薔薇の葬列

薔薇の葬列

1969年製作 日本 104分 1969年9月13日上映
rating 4.8 4.8
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『薔薇の葬列』とは

実験映画の製作で知られる松本俊夫監督が、斬新な映像表現・技術を用いたことで今なおカルト的人気を誇るスリラー映画。ゲイバーで働く美少年の身に降りかかる、数奇で悲劇的な運命をドラマチックに描いている。当時ゲイバーで働く主演の美少年役をオーディションで選考したが該当者が見つからず、六本木のクラブで働いていたピーターに白羽の矢が立ったことで鮮烈な銀幕デビューとなり話題を呼んだ。撮影は『水で書かれた物語』を担当した鈴木達夫。共演には土屋嘉男、東恵美子、芝山幹郎らが名を連ねる。

『薔薇の葬列』のあらすじ

新宿のゲイバー「ジェネ」で働く美少年エディは、経営者の権田と秘密の情事を交わす間柄にあった。しかし「ジェネ」のママであり、権田の愛人でもあるレダはそれを苦々しく思っており、2人の諍いは日に日にエスカレートしていった。ある時エディは我慢の限界を迎えレダを殺すことを考えるのだが、その瞬間エディに昔の記憶がフラッシュバックする。母に女手一つで育てられたエディは、ある日偶然母の情事を目撃してしまい、突発的に母を刺殺してしまう。そのことが原因でエディは心に深い傷を負っていたのだった。昔の嫌な思い出に苦しむエディは、ベトナム戦争帰りの黒人・トニーと寝ることで過去から逃れようともがき苦しむ。その後、レダとの関係は修復のしようのないものとなり、レダの仕掛けた陰謀の顛末からレダは自殺をしてしまう。こうして、権田も店も手に入れたエディだったが、権田が引き出しから取り出した1枚の写真によって、物語は見るも無残な方向へと転がっていくのだが……。

『薔薇の葬列』のスタッフ・キャスト

『薔薇の葬列』の感想・評価・ネタバレ

  • Under Sandet
    Under Sandet 4 2016年4月10日

    「我は傷にして刃 生贄にして刑吏」 表裏一体の存在?明度の高いモノクロで描かれる、ドイツ表現主義の流れにあると思われる作品。松本俊夫作品は初鑑賞となる。新宿のゲイバーを主な舞台とし、近年、映画で描かれることが多くなったLGBTを題材としており、時代を先取りしている。彼らにインタビューをする男はマスメディアに対するメッセージか?時系列を入れ替え、映像に対する工夫が沢山凝らされているので、眺めているだけでも楽しい。映画開幕後20分ほどで再びタイトルが表示されたり、ホワイトアウトでサイレント的な字幕演出、トイレのシーンで画面一杯に映倫マークが出るなど、ゴダールを彷彿とさせる型にはまらない演出が目立つ。テーマも含め、前衛的な邦画と言えるだろう。人は人と向き合う時、常に仮面を付けているし、その下に素顔があるとも限らない。人は別個の奇妙な存在であり、常に孤独なのだ…。「ゲイ」は仮面なのか?人は常に何かを演じているということを、入れ子構造によって端的に表しているとも取れる。劇中に淀川さんが登場するなんて、なんてメタ的なんだろうか。 度々モチーフとして現れる薔薇は何を示すのか。マリファナに犯されて行くヒッピー的若者たちを描くことで、それらの突飛な演出になんとなくリンクしていく。蜃気楼のような実体のないこの世界で、一体何を信じて生きて行けばいい?度々顔が剥がれた人間の画が差し込まれるように、人の正体は『ミスト』のような世界に生きる醜いバケモノなのだろうか。パゾリーニの『アポロンの地獄』がポスターで登場するように、本作でも重要な役割を担っている。

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