善き人のためのソナタ

善き人のためのソナタ

Das Leben Der Anderen / The Lives of Others
2006年製作 ドイツ 138分 2007年2月10日上映
rating 4.1 4.1
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『善き人のためのソナタ』とは

1984年、国家施策として要注意人物の監視を続けていた旧東ドイツを舞台に、秘密警察局員が監視対象に感銘を受けて目覚めてゆく姿を、リアリズム溢れる描写で綴るヒューマン・ドラマ。主演は『ファニーゲーム』などで知られる演技派ウルリッヒ・ミューエ。出演は他に『マーサの幸せレシピ』のマルティナ・ゲデック、『ブラックブック』のセバスチャン・コッホ、『ソラリス』のウルリッヒ・トゥクールら。監督・脚本は、本作が長編デビュー作となる新鋭フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク。本作で注目された後、ハリウッドに招かれてアンジェリーナ・ジョリー主演の『ツーリスト』監督に抜擢された。2006年アカデミー外国語映画賞受賞作。

『善き人のためのソナタ』のあらすじ

ベルリンの壁崩壊より前、1984年の旧東ドイツ・ベルリン。監視国家の要として、国民統制の為の施策を続ける国家保安省(シュタージ)の局員たちは、反体制派撲滅の為に日々活動を続けていた。ある時、シュタージの中でも忠誠心に長ける局員ヴィースラー大尉は、劇作家ドライマンと女優クリスタの監視を命じられる。反体制の嫌疑が掛けられたドライマンのアパートを盗聴し、屋根裏に潜んで徹底的な監視を続けるヴィースラー。実はクリスタは、ヴィースラーに監視を命じたシュタージのヘムプフ大臣に手籠めにされており、半ば強制的に関係を続けさせられていた。私利私欲にまみれた指示であっても忠実に実行するヴィースラーだったが、ある時ドライマンがピアノで奏でた「善き人のためのソナタ」を耳にした瞬間、彼の中で変化が起き始める……。

『善き人のためのソナタ』のスタッフ・キャスト

『善き人のためのソナタ』の感想・評価・ネタバレ

  • HM world-traveller
    HM world-traveller 4 2015年10月29日

    どんなに厳格な統制も人の良心まで統制することはできない。 舞台はベルリンの壁崩壊前の東西対立の続く東ドイツ。国民はシュタージ(国家保安省)の厳しい監視下に置かれ、西側スパイとおぼしき者や反体制分子は当局によって弾圧されていた。当時、数十万人にのぼる一般人がシュタージの協力者・密告者だったというから驚く。思ったことを安易に口にしようものならどうなるかわからない忌むべき暗黒の時代。 シュタージの有能な大尉が、反体制派の要注意人物である1人の劇作家の監視(盗聴)任務を通じて彼らの生き様を知るにつれ良心の苛責に苛まれていく。大尉の心を動かしたのは何だったのか。 終始暗めで抑えたトーンの画面と、無表情な中にも葛藤や迷いが見え隠れする大尉の目。饒舌とは言えないセリフとわずかな表情の動きで心情が語られる寡黙な映画だけど、水がしみ込むようにとても静かに、だけど確かに少しずつ心が揺さぶられる。 この大尉はとても生真面目な人なんだと思う。生真面目な愛国者ゆえに国のやり方をそれが正義だと信じて愚直に従ってきた。無表情なのも、独り身の寂しさを意識しないよう 感情を押し殺して生きてきたせいかもしれない。自分とは違う作家の生き様、彼らの視点で語られる政府、ファンだった女優の苦悩、殺伐とした空気を一変させるピアノの音色など、知り得た全ての積み重ねが理屈では説明し難い感情となり彼を突き動かしたのだと思う。 今年の5月、チェコへの旅の際に立ち寄ったベルリンは壁の跡や史跡, 当時を綴る書や写真はあちこちで見られるものの街自体は一介の旅人の目には至って普通で旧西側と何ら変わらない佇まいだった。ベルリンの壁崩壊から26年。多くの人生と歴史があって平和な今がある。 ラストのセリフ。短いけれど万感の想いを感じた。『私のための本だ。』

  • ウエ

    東ドイツのことあまり知らなかったから勉強になった。興味深かったけど、面白いかと聞かれれば面白くはなかったかなと答える。 地味暗い主人公とリア充作家との対比は良かったかも。主人公は自分の殻を破って人間的には成長したうに思うけど、地位を失って、どうなんだろう後悔したことあるのだろうか。

  • tora

    東ドイツを中心に物語が展開するジョン・ル・カレの寒い国から帰ってきたスパイを読了して以来、観たいなあと思っておりました。ついに鑑賞。社会主義国家の優等生と言われていた東ドイツの暗部シュタージ側の視点にたって進むお話。東西冷戦が緊迫していた時代、西側スパイ及び国内の二重スパイや西側諸国への亡命者、反共思想者を厳しく取り締まっていた秘密警察シュタージ及び高級官僚の高圧的な言論統制、人権蹂躙、徹底的な監視体制等、諸々の腐敗を克明に描いていて興味深い。シュタージのエリートに属しつつもある事を契機に良心の呵責に苛まれ、自分なりに信じる良心に従って組織の規律に背いて生きる事を決断した男の物語。国民の10人に1人がシュタージ及びIMだったという事実はベルリンの壁崩壊後も旧東ドイツの住民、家族間に人間不信や家庭崩壊等様々な傷を遺しています。余談ですが、当時の東ドイツサッカーリーグもシュタージが深く関与しており、審判に不正を働かせる等して、バックアップを受けていたチーム、ベルリナーFCディナモが不正の結果リーグ戦10連覇を成し遂げる等スポーツの領域でも当時のシュタージの影響力の強さが伺えます。

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