2019年3月24日更新

Netflixの革命はまだ始まったばかり。歴史と市場から今後を考察【永久保存版】

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Netflix

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映画界の革命児 Netflixは、世界を変えるのか?

ストレンジャーシングス2
©NETFLIX

彗星のように現れ、次々に映画界に社会現象を巻き起こしていったNetflix。一時はウォルト・ディズニー社を時価総額で上回るほどの評価を受けました。本記事では、Netflixの歴史を紐解くと共に、日本の映画界、動画配信サービス市場の現状を俯瞰します。 そして、これから起きるであろう様々な出来事を考慮に入れた上でどのように映画業界が変化していくのか。そしてその中でNetflixはどのような役割を担うのかについて、Netflixを愛する筆者が解説したいと思います。

Netflixの歴史を簡単にまとめてみた。

13の理由
©Netflix

今や多くの人の生活になくてはならなくなったNetflix。そんなこれからのエンタメ界の革命児は1997年に生まれました。当時はもちろん現在のようにストリーミング技術が発展していなかったため、DVDのレンタルを行なっていました。 創業者は、レンタルビデオ店で多額の延滞金を請求されたことに激怒してサービスを考案したと言われています。私もよくこのような経験をしますが、日々に感じるストレスをビジネスアイデアに昇華させていく手腕には唸らされます。 初期のNetflixは、現在TSUTAYAなどが一部店舗が実施しているような定額でDVDを借り放題を売りにしてサービスを展開しており、先見性の高さを感じさせます。 転機が訪れたのは、2007年でその年を境にストーリーミングサービスにシフトしていきます。

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そもそもストリーミングってどんなサービス?【回転寿司】

寿司

ストリーミングと一口に言っても、この言葉を正確に理解している人は少ないのではないでしょうか?この用語とよく対比される言葉が一括ダウンロードで、ダウンロードは、データがネットワーク上のサーバから使用している端末へ送信されることです。 一方で、ストリーミングは1度にデータをサーバに送信するわけではなく、データを少しづつ配信して徐々に再生していく形を取っています。 これをわかりやすく説明すると、一括ダウンロードは出前寿司でストリーミングは回転寿司。出前では一気に届けられた寿司を食べるのに対して、回転すしではベルトコンベアから流れてくる寿司をどんどん取っていくというイメージです。

日本の映画関連事業を俯瞰してみよう!

映画にまつわるお金。最近では『名探偵コナン ゼロの執行人』が興行収入80億円を記録しましたが、2016年の全興行収入は2300億円です。これが多いか少ないかは別として、映画はお金の成る木。他にもまだまだ利益をあげるポイントはあります。 それが、有料放送番組やレンタル市場、セル市場、そしてストリーミングに代表される動画配信市場です。それぞれの市場規模は順に、1兆(2016年)、1800億円(2017年)、2200億円(2017年)、そして1400億円(2017年)です。

動画配信

上のグラフを見てわかる通り、驚くべきことに2007年の市場と比べるとレンタル市場が50%、セル市場も30%程度減少しています。そしてそのパイを動画配信市場が仕留めたという図式になっています。 有料放送は減少していないのかという疑問が湧いてきますが、デロイト トーマツ コンサルティングの2017年の調査によると30代以前の層ではストリーミングへの加入率が高く、50台以上の層では逆に有料放送の加入率が高いというようにターゲットの棲み分けがなされていることが考えれます。

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Netflixの日本での現状、課題は?

動画配信サービス

では、上のような若い世代をグッと掴んでいる動画配信市場においてのNetflixの立ち位置はどのようなものなのでしょうか?2017年の結果ではありますが、シェアでいうと5%に沈んでしまっているなど苦しい結果となっています。 上位のサービスを見てみると、dTVはドコモの契約者、Amazon プライム・ビデオはAmazonのECサイトの会員が、そしてHuluには地上波テレビの視聴者という動画コンテンツサービスへの導線があります。(Huluは、2014年に日本事業を日本テレビに売却しました。)

Netflix

以上のような動向からは、信頼性の担保や消費者のサービスへの導線が日本市場において大きな影響力を持っていることがわかります。そのような理由から(?)、Netflixも2018年にauと業務提携を行いセットプランを作ったり、テレビのリモコンにNetflixのボタンを付属させたりして対抗しています。

データ×クリエイティビティ= ∞

ブライト
©NETFLIX

世界を席巻して、日本でも存在感を増し始めているNetflixですが、その強みはどこにあるのでしょうか?私はそれをデータに基づいたクリエイティビティにあると考えています。つまり、Netflixは、様々なユーザーの視聴データを分析して、ヒットの法則を生み出し、それに沿ってオリジナル作品を作ることができるのです。 でも、それって他の映画作っている会社も同じじゃない?と思うかもしれません。しかし、デジタルの世界を侮るなかれ。Netflixはより「濃い」データを得ることができるのです。例えばある映画を見た後のユーザーは継続率が高い!であったり、『タイタニック』を見た人は『きみに読む物語』をよく見るなどの考察をデータの裏付けを元に行うことができるのです。 以上のようなデータを用いて、ヒットの確率の高いコンテンツを作り出して、それを適切な人に届けることができるというのは大きな強みになっていると言えます。

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世界の動画配信市場の概略

買収前

上のような強みから、世界全体では、2017年に約1兆7000億円を売り上げるなど世界的には躍進を続けるNetflix。世界での主要なライバルとなるのは、Amazon プライム・ビデオやHuluといったサービスとなってくると予想されます。そして、それらの企業の強みや弱みを考えてみると上のようになります。 オリジナルコンテンツには抜群の強さを誇るNetflix、そしてそれを追従するようにオリジナルコンテンツの拡充に力を入れるAmazon。Huluは、その中から少し取り残されてしまっているように思えました。しかし、2017年末から2018年にかけて二転三転を続けたとあるニュースが、この三つ巴の戦いを大きく変えてしまうかもしれません。

ネズミがキツネを食べて殴り込み?

ディズニー お城 フリー画像

そのニュースとは、ウォルト・ディズニー社による21世紀フォックス社の買収です。そして、それに伴い、ディズニーは契約の切れる2018年を目処に全てのディズニー作品をNetflixから引き上げるとしています。(2019年3月現在、未だ引き上げは行われていないためディズニー的には「進捗悪し」という感じでしょうか。)

買収後

つまり、ディズニーの誇る最高のラインナップ、ルーカスフィルムやマーベル作品を始めとしたコンテンツに加えて、21世紀フォックスの「X-Men」シリーズを始めとした作品群が、全てディズニーの動画配信サービス専用の「オリジナルコンテンツ」となってしまうのです。 また、現在のHuluに関しては、ディズニー社が株式の30%、21世紀フォックスが30%をそれぞれ持っており、買収が成功するとその過半数をディズニーが支配することとなり、実質的な支配権を得ることになります。 一方で、Amazonはコア産業のEC事業の売上から映像コンテンツに関しての投資を惜しみません。つまり、今までのNetflixの強みであった独自コンテンツの優位性が揺らぎつつあるのです。 そしてそれを踏まえたディズニープラスが遂に現実味を帯びてきました。ディズニーは動画配信サービスの覇権も射程内ということですね……。 (ちなみに日本ではディズニープラスではなく、ディズニーデラックスが代替サービスとなる模様)

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【妄想1】戦いは遂に純粋なコンテンツのぶつかり合いとなるのか?

映画館

ディズニーとAmazonの2人の巨人に追い詰められたNetflix。直近では、それに加えて世界での加入者数が下方修正されるなど停滞感を募らせています。しかし、ミラーワールド社という会社を買収し、2019年3月現在、劇場の買収にも動いているようです。 劇場買収の理由は2つあると思います。1つは単純にユーザーとのタッチポイントを増やすこと。そして、もう1つが劇場での公開が7日以上で受賞資格を得るアカデミー賞を中心とした賞レースの参戦への道です。 オリジナルコンテンツ。良いものを適切な人に届けるという強みはもちろん、作品を更に洗練させ、賞レースでも勝てるだけの状態にすることがネズミと密林に対抗していく唯一の方法なのかもしれません。

【妄想2】地方のサービスとの連携を急ぐ?

『バーフバリ 王の凱旋』 プレス
©ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.

次なるシナリオとしては、新興地域であるアジアで牙城を築くというものです。実際Netflixはアジアにも積極的に進出しています。また、英デジタルTVリサーチ社の報道によると2021年には、定額制ビデオオンデマンドサービスの加入者は、1.5億人を超える見込みです。どうすればこのようなアジアの市場を制覇することができるでしょうか? ここの論点は、これらの地域では物価が比較的安くNetflixの定額モデルが受け入れられるのかというものです。前述のようにAmazonは、本業であるEC事業がある限り赤字を出してでもユーザーを囲い込むことができます。 この不利な戦いの中でのNetflixの戦い方も3つあると思います。1つは、正攻法で地域毎のファンに合った映画を作り出していくということ。下記の記事にあるように国によってヒットする映画は大きく違っており、現在進出している地域で地道にデータを蓄積して質の高いコンテンツを送り出すことは1つの差別化に繋がるかもしれません。その中で前述のように映画館を買収していくなど、ユーザーとの接点をより増やしていくことも考えられそうです。

2つ目は、日本でのauとの業務提携にあるように地域毎に支持されているサービスと積極的に提携していくという考え方です。このあたりは、日本や他のサービスでノウハウを蓄積していけるという点が強みとなってくるかもしれません。 3つ目は、そもそものビジネスモデルを転換するという考え方です。 全米では、有料放送サービスが、日本でも同様のサービスやそもそもの平均所得が高いことから、ある程度ユーザー課金型サービスが広がる土壌があるように思えます。そのような土壌が比較的乏しいアジアの新興国市場においては、Abema TVのように広告収益モデルにするであるとか、各映画毎に課金していくスタイルにするなどビジネスモデルの転換も考えまれます。

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Netflixは、革命を成功させることができるのか?

アダム・ウィンガード デスノート
Newscom/Zeta Image

Netflixのこれまでの軌跡とこれからをまとめてみました。今まで何気なく使っていたサービスが如何に茨の道を通ってきて、これから世界を代表する最強企業達と戦っていかなければならないのかを分かってもらえたかと思えます。 ここでは取り上げませんでしたが、AppleによるNetflixの買収報道が出るなどこれからも経済界を騒がしていくことが予想されます。そんな世界の革命児の活躍を私も一ファンとして応援していきたいと思います。