
『消えた声が、その名を呼ぶ』のスタッフ・キャスト
『消えた声が、その名を呼ぶ』の感想・評価・ネタバレ
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前半は良いけど後半が最悪 ご都合主義
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娘たちを探す父の壮大な旅路に、オスマントルコ帝国のアルメニア人虐殺の歴史と、各地へ散らばった移民の道のりが重ねられる。主人公ナザレットはキリスト教徒として処刑されかけ、生き延びて地獄を見ることで神に絶望するのだが、その後あちこちで同胞の博愛に助けられもする。まるで妻の幻影や子守唄が導くかのようで、例え奪われても消えない祈りという意味かもしれないし、ナザレット自身の選択の違いが神の意思を変えたようにも受け取れた。重苦しいギターサウンドと清らかな歌声の反復が全編に響き渡って強烈。 ただ、正直言って映画としては前半と後半でちょっとバランスが偏ってる。事実としての重みと創作の差か。良い場面といえば鶴嘴にもたれる男がそのまま墓標になったり、暴力行為を敢えてロングショットで捉えたところだったり。チャップリンの『キッド』も重要なんだけど、いささか唐突な気がしたり。優しい眼をしたタハール・ラヒムが年月の割に若々しすぎたり。ファティ・アキン監督はけっこう力技みたいなところがある。原題「The Cut」には声を失った傷と共に、同じ土地に暮らす隣人同士の分断も含まれているような。それはいつどこでも本当に痛ましい。
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1920年代、オスマン帝国に喉を裂かれ声を失った父親は、生き別れた双子の娘を探すため凄絶な旅に出る。トルコ、キューバ、アメリカ。行く先々で善人との出会いがあるが、それ以上の絶望もある。2時間半、1分たりとも眠くならなかったわたしもすごい。