2018年11月27日更新

『ラ・ラ・ランド』で監督が描きたかった“生き続ける愛”とは?ラストシーンを考察【ネタバレ注意】

若き天才、デイミアン・チャゼル監督の代表作『ラ・ラ・ランド』で主人公のミアとセブはなぜ結ばれなかったのか?ラストはハッピーエンドだったのか?『ラ・ラ・ランド』の本当の魅力に迫っていきます!【ネタバレ注意】

映画『ラ・ラ・ランド』で監督が描きたかった愛とは?

圧倒的な音楽とダンスに心が躍る、ミュージカルエンターテイメント映画として大人気を得た映画『ラ・ラ・ランド』。 主人公の売れないジャズピアニストのセブ(ライアン・ゴズリング)と女優志望のミア(エマ・ストーン)は、夢追い人としてLA(ロサンゼルス)へとやってきたもの同士でした。 アメリカン・ドリームを叶えるため、真っ直ぐに奮闘する二人はお互いを応援する間柄になり、いつしか恋に落ちます。しかし現実は厳しく、お互いに頑張れば頑張るほど二人の間には溝がうまれていき……。 本作は第89回アカデミー賞において、同賞史上最多タイの13部門14ノミネート、6部門で受賞という華麗な功績を収め、ゴールデングローブ賞やベネチア国際映画祭など名立たる映画祭でも多数受賞と、高評価を得ました。 しかしその反面、ラストシーンで2人が結ばれなかったことを中心に、批判的な意見も集まりました。なぜ2人は結ばれなかったのか?ネタバレを含む形で、監督の意図を徹底考察します!

超高評価の裏側で、批判的な意見も沸いていた【ネタバレ含む】

セブに見る矛盾【ジャズかポップスか】

映画内では多くのシーンで、セブが古き良きジャズを愛していることをアピールしていますが、実際にはポップスよりの楽曲だらけ。作り手の中で自己矛盾が生じていないか?という意見が多く見られました。 しかし本作は現代に生きる私たちに向けられた作品。ジャズ好きなチャゼル監督だからこそ、ジャズが分からない人や馴染みがない人でも、誰でも『ラ・ラ・ランド』の世界の中に入っていけるよう、ポップス寄りで作られたのではないでしょうか? 映画内でセブが語っているように、ジャズがビジネス的な側面では衰退してきているというのは、その通りなのかもしれません。そんな中で本作の劇中曲が世界中で愛されたのは、監督の工夫があってこそだったのです。

ミアを好きになれない!

本作では夢を叶えるまでの過程で、根性や負けん気、努力がほとんど描かれていません。 特にミアにおいては、自作自演で行った自主公演後、酷評されたことによって落ち込み実家へ帰り、悔しさをバネにすることはありませんでした。これに対してはセブも「君は赤ん坊だ!」と叱責する始末です。 おそらくこういった映画内で表面的に描かれたミアの幼さや目標に対する中途半端さが、ミアに対する不快感を一部の人に抱かせてしまったのでしょう。 しかし最終的に、セブは妥協・諦め=大人になることによって自分のお店を持つという夢を叶えるのに対して、ミアは根本的には夢を諦めず追いかけ続けたことによってそれを叶えます。 細かくそれぞれのシーンをみると不快に感じるかもしれませんが、ミアの成長を見届けることに楽しみを見出だせたのならば、ミアのことを好きになれるかもしれません。

二人が結ばれないラストにはワケがある

ミアとセブの二人はそれぞれの道で成功しましたが、結ばれることはありませんでした。果たしてこれはバッドエンドなのでしょうか?結ばれなかった理由を考察していきます! ラストで二人が結ばれなかったことに対して監督はCNN internationalのインタビューで、「結末は最初から決まっていたが、二人の愛は『生き続ける』ものである」と話しています。この「生き続ける」愛とは何なのか、同インタビューで監督は次のように述べています。 「一緒にいることがすなわち愛というわけじゃない。実際に関係自体に終止符を打ち、二人が別々の道に進んだとしても、お互いを思い合う気持ちがあるならば、それは愛なんだ。この『生き続ける愛』こそが最もロマンティックで美しいものなんだ。」

監督の言葉から振り返ると、ラストシーンはまた別の見方ができます。 ミアは幸せな家庭も、夢だった女優という職業も手に入れますが、ラストの回想シーンではもしもセブと一緒にいたらと思いを馳せます。ミアはそれを自身が後悔をしているからだと感じ、ショックを受けます。 しかしこの回想は「生き続ける」愛によって無意識的に起こったことで、決して家族のことを愛していない訳ではないのです。 ミアが店を出て行く際にセブを振り返ると、セブはミアに微笑み、そしてミアも同じように微笑みかけます。筆者はこの一連シーンについて、セブは「君も僕も、何も間違っていない。これでいいんだ。」とミアの背中を押し、それにミアも納得したのだと感じました。 その後も一緒にい続けたとして、それが「死んだ愛」であればそれこそバッドエンド。本作の2人の決断は、最も美しくロマンティックなハッピーエンドなのです。

夢見る若者に贈られた映画『ラ・ラ・ランド』はやっぱり傑作だった

夢と恋愛の両立は難しくても、夢を後押ししてくれる「生き続ける」愛があるのだということを教えてくれる映画『ラ・ラ・ランド』。 夢の叶え方にも幸せの形にも、正解があるわけではありません。同じように素晴らしい音楽・芸術に定義も正解も存在しないともいえます。 過去と現在の調和を感じながら、現代の色鮮やかなロマンスを視覚と聴覚の両方で楽しんでみてはいかがでしょうか? また、本作で主演を務めたライオン・ゴズリングと、監督のデイミアン・チャゼルが2度目のタッグを組んだことで話題沸騰中の映画『ファースト・マン』は2019年2月8日、日本公開です。

『ファースト・マン』の詳しいキャストや見所は下の記事から