2017年7月6日更新

『紅の豚』を見る上で知っておきたいトリビア・豆知識

宮崎駿監督の空への憧れと夢を基に制作された、1992年公開の映画『紅の豚』。空賊狩りの賞金稼ぎを生業とするポルコ・ロッソを主人公に、男の夢やロマンが綴られました。今回は、ジブリ史上最も大人な恋愛を描いた物語のトリビアをご紹介します。

ジブリ史上最も大人な恋愛を描いた『紅の豚』のトリビア・豆知識

1992年7月8日公開、スタジオジブリ制作による宮崎駿監督・脚本・原作の映画『紅の豚』。空を飛ぶことへの憧れと夢を基にした、”宮崎駿の雑想ノート”収録作『飛行艇時代』が原案になりました。 物語の舞台は、第一次世界大戦後のイタリア・アドリア海。豚になった主人公ポルコ・ロッソは、かつて空軍のエースパイロットとして活躍した後、空賊狩りの賞金稼ぎを生業に生きていました。幼馴染のジーナや飛行艇設計士のフィオらの思いが交錯する中、男の夢とロマンが描かれます。 主なターゲットが中年男性のため、『紅の豚』では複雑かつ大人向けの物語が綴られました。そこで今回は、ジブリ史上最も大人な恋愛に関するトリビアや豆知識をご紹介します。

1.主人公ポルコ・ロッソの本名はマルコ・パゴット

ポルコ・ロッソは、昔馴染みのジーナやフェラーリンから”マルコ”と呼ばれており、人間の姿の頃は”マルコ・パゴット”という本名を名乗っています。

第一次世界大戦の末期、イタリア空軍の大尉として空挺部隊に参加していたポルコは、エース・パイロットとして活躍していました。敵味方問わず多くの命が失われていく中、嵐の海に落ちた敵パイロットを危険も顧みず助けるなどの逸話があり、女性からの人気は豚になっても衰えません。

また通称の”ポルコ・ロッソ”は、イタリア語で「赤い豚」を意味しているのだとか。非常に過激な蔑称でもあり、空賊たちがポルコに付けたニックネームだそうです。

2.ポルコ・ロッソはなぜ豚になった?

そもそもポルコ・ロッソはなぜ豚になったのか?という疑問は、ファンの間でも議論や考察が繰り返されており、公式からも詳細な理由は発表されていません。

劇中で描かれたのは、戦時中に死線を彷徨ったポルコが辿り着いた、”雲の平原”(生と死の境?)。そこからただ1人生還を果たしたポルコが、自ら魔法をかけて豚に変わったということです。ジーナの見解では、「戦争で自分だけ生き残ったことへの罰」とも語られました。

またポルコは、戦争で友人を含む多くの命が喪われた悲しみ、ファシスト政権への幻滅を示しています。そのため、戦争と殺戮を繰り返し続けている人間という存在への絶望。自らも戦争で”殺人行為”を行った苦悩などから、人間であることに嫌気が差したとの考察が主流のようです。

3.フィオのキスで人間に戻ることができた?

最終的に”ポルコは人間に戻ったのか”というのは、『紅の豚』の結末における最大の謎の1つです。

通説によると、カーチスとの激戦を制したマルコとの別れ際、飛行艇の上からフィオがすれ違い様にキスをしたことで人間に戻ったそう。映画『ハウルの動く城』では、荒れ地の魔女の呪いで案山子に変身した隣国の王子が、ソフィのキスで元の姿に戻れた例もあります。

ポルコを見たカーチスの台詞から考えても、人間の姿に戻っていたのは確かな様子。しかし、それまでのシーンでも一瞬だけ人間の姿になった描写があるため、完全に戻ったかは不明でした。

この疑問については、後に監督がインタビューで答えを明かしており、「またすぐ豚に戻って、十日くらい経つと飯を食いにジーナの前に現れる」とのこと。魔法が解けたわけでは無いようですが、ポルコは自分の意思で姿を変えられる、とも受け取れる言葉が気になる所ですね。

4.挿入歌『さくらんぼの実る頃』に込められた意味

本作の主題歌には、マダム・ジーナ役の加藤登紀子によるエンディング・テーマ『時には昔の話を』、挿入歌『さくらんぼの実る頃』の2曲が採用されました。

ジーナが歌う『さくらんぼの実る頃』は、1866年に発表されたフランス語のシャンソン。さくらんぼの実る季節が短いことに例えて、儚い恋と失恋の悲しみを歌っています。その一方、1871年にフランスで樹立した自治政府、パリ・コミューンを悼んで歌い継がれた曲でもあるそうです。

パリ・コミューンの樹立後、約2ヶ月で新政府ヴェルサイユ軍に鎮圧され、パリ市内では一瞬にして多くの命が失われました。自身も戦争で3人の夫と死別したジーナの歌には、さくらんぼの実る季節のように儚い命、戦争や争いの悲惨さが込められているのでしょう。

5.最も大人な恋愛のその後は?ポルコはジーナと結ばれた?

お互いに思いを寄せつつも、照れやそれぞれの事情が邪魔をしてしまうのか、はっきりとした関係になることが無かったジーナとポルコ。もう一人のヒロイン、フィオがポルコに憧れを抱いていたことなどから、恋愛のその後はファンの間でも議論の的となりました。

物語のラストシーン、フィオのナレーションでキャラクターのその後が語られており、

という言葉が印象深い方も多いのでは?フィオ自身も「ピッコロ社」の跡を継ぎ、親交を深めたジーナのホテルで休暇を過ごすなど、一人の女性としての成長が感慨深いですよね。

ジーナの賭けの勝敗が隠された重要なラストシーン

『紅の豚』

フィオが言うジーナの賭けとは、口説いてきたカーチスをフッた際の「私いま賭けをしてるから―私がこの庭にいる時その人が訪ねてきたら今度こそ愛そうって賭けしてるの。でも、そのバカ夜のお店にしか来ないわ。日差しの中へはちっとも出てこない」 というジーナの台詞を指しています。上記のナレーションと共に映し出される、ジーナが経営する「ホテル・アドリアーノ」のシーンに、賭けの勝敗が隠されていると噂されています。 非常に小さいのですが、一般の来客用の桟橋ではなく裏庭の側に泊められた、ポルコの愛機と思しき赤い飛行艇がしっかりと描かれていました!このことから、昼間に訪れるはずのないポルコがジーナの店に現れ、”ジーナは賭けに勝った”と解釈されているようです。

6.ジーナとの結婚を空軍時代の飛行艇の機体番号が予言!

宮崎駿監督のインタビューによると、最終的にポルコとジーナが結ばれることは、ポルコがイタリア空軍時代に乗っていた飛行艇の機体番号が示唆しているそうです。

空戦の回想シーンをよく見ると、ポルコ(マルコ)の飛行艇の機体番号が”4”になっているのですが、これは4番目の夫を意味しているのだとか。戦死してしまったポルコの戦友、ベルリーニが乗っていた飛行艇の機体番号は”1”で、彼はジーナが結婚した最初の夫でした。

ベルリーニの死後、ジーナは飛行艇乗りと2回再婚するものの、どちらも戦争で亡くなっています。つまり、機体番号がジーナの夫の順番だったという、監督ならではのワザが隠されていたのですね。

7.カーチスのモデルは元アメリカ合衆国大統領ロナルド・レーガン?

ロナルド・レーガン

ドナルド・カーチスのモデルと噂されているのは、2枚目映画俳優を経てカリフォルニア州知事、第40代アメリカ合衆国大統領に就任したロナルド・レーガンです。

カーチスは劇中で、現在の空賊連合の用心棒から映画俳優になり、それらを布石にアメリカ合衆国大統領を目指しているとジーナに語っていました。エンディング・ナレーションでは、アメリカに帰国し西部劇の主演俳優となったことが明かされており、人生の最終目標に向けて歩みを進めています。

ちなみに、ナレーションと共に主演映画『TRIPLE LOVE』のポスターが映されますが、これもロナルド・レーガン主演映画のポスター・デザインを採用したものだそうです。