孽種

Seed of Evil, Nie zhong
台湾
rating 3.5 3.5
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「孽種」の感想・評価・ネタバレ

  • changpian
    changpian 3.5 2012年11月29日

     1981年公開。かつてVCDも出ていたようだが、画質の悪い台湾製ビデオで鑑賞。この時期にありがちな、台湾製か香港製かはっきりしない映画(香港電影資料館のデータベースでは香港製とされている)。だが、台北でロケをしていて、出演者の多くは台湾の俳優である模様。  監督・脚本・主演は、香港国語映画の全盛期を支えた女優、高宝樹。中国語圏の映画界において草分け的な女流監督であるが、その初期監督作『鳳飛飛』(同名歌手の芸名はこの映画から取られたか?)が武俠アクション映画だったように、女性監督らしさはあまり感じられない作風である。それにしても高宝樹、この時五十歳近いはずだが、若々しい。この映画の彼女はブルース・リーの愛人として知られる丁佩にも似ているが、映画中、丁佩の名前も出てくるのは面白い(出演はしていないが)。  そして、もう一人の主役が、和製カンフースター、倉田保昭!意外なことに、この映画はさらに二人の日本人が出演している。一人は舟倉たまき。wikipediaによると現在の芸名は舟倉由佑子であるという。映画の中では「舟」が中国語で同音の「周」に改められ、「周倉環」とクレジットされている。時代劇を中心に数多くのテレビドラマに出演しているようだが、なかなか可愛らしい。そして、もう一人は木村満則という人。無名の人物だが、検索するとドラマ『服部半蔵 影の軍団』の第一クール(1980)第二話に倉田とともに出演しており、その縁でこの映画にも出演することになったのかもしれない。  黃仁『王玨―九十年的人生影劇之旅』によると、この映画は1977年とされているが、舟倉たまきのキャリアから言ってそれはありえない。なお、同書によると舟倉は、台湾の映画賞・金馬奨の授賞式にも参加したことがあるという(同書は王引も出演しているとするが、実際には出ていない)。さらに同書は、日本の東映が援助をして、この映画の日本における版権を買ったとするが、ほんとうだろうか。  さて、前置きが長くなったが、ストーリーは以下のようなもの。中国で16歳で強姦され子供を生んだ高宝樹は、香港に出て苦労の末、映画スターの座を射止め、さらに台湾の資産家と知り合い結婚する。一方残された息子(倉田)は、育ての親である母方の祖母を闘争大会で地主として批判し死に追いやってしまう。その後香港に脱出した彼は、表向きは姉として高宝樹に接するが、その「姉」の存在を悪い連中に知られ、倉田は放蕩の世界へとはまっていき、金をむしり取られそうになる。高宝樹は彼を香港から台湾に連れて帰り、自分が資産家の夫らと暮らす邸宅に住まわせる。だが、義理の息子(木村)、実の娘は彼女を「お母さん」と呼ぶことができるのに、倉田は(資産家の夫の手前)姉としか呼べないということもあり、鬱屈した憤懣が溜まった彼は、ますます放蕩の道にはまっていき…。  舟倉は孤児院の先生で木村の婚約者という役柄。大陸での地主の批判大会の場面は、反共的な要素も感じさせられる。また、香港の北京語映画界で活躍した高宝樹の周りには、大陸から香港へと脱出した人は無数にいたはずであり、現実のモデルがいるのかもしれない。だが、ここでの倉田の転落人生は、急速すぎてやや現実離れしているようにも思われる。  倉田保昭は、珍しくシリアスな演技をしている。アクションシーンは少ないが、武術の達人という設定ではないのに、無意味に切れ味鋭いアクションを見せる(笑)。  倉田に対して、子どもたちが、「アラン・ドロンに似てる!」「私は劉永に似ていると思う」というせりふがあった(劉永はブルース・リー映画にも出演、この当時ショウ・ブラザーズで活躍した映画スター)。あと、絵がうまい子供に対し、張大千に弟子入りさせればいい、というせりふもある。中国生まれの書画家・張大千は世界を放浪したあと1978年に台湾に居を構え、1983年にこの世を去っている。