2018年8月1日更新

【ネタバレ】『インクレディブル・ファミリー』でのピクサー流・現代の家族/社会像を考える

©2017 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

前作『Mr.インクレディブル』の公開から14年。待望の続編となる『インクレディブル・ファミリー』が2018年8月1日についに日本でも公開!全米ではすでに大ヒットを記録し、ヒーロー映画と家族映画の融合という、ピクサーの新たな挑戦ともなった本作を考察していきます。

前作から14年。ついにあのインクレディブルファミリーが再びスクリーンに!

2004年に公開し、大ヒットを記録したディズニー・ピクサーによる不朽の名作『Mr.インクレディブル』。ヒーロー活動を政府から禁じられてしまい、スーパーパワーを隠しながら一般社会で生活するボブとその家族の冒険を描き、世界中を魅了し大人気作となりました。 今回は前作のラスト直後から始まるヒーロー家族の普通の日常と、スーパーヒーローとしての復活を懸けて挑むミッションが並行して描かれています。また、エキサイティングなアクションシーンから育児や家事の問題といった思わず共感したくなるような普遍的な風景まで、あらゆる角度からヒーロー家族の日常を楽しめる作品となっています。 そこで今回は、視聴後の考察やネタバレを含めながら、『インクレディブル・ファミリー』について解説していきます。

【あらすじ】育児、家事、街の平和……。ヒーローは大忙し!

特別な力を持つ存在として世間にその名を轟かせ、街の平和を守ってきたヒーローたち。しかし今では称賛の声より非難の方が大きくなり、政府からヒーロー活動を禁止されてしまう始末に。 そんな窮地に追い込まれたボブとその家族のもとに舞い込んできたのは、妻のヘレン宛のヒーローとしてのミッション!家のことは自分にまかせろとヘレンを送り出した夫のボブの前に立ちはだかったのは、育児と家事のオンパレード。 年頃の子どもの変化や不慣れな主夫生活に戸惑うボブと、やがて家族に訪れる危機。パー家の行く末はいかに……。

【ネタバレ考察】本作に込められた現代的な挑戦と提言

インクレディブル・ファミリー
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2人のキャラクターに見る女性の社会進出

今回、ヒーローとしてメインで活躍するのは妻のヘレン。前作や今作中のセリフからもわかるように、結婚後は家庭での仕事や夫のサポートなどを中心に行ってきたヘレンでしたが、本作ではイラスティガールとして街の平和を守るべく、ひとりで外に働きに行く姿が描かれています。 また、本作の黒幕であるスクリーンスレイヴァーことイヴリンは、終始兄のウィンストンの裏方に徹しており、表舞台に上がることはありませんでした。その点で彼女は本作においてヘレンとは対照的なキャラクターとして位置づけられており、女性の社会的地位の向上や確立が、本作において重要なテーマのひとつとなっていることを示しています。

自然に描き出された現代の家族像

夫のボブが家庭で育児や主夫業を行い、妻のヘレンが外で仕事をし家族の生活費を得る。長きに渡って人々の意識に根付いてきた既存の役割分担に囚われない現代の家族関係が、本作では自然且つ効果的に描き出されています。 先ほども記したように、それは女性の社会進出が過去より浸透してきた証であり、その推奨であるとも言えるでしょう。 過去のヒーロー活動において損害がより少なかったヘレンにミッションが与えられたように、性別や立場で判断するのではなく、個々の性格や適性、能力によって担当する作業を決める。そんな効率的で公平な決定が今作では行われており、それは現代を象徴する新しい家族の形の提言へと繋がっていると考えられます。

発展しすぎたテクノロジーを掌握できるか

テクノロジーは日々進化し、私たちの生活は「便利」というものを絵に描いたような姿になってきています。数十年はおろか数年前でさえ想像もしていなかったような文明の発展が実現しており、そのスピードはさらに高まっているようにも思えます。 本作のヴィランであるスクリーンスレイヴァーは、テレビ画面のジャックや洗脳ゴーグルなどの機器を用いて人々の心を操り、悪事を遂行していました。また、その動機として行き過ぎたテクノロジーへの依存が何をもたらすのかを人々に知らしめたいという思いがあり、結果街の住民のみならず多くのヒーローが洗脳され、世界は混乱に陥りました。 テクノロジーが発展することで快適さを得てきた人間たちが、自ら作りだしたシステムや技術を掌握しきれず、逆に彼らに呑み込まれていく。そんなすぐそこに待ち受けている想像に難くない未来への警告を本作は含んでおり、「便利」という言葉に踊らされ思考を放棄した人間たちの愚かさを映し出しているのです。

『インクレディブル・ファミリー』は家族と社会の新たな形を描いたヒーロー映画

『インクレディブル・ファミリー』
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ディズニー・ピクサー20作目の映画であり、最高の続編との呼び声も高い『インクレディブル・ファミリー』。前作から続いているエキサイティングな戦闘シーンや愛らしく個性豊かなキャラクターたちの活躍。 それに加えて、今作では現代的な社会変化や新しくも普遍的な家族の在り方について多くのテーマが込められており、子どもから大人まで幅広い年齢層がそれぞれの目線で楽しめる作品となっています。 本国アメリカでは大ヒットを記録し、日本でも公開前から大きな話題となるなど、すでに高い注目を浴びている本作。ディズニー・ピクサーによる新たな切り口の社会派映画の誕生は、今後の映画界に大きな影響を与えることでしょう。