
『顔たち、ところどころ』のs_p_n_minacoの感想・評価・ネタバレ

アニエス・ヴァルダと若いアーティストJRによる、“顔のツール・ド・フランス”。地方都市の市井の人々は、名前でなく顔や姿で物語る。見知らぬ人々とアーティストが出会い、その生活や仕事や人物を切り取り、彼らの巨大なモノクロ写真を各地の建物などに貼り付けるこのプロジェクトが、とても良かった。特に、炭鉱夫住宅とトーチカに貼り付けた写真の迫力たるや(湾岸コンテナの高さにはビビった)。過程をサクサク省略してるけど、毎回なかなか大変な作業ではないかと。 一方、ヴァルダが視力の弱った目から小さな足まで作品化するのに、JR自身が黒眼鏡を決して外さないという、そんな伏線がドキュメンタリーにドラマを生む。見ること見せることは、ヴァルダの過去作品やゴダールへのオマージュ、そしてゴダールのイケズぶりとJRの素顔へと繋がり、顔はある意味正直だ。軽やかに、ところどころに散らばってるから面白い。音楽とタイトルバックも好き。