荒野にて

荒野にて

Lean on Pete
2017年製作 イギリス 122分 2019年4月12日上映
rating 3.5 3.5
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『荒野にて』のスタッフ・キャスト

『荒野にて』の感想・評価・ネタバレ

  • s_p_n_minaco
    s_p_n_minaco 0 2019年5月30日

    荒野を突き進む家なき子チャーリー。彼も父親も出会う大人たちも最初からそうだった訳じゃない。そうせざるを得なかった。競走馬ピートもそうだ。悪い人じゃないとしても善い人ではいられない、そんな現実を絶妙に体現したブシェミが良かった。 近所を当て所なく走っていたチャーリーが小さなコンテナのような家を捨て馬を乗せたコンテナを曳くトラックで闇へ飛び出し、やがてトラックを捨て馬と僅かな荷物で荒野を歩き、寝ぐらを渡り歩き、そして身一つで辿り着いた家。父親が残したベルトはぶかぶかで、ピートを曳く手綱は長すぎる。どんなに一緒にいたくても、そこに行くには父も馬も大きすぎる荷物だった。 けどある意味父の教え通り、チャーリーを食い繋がせてくれるのは皆ウェイトレス(父の恋人もファミレスのウェイトレス同様に顔を見せるのは最後のカットだけ)。既に男社会(という生存競争)に属している女性騎手はビールを勧める(大人として扱う)が、食事を与えアイスクリームをご馳走するウェイトレスたちはチャーリーをちゃんと「子供」として扱うのだ。とはいえ、立ち寄った家の女の子は家族に飼われているかのようで悲しい。もしチャーリーが女の子だったら…という仮の姿かもしれなくて。 馬と少年の旅はいくらでもセンチメンタルで叙情的になりそうなものだが、馬に乗ったことがないチャーリーとピートの間にはあくまで距離がある。単に心通わせる同伴者ではなく、旅にはそんなロマンもない。疎遠だった叔母との距離は、出会ってもまだ離れている。やっともたれかかることが出来ても、家を見つけても、薄っすら胸騒ぎが消えない。promiseと繰り返す言葉にはまったく保証がない。ラストショットのチャーリーは『大人は判ってくれない』のアントワーヌ・ドワネルじゃないか。現代アメリカ社会を描きつつ、アンドリュー・ヘイにはどこかトリュフォーに似た風情がある。 チャーリー・プラマーは当初きれいすぎる気がしたけど、やがてなるほどと納得。ただでさえ華奢なのに痩せこけて汚れてゆく心細さ。それでも頼れない、頼らせてもらえない。家宅侵入して服を盗むかと思えば洗濯するところが妙に面白かった。しかし馬…本物は無事でありますように。

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