花木蘭

花木蘭
香港
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「花木蘭」の感想・評価・ネタバレ

  • changpian
    changpian 4 2012年11月2日

     香港製DVDで鑑賞。大昔に買って、(おそらく同時期に発売された黄梅調映画ばかり見て飽きたので)未開封のままでいたもの。明日、シンポジウムで木蘭物語に関する発表のコメンテイターを担当する関係から見た。香港公開は1964年だが、香港電影資料館のデータベースによると、マレーシアでは63年末に公開されたという。  まず「黄梅調」とは何かというと、中国の地方劇「黄梅戯」を基にした中国映画に感銘を受けたショウ・ブラザーズのボス邵逸夫が、香港映画にもそのエッセンスを導入しようとしたもの。伝統的な地方劇と比べると、扮装はもちろん音楽的にもかなり変わっているらしい、が、どの映画でもヨナ抜き音階とは異なる音が混じる、独特の旋律を聞くことができる。  さて、監督の岳楓は、上海映画界出身だけに、上海映画『木蘭従軍』のプロットは熟知していたはずである。だがこの映画では、木蘭物語の違う側面を強調しようとして苦心した節が窺える。具体的には、 ・木蘭の昇進の様子ははっきり描かれない ・従兄が一緒に従軍する ・元帥に、その娘を結婚相手として押し付けられそうにになる などなど。女性が男装して功成り帰郷する、という筋書き以外はまるで別の物語のようである。  木蘭役の凌波は、前年の1963年に黄梅調映画の代表作『梁山伯與祝英台』に男性の梁山伯役として出演、特に台湾で爆発的ヒットとなる。女性が男性として出演した同映画はもちろんクィアな読みも可能であるが、実際台湾での大ヒットの理由として同性愛者がこの映画を支持したことを挙げる議論もある。だが、完全な男性を演じる『梁山伯與祝英台』よりも、女性であるのに男性のふりをしているが故に自分の本音を打ち明けられないこの『花木蘭』の方が、セクシュアル・マイノリティの苦悩を代弁しているような気がする。(『梁山伯與祝英台』ではむしろ相手役の樂蒂のほうが女性でありながら男装するという設定であるのだが。)クィアな読解の可能度において、この映画は『木蘭従軍』よりも優っているように思われる。  母親役は30年代上海映画から活躍する陳燕燕、父親役はショウ・ブラザーズで悪役も多く演じた楊志卿。女優に比して男優に華がないのは、この時期の香港映画の宿命か。  そうそう、撮影は満映出身で、香港映画界に大きな足跡を残した西本正。ただ、かれは香港映画においては「賀蘭山」等の中国人名でクレジットされるのが常であったように思うが、ここでは本名の西本正でクレジットされていた。香港電影資料館の情報では「賀蘭山」とされているのだが。他に本名でクレジットされている例はあるのだろうか。 [追記]秘蔵コレクションより、当時販売された「特刊」の画像を。ここでは撮影は「西本正」ではなく「賀蘭山」とクレジットされている。 http://ow.ly/i/15vbM

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