父を探して
父を探して
O MENINO E O MUNDO / THE BOY AND THE WORLD
2013年製作 ブラジル 80分 2016年3月19日上映
rating 4.6 4.6
4 8

『父を探して』のmazdaの感想・評価・ネタバレ

mazda

出稼ぎにでた父を探しに旅にでた小さな男の子が、いろんな人に出逢いながら社会の現実を目の当たりにするブラジルのアニメーション映画。 2016年良かったアニメーションは間違いなくズートピアだと確信していたのだけどそれよりずっと私の中で響いた大好きな映画になった。すごく良かったけど、何がどう良かったっていうのはとても言葉にできる映画ではないと思う。説明のできない鳥肌と説明のできない涙が流れてた。 ストーリーももちろん良かったけど何よりよかったのはこの映画を見ている時の感覚。子供の頃の記憶をみてるみたいにすごくノスタルジックなきもちになる、やさしくて、あたたかくて子供の感覚を思い出すような不思議な感覚を得た。 クレヨンや色鉛筆の絵本みたいな独特の色合いと頭から離れない笛の音、お祭りの唄。セリフというセリフはなく、大人の会話は何語かわからない言葉で、男の子と同じように何を話しているんだろうって視点でこの世界をみる。 正直もうこれだけで素晴らしいんだけど、そのなかにまじる社会の現実に、すごくチクチクしたきもちが交わってくる。子供の頃のただただ純粋なきもちと、見たくない現実と向き合う大人のきもち、両方がわかるからこそすごく複雑な感情になる。大人の絵本。 戦争や自然破壊、機械の発展、仕事を失くす人々、悲しい顔をする大人、これでもかと描かれる苦しい現実を、なにも知らない男の子はその純粋な目でどんどん吸収していく。世界の事実に直面する。 そんな簡単に苦しい世界は変わらない、男の子は父が家族のために苦しい現実にぶつかっていくことをまだわかる歳じゃない。それでもこの世界に流れる不穏な空気には気づいてるはず。なんでこの人悲しい顔しているのかな、なんで楽しくないのかな、好奇心が働くからこそ、世界中のたくさん苦しいことに気づいて彼は大人になってく。 それでも男の子はこの苦しい世界と一緒に交じる楽しいことに気づける。世界は苦しくて悲しいことばかりではないこと、お祭りみたいに色鮮やかで楽しい音色が彼はどこにいたって聞こえてくる、必ずハッピーになる要素はどこにでもある。この旅で気づいたことは男の子の人生にとって大きな道筋になるんだろう。 うねうねに曲がる道が大きな波に変わっていくシーンがすごく好き。社会の波にのまれそうになりながらも、彼は進み続ける。どこにいても、大人になっても子供の頃のあの時の感覚はずっと忘れない。 この映画を観てたくさんの大人が忘れちゃいけないことを思いだす。見たくない現実を見ても私たちが純粋なことに変わりはない。それは大人になっても一緒だよ。すごく素晴らしかった。