『ダークナイト』が未だに最高のヒーロー映画である10の理由

2017年9月12日更新

史上最高のヒーロー映画と言われる『ダークナイト』。2008年の公開以来その地位を保っています。今回はそんな『ダークナイト』が名作と呼ばれる理由を探っていきます。

ヒーロー映画の最高傑作『ダークナイト』

2008年に公開されたクリストファー・ノーラン監督の映画『ダークナイト』。バットマンが宿敵ジョーカーと戦う姿を、今までにないシリアスさで描いています。 それから続々と新しいヒーロー映画が公開される中で、未だに史上最高と名高い『ダークナイト』。そんな『ダークナイト』の魅力はどこにあるのか、10のポイントにまとめて紹介します。

1.原作コミックとの適度な距離感

漫画が原作である作品を映画化する際、どれだけ完璧に原作に沿うべきなのかは作品の評価を大きく左右します。これは映画製作者を悩ませる問題ですね。 あまり原作の知名度が高くないヒーローなら、この点はさほど大きな問題にはなりません。例えば『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のピーター・クイルやドラックスの描かれ方が「正しい」かどうかが取り上げられることはあまりありませんね。 しかしこれがバットマンとなると、映画の善し悪し以前に“キャラクターが私たちが長年親しみ馴染んでいる姿に合っているか”、が問題になります。そのため、自由の利かない退屈な映画になってしまう危険があるのです。

『ダークナイト』はこのデリケートな問題に直面しながらも、それを見事に解決した良作と言えます。 『ダークナイト』の各キャラクターは、必要不可欠な部分はもらさずおさえながらも、映画の独特なゴッサム・シティの世界観にうまく合うように調整されています。バットマンもジョーカーも私たちの知る姿からかけ離れてはいませんが、同時に今までに見たことのない斬新な一面も持っているのです。

2.脚本の「マジ度」が違う!

年々人気の増しているヒーロー映画に対してよく向けられる批判に、「悪役の行動の動機が良く分からない」というものがあります。また、メインの登場人物以外のキャラクターに全く深みがなく、ただ単に話を進めるための道具としてしか使われていない、ということも残念ながら見受けられます。 『ダークナイト』は違います。秩序とカオス、法に沿った警察と自警、そして正義と復讐といった二項対立が『ダークナイト』のテーマの根本なのです。ジョーカーは明確に「善」の面が向けられたコインをひっくり返し、混乱をもたらす存在として行動します。 ジョーカーは判事を殺し、バットマンの「人を殺さない」というルールを崩壊させ、そして正義を追求するハーヴィー・デントを血なまぐさい復讐の谷へと突き落とすのです。

そして後に「トゥーフェイス」となるハーヴィー・デントの物語は、単純なサイドストーリーとしてではなく、見る者の感情を揺さぶる『ダークナイト』の欠かせない要素として繊細に描かれています。 ゴードン警部やルーシャス・フォックスにも重要な位置が与えられており、さらにはレイチェル・ドーズが救われることなく本当に亡くなってしまうことから、『ダークナイト』の脚本は数あるヒーロー映画の中でも「本気度」のレベルが違うと言えるでしょう。

3.ヒーロー映画としてのジャンルを超越

『ダークナイト』はその考え抜かれた脚本のおかげで「ヒーローもの」というジャンルを超越しています。アメコミヒーローものも普段は興味ないのに『ダークナイト』は観てしまった…という方は意外と多いのではないでしょうか? ヒーロー映画にはいくつか「決まり事」があるものです。地球破滅の危機が訪れたり、戦いのシーンは危険性が少なく血がほとんどでなかったり、ストーリーは若い鑑賞者にも簡単に受け入れられるよう非常にシンプルなものであったり。

そんなパターンに従わなくても良質のヒーロー映画は作れる、ということを証明したのが本作です。『ダークナイト』におけるコスチュームなどのコミック的な要素は世界観に合うように洗練されて使われていますし、またストーリーも複雑で全体的に大人向けの映画になっていると言えます。 『ダークナイト』はヒーローものでありながらしっかりとしたクライム・サスペンスでもあり、スリラーでもあり、またアクション、アドベンチャー映画でもあるのです。また、数年経っても忘れられないシーンの数々は作品に深いドラマ性とユーモアまでもを与えています。 「バットマンについての名作」というよりは「バットマンが出てくる名作」と言った方が適切かもしれませんね。

4.前後作を気にせず、一本の映画として楽しめる!

近年続々と公開されているコミック原作のヒーロー映画のほとんどは、観客が前に作られた他の映画を見ていることが前提とされており、また次作に向けてストーリーを組み立てることが、メインの話の流れを少々止めてしまう、ということもよくあります。 すべての映画を追っていないと、新作を見た時に何が起こっているのか良く分からず混乱してしまうこともしばしば…また、一作一作の映画としての面白みもちょっと減っていくような気がしますね。 その点『ダークナイト』一本で完結する話を味わうことができます。また、他の映画で弱点を隠すこともできなくなるので、映画は新鮮味を帯び、脚本は完全で最高のものを目指すことができたのです(『ダークナイト』製作当時は続編を作ることは念頭にありませんでした)。

5.傑作!オープニングシーン

What's an opening scene that is on par with The Dark Knights opening scene?

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長い映画の歴史の中で、最初の5分間で観客を引きつけて離さない、力強く衝撃的なオープニングを持つ映画はそう多くありません。『ダークナイト』のオープニングは明らかにその一つです。 ピエロの仮面をかぶった集団による銀行強盗のシーンは緊迫感にあふれ、また仲間内でお互いを殺しあう描写から、映画全体の重さが早々に伝わってきます。 また、ジョーカーの待ってましたと言わんばかりに仮面を取り、その不気味な顔を露にする瞬間は、コミック史上最も人気のある悪役にふさわしいものであり、この映画におけるジョーカーの存在感を際立たせています。 映画史に残る名オープニングシーンと言っても過言ではないでしょう。

6.伝統の殻を破る撮影方法

This shot will forever be burned into my brain. ???? #TheDarkKnight #Joker #WallyPfister #cinematographer #HeathLedger

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今日ではIMAXの使用はもはや珍しいものではありませんが、実は『ダークナイト』が劇映画で初めてIMAXカメラでの撮影を導入した映画なのです! ほとんどのヒーロー映画のように3Dで製作することを蹴り、IMAX使用を決断したことで『ダークナイト』には一石二鳥の効果がありました。公開当時世界第④位の興行収入を記録し歴史に名を残しただけでなく、映画の中でキーとなるシーンを際立たせ、観客に与える影響を強くしました。 オープニングシーンではジョーカーの登場を可能な限り大きなスケールで描く必要がありましたし、レイチェルの手紙のシーンは詳細である必要がありました。IMAXカメラのおかげで私たちは、ハーヴィー・デントの傷から流れる血の一滴、また手紙を読み上げるアルフレッドに浮かぶごく微妙な痛みの表情まで見分けることができたのです。

Happy Birthday Michael Caine who turns a young 84 today! Here's a snippet of him interviewing with Morgan Freeman for #TheDarkKnightRises

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アクションシーンの撮影もまた、伝統に反旗を翻した方法で行われました。2004年に公開された『ボーン・スプレマシー』以降、ハリウッド映画におけるアクションシーンは素早く短いカットと揺れるカメラの動きを組み合わせた方法が一般的になりました。 このような撮影は予算を安くおさえることができるので今でも愛用されていますが、見ている側からしたら、起こっているアクション全体の流れを掴むことが難しく、一体何が起こっているのか分からなくなり、感情移入することが難しくなってしまいます。 『ダークナイト』撮影担当のウォーリー・フィスターは異なる方法での撮影を決断しました。各ショットにおいてカメラを固定し、2〜3秒間はそのまま映し続けるようにしたのです。 こうすることで観客は派手な爆発や戦闘の最中でも、登場人物の顔に浮かぶ痛みや苛立ち、怒りを見失うことなく、またアクションシーンの全体像を掴むことができました

7.無駄のない、リアルなアクションシーン

I need one of these when I see people texting in the theater. ???? #TheDarkKnightRises

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多くのヒーロー映画では、ヒーローが実際に危険に陥っている、という感覚を抱くことはあまりありません。しかし『ダークナイト』のアクションシーンは、心の底からバットマンの身を案じてしまうほどに危険でリアルなものになっています。 その理由の一つがCGの利用が少ないということ。コミック映画では平均して1000〜2000のCGのシーンが使われるといいますが『ダークナイト』における視覚効果の数はなんと約650。トラックが宙返りするシーン、病院が爆発するシーン、これらは実際に撮影されたもの。さらにバットモービルとバットサイクルも実際に運転可能な本物なのです! 実際のものが周りにあると役者もやはり演技の質が上がります。そして実写のアクションシーンが醸し出す緊張感はCGでは再現できません。

Let me strike a pose in front of the batsuit real quick... #TheDarkKnightRises

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爆発、殴り合い、戦闘などのアクションシーンはヒーロー映画に取ってはなくてはならないものです。しかし、しばしば「アクションのためのアクション」と化してしまい、あまり意味を持たない無駄なアクションが数多く挿入されます。 『ダークナイト』にはそれがありません。この映画で描かれる全てのアクションシーンが使い捨てされずにきちんと尊重され、意味を持っています。だから、見ていて気持ちがいいのかもしれません。バットマンのガジェット見せつけるためだけの余計なアクションはないのです。 さらに終盤では2つもの巨大な船を爆破させることを意図的に回避しています。最高のスペクタクルを見せられる可能性を捨てることで、シーンにより重みを出すことに成功しました。

8.ただの背景ではない!サウンドトラック

ヒーロー映画は先にも述べたように前後作のつながりが強いので、使われる音楽もまた似通ったものになり、見る人の印象に残ることはあまりありません。しかし『ダークナイト』のために作られたサウンドトラックは、他のコミック映画とは一線を画すものであり、音楽のためだけにもう一度映画を見たくなるほど印象的なものになっています。 『ダークナイト』において、ハンス・ジマーとジェームズ・ニュートン=ハワードの二人の作曲家は、見事に音で登場人物の性格を描き出すことに成功しています。ジョーカーの生々しく、カミソリのように鋭い、身の毛もよだつような音。対してバットマンの迫力のある、轟くようなドラム。二人の対立は音楽の面でも明らかです。 この二項対立は映画のメインテーマでもありますが、そのテーマが脚本、キャラクター、さらには音楽の面にまで一貫して現れているところに『ダークナイト』の凄さがあります。

9.素晴らしいキャスト

So I wrote and directed a comedy skit. Would love if you watched it. Link in bio! ????Password is TristanElder

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『ダークナイト』にはマイケル・ケイン、モーガン・フリーマン、ゲイリー・オールドマンといった映画界で名を轟かせる「信頼できる」名優たちが名を連ねています。それぞれがストーリーに対して重要な貢献をし、その演技が活かされています。 バットマン役のクリスチャン・ベールもアカデミー賞に2度ノミネートされたことのある実力者。そしてハーヴィー・デントとツーフェイスを演じるアーロン・エックハートは見事にその複雑なキャラクターを演じきり、この作品で一気に知名度を上げ出演する映画の幅を広げました。

10.ヒース・レジャーの怪演

名だたるキャスト陣を抑えて賞賛を独り占めにしたのは、本作でアカデミー賞助演男優賞を受賞したヒース・レジャー。レジャーの演じるジョーカーがなければ『ダークナイト』がここまでの名作として語り継がれることはなかったでしょう。 ジョーカーのキャラクターは映画のメインテーマを語る上でとても重要になるもの。そんなジョーカーにヒース・レジャーがキャスティングされた時、多くの批判の声があったのをご存知ですか?初めて写真が公開された時も「ジョーカーはこんな髪型じゃない」と不満の声が上がったそうです。

Happy Birthday Heath Ledger. No one has yet to even scratch the surface of what you brought to the table. #Villain #Joker #TheDarkKnight

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しかしそんな批判も不安もヒース・レジャーは完全に跳ね返し、伝説となるジョーカー像を作り上げたのです。彼の演じるジョーカーは、私たちの良く知るジョーカーでありながら、クリストファー・ノーラン監督が作り上げたバットマンの超現実的な世界にこれでもかというほど見事にはまっています。 彼の登場する数々の場面—取り調べのシーン、あの名台詞”Why so serious?”—はもはや一映画の枠組を変えて人々の記憶に残り、レジャーの若すぎる死後も語り継がれているのです。