓国・マレーシア・香港・中国・フラ
rating 3.8 3.8
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「マジック&ロス」のスタッフ・キャスト

「マジック&ロス」の感想・評価・ネタバレ

  • changpian
    changpian 4 2012年11月23日

     知り合いがSNSで呟いていたのに触発され、DVDで鑑賞。実は見たことがなかった。マレーシア出身のリム・カーウァイ監督の第二作。第一作『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』と第三作『新世界の夜明け』はすでに見ていたので、まずはこのフィルムがその二作のちょうど中間的な位置を占めると感じた。不安や焦燥が募る実験的な第一作、ストーリーテリングの旨さが目立つ第三作の間にあって、第一作よりは落ち着いて見られるものの、様々な解釈が可能なインディーズぽさの残るフィルムだった。  どのように解釈するかは、見る人によってわかれるだろう。香港・ランタオ島で美人女優二人が共演するリゾート・ムービーとして見る人。同性愛映画としてクィアな解読を試みる人。はたまたアジア多国籍映画としての側面を強調する人、など。アマゾンのDVDレビューでは、乳首が見えるかどうかについてのみ記しているものもある(笑)。  さて、韓国人のヤン・イクチュン、キム・コッピと、日本人(とされる)・杉野希妃が共演したこの映画、自分なら、以前にciatrでもレビューを書いたイム・テヒョン監督『大阪のうさぎたち』を補助線として引きたいところだ。2012年に完成したこの映画は、『マジック&ロス』と同様杉野希妃の主演・プロデュース。そのレビューでは「主演の二人がそれぞれカタコトの韓国語と日本語を交えて会話する…(もちろんそこには韓流ブーム以降の日本の風潮も影響しているのだろうが)」などと記した。だが、その際には、杉野自身が在日コリアンであることは全く意識していなかった。彼女は韓国留学中に既に韓国映画にも出演経験があったという。検索すれば、彼女が在日コリアンであることを記したニュース記事は枚挙に暇がないのだが、どうして気づかずにいたのだろう。なおかつ韓国留学経験があることをふまえれば、彼女が『大阪のうさぎたち』で(片言の)韓国語を話すことができるのも当然であるし、この『マジック&ロス』で、主演女優二人の体が一瞬入れ替わり、杉野が韓国人として韓国語を話すシーンがあることも理解できる。つまり、杉野が基本的に日本人役を演じながら、なぜか一部分だけ韓国人役に入れ替わり、韓国語を話すシーンは、日本人として振る舞いながら、そのアイデンティティを密かに表出する「マラーノ文学」として読み取ることができるのではないか。また、彼女がアジアを股にかけた活躍をし、アジア(インディース)映画のミューズと称されるのも、その出自(により身につけざるを得なかった国際感覚)と無関係ではないだろう。  『かぞくのくに』同様、ヤン・イクチュンの存在感も特筆すべきではあるし、いろいろな方向で解釈可能な映画ではあるのだが、まずは第一に考えたことを記す次第である。