2017年7月6日更新

壮絶な夜明けを138分間ワンカット長回し!映画界に激震を与えた衝撃スリラー公開

ドイツ映画賞の作品賞を含め多数の賞を獲得し、映画界を震撼させた驚異のサスペンス・スリラー『ヴィクトリア』が、2016年の5月についに日本で公開されます。今回は、何故これほどに高評価を得ているのか、その魅力をご紹介します。

ドイツ映画界に衝撃を与えた驚異のスリラー映画『ヴィクトリア』とは

ドイツ出身のセバスチャン・スキッパー監督による驚異的な長回しを成し遂げた『ヴィクトリア』。全篇2時間18分をカメラを止めることなく長回しで撮影したとしてドイツ映画界に衝撃を与え、2015年のベルリン国際映画祭で3冠、ドイツ映画賞で作品賞を含む6冠に輝きました。

そんな身震いするような高い映像技術に加え、負けないパンチのあるストーリーも相まって世界から注目が集まり、2015年には東京国際映画祭の「ワールド・フォーカス」部門でも上映され高い評価を得ています。

ヴィクトリア4

夜明け前のベルリンを舞台とし、とあるクラブで出会ったスペイン人の女性とドイツ人の若者4人組が次第に仲を深め、夜が明けて行く中で想像もつかない深い闇に染まっていくというサスペンス・スリラー映画です。

そもそも「ワンカット」「長回し」って何が凄いの?

Why

映画の用語で「ワンカット」「長回し」という言葉自体はよく目にするけど、良く分からないという方もいるでしょう。これらは簡単に言うと、「カメラを止めずに長い時間撮影し続ける」ということなのです。具体的な定義はありませんが、数分間カメラが回りっぱなしの状態を言います。

一般的に、映画やドラマなどの映像作品では場面転換や視点の切り替えのためにカメラを何度も止めて多くの素材(カット)を撮影し、それを編集して繋げます。そして、ワンカットと言うのは文字通り、1つの映像素材のみを利用したシーンのことを言うのです。

カット

出典: vitaminw.co
映画監督が「はい、カット!」なんて言っている映像を見たことありませんか?

ワンカットの撮影では、役者陣が長い台詞を全てミスなく言い切らなければならないのは勿論、照明や音声、カメラマン等のスタッフを含めてミスが許されないために難易度が高いとされています。たったの数分でさえ。

そして、本作『ヴィクトリア』はそれをなんと138分にわたって展開しているのです。なんだか凄い気がしてきましたか?

『ヴィクトリア』が長回し映画の最高峰である3つの理由

ヴィクトリア2

その①:固定視点ではない!

カメラを長く回しっぱなしにしていれば動きが無くてもそれだけで「長回し」になるし、「ワンカット」となります。しかし、本作が凄いのはとにかくカメラが動きまくること!!信じられないくらいに全篇にわたってカメラが動きまわり、ロケーションもどんどん変わっていきます。

なんと、実際にベルリンでロケを敢行し、シーンとロケーションや登場人物たちの大まかな動きを記した覚え書きのみを用いて、138分ぶっ通しで撮影をしたそう。ベルリン市内を男女5人が歩いて、走って、暴走して…。様々なカタチで動き回る非常に動的なストーリーとなっています。

退屈で眠くなってしまうかも…なんて思っている方にもお勧めできる作品です。

その②:ツールを一切使っていない正真正銘の「全篇」長回し

バードマン

長回し映画として記憶に新しいものに『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』がありますが、ワンカットの映像が2時間にわたり展開されることで非常に話題になりました。しかし、「まるで長回しに見えるように、編集で切れ目のないように繋いだ」旨を監督自身が語っていました。

ロープ

また、古くに遡ればアルフレッド・ヒッチコック監督の実験的映画『ロープ』がありますが、当時はフィルム撮影が一般的だったために一度の撮影時間には限度がありました。だから、俳優の背中や壁などのアップのシーンで一旦カメラを止め、フィルム交換をしてから撮影を続行していたのです。

このように、かつての巨匠の映画からも、長回しで映画を撮影する難しさは明らか。ところが、本作はそのような編集技術的な工夫によって映像を途切れさせてはおらず、正真正銘の「全篇長回し」となっているのです、その点も寄与し、非常に高く評価されているのでしょう。

その③:ワンテイクで全てのアクシデントを受け入れた

ヴィクトリア6

出典: i.ytimg.com

本作は138分の長回しでの撮影が行われたために、全てが想定通りに進んだというわけではないようです。台詞もカッチリと脚本に定められていたものではなく、俳優たちの演技の中で自然に発せられた即興の言葉が必然的に「台詞」となっています。台詞にドイツ語とブロークンイングリッシュが混在しているのもそのため。

「ワンテイク」というのは、撮り直しをすることなく一度の撮影で取りきったということ。ミスが許されないその状況の中で、役者陣・スタッフ陣の死に物狂いの努力が実を結んで出来たのがこの『ヴィクトリア』という映画なのです。

本作には、撮影中に起こった想定外のハプニングが全てカメラに収められています。そして、そんなアクシデントすら、作品の味を出すことに一役買っているのです。

たった138分間で、人生の全ては変わってしまう

Life Clock

これまでワンカットという技術的な面で紹介をしてきましたが、この映画は決してただ長回しが凄いだけの映画ではありません。しっかりとストーリーも計算されていて、確かなメッセージを受け取ることが出来る深みのあるストーリーをも兼ね備えています。

夜中、無垢な少女と謎を持った青年4人組との出会いから、夜明けまでの時間はこの映画の上映時間と同じ138分。彼らが巻き込まれる予想だに出来ない極限のサスペンスを私たちはリアルタイムで体感することになります。

138分を長回しで撮影したと考えると非常に長いように感じるけれど、人生を基準とすればとてもとても短い時間。人生とは、たった138分でこうもガラっと変貌を遂げてしまうのです。

その138分間で、あなたの価値観すら変わるかも知れない

ヴィクトリア5

出典: i.ytimg.com

これまで魅力をお伝えしたドイツ映画の新境地『ヴィクトリア』が、2016年5月より日本で公開されることが決定しました。一時も画面から目が離せない緊張感に包まれたこの最高峰のサスペンス・スリラーを、是非劇場でご堪能されてはいかがでしょうか。