2019年6月20日更新

衝撃作『ハウス・ジャック・ビルト』を新たな目線で楽しむ4つのポイントとは?

『ハウス・ジャック・ビルト』
(C)2018 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31,ZENTROPA SWEDEN,SLOT MACHINE,ZENTROPA FRANCE,ZENTROPA KÖLN

カンヌ追放処分から7年、完全復活を果たしたラース・フォン・トリアーの最新作『ハウス・ジャック・ビルト』。カンヌ映画祭で賛否両論を巻き起こした衝撃作を、新たな目線で鑑賞するための4つのポイントを紹介します!

カンヌで賛否両論!フォン・トリアー新作の4つの見どころ

※この記事には映画の結末以外のネタバレが含まれます。鑑賞前の方はご注意ください!

『ハウス・ジャック・ビルト』
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問題発言でカンヌ国際映画祭から追放処分となっていたデンマークの鬼才、ラース・フォン・トリアー。晴れてその処分も解け、完全復活となった最新作『ハウス・ジャック・ビルト』は、2018年の第71回カンヌ国際映画祭アウト・オブ・コンペティション部門で上映されました。 ところが上映中、途中退出者が続出。しかし、終了後にはスタンディング・オベーションが沸き起こるという極端な賛否両論となったのです。 アメリカではあまりの過激さに、MAPP(日本の映倫にあたる組織)による修正版しか上映されませんでしたが、日本ではなんと無修正完全ノーカット、R18作品として上映中。 連続殺人鬼が主人公というセンセーショナルな本作は、観客の予想の斜め上を行く作品として話題になっています。しかし、実は、残酷描写やトリアーの持ち味である後味の悪さだけではありません。 この記事では、本作をより楽しむための4つの見どころを紹介します!

【見どころ①】狂気の殺人鬼ジャックはちょっと笑えるキャラクター?

『ハウス・ジャック・ビルト』メイン
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女性や子供も容赦なく残忍な方法で殺すジャックですが、その行動はどことなくクスリとしてしまう部分があります。 例えばジャックは、殺人を犯したあと完璧に証拠隠滅ができているか、どうか気が気でなくなってしまうことも。 そのため車に乗って逃走しようとしているときにも「あそこに血がついていたりして?」「指紋は拭いたかな?」と気になって仕方がありません。何度も殺人現場へ引き返し、チェックするという行動が笑いを誘います。 映画を観ている私たちも出先で「家の鍵かけたっけ?」などと不安になることもあるでしょう。狂気の殺人鬼でありながら、人間性を覗かせるジャックはなんだか可笑しいですね。 他にも笑えるシーンがありますので、ぜひチェックしてみてください!

【見どころ②】時折現れるアートの意味とは

『ハウス・ジャック・ビルト』ポスター
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劇中には、生きている人間で絵画を再現した活人画と呼ばれるアート作品が時々挟まれます。その代表的なものがポスターなどにも使われているフランスの画家ドラクロワによる『ダンテの小舟』。ダンテの『神曲 地獄篇』に着想に着想を得たこの絵画は、実は本作のストーリー展開のヒントになっているのです。 また、映画『レッド・ドラゴン』(2002)にも登場するウィリアム・ブレイクの「ネブカドネザル」も印象的に映し出されます。ブレイクは幼少のころに目の前で交通事故に遭遇し、少女の生首が転がるのを見たという衝撃的な原体験があったり、作品をとおして人間の獣性にフォーカスしており、監督のトリアーやジャックにどこか通じる部分も。 この2点をはじめ、本作にはロマン主義のアートが特に多く引用されています。ロマン主義の作品は、感情・憂鬱・不安・動揺・苦悩等をテーマにした作品が多く、アートファンならその意味を紐解きたくなること間違いなし!

【見どころ③】意外にも感動!?観客の予想を裏切る大展開へ

『ハウス・ジャック・ビルト』
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本作の主人公ジャックは、建築家になることを夢見るエンジニア。まず彼は、自分が所有している土地に理想の家を建てようとします。しかし彼の性格からどんな家を建てるかにこだわりすぎるあまり、なかなか完成させられずにいました。 ところが、殺人をつづけてきたことが彼にとって重要な意味を持ってきます。ジャックが家を建てるためにこだわってきたこと、夢見ていたことは意外なかたちで実現することになるのです。SNS上では、それを見て「感動した」という観客も。 また、ジャックが迎えた結末について「泣ける」とも声もちらほらと挙がっています。 果たしてジャックはどんな家を完成させるのか、どんなラストを迎えるのか、ぜひその目で確かめてみてください!

【見どころ④】エンディング曲が登場人物や観客の気持ちを代弁!?

『ハウス・ジャック・ビルト』
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驚きのラストから一変、本作のエンディングで流れるのは呆気にとられるほどポップでリズミカルな曲です。しかもその歌詞は「ジャック、二度と〇〇〇〇〇〇〇」。この曲とラストシーンは、登場人物や観客の気持ちを代弁するとともに、急にジャックを冷たく突き放すようで笑えます。 このエンディング曲にも字幕がついていますので、ぜひ注目してみてください!

2019年6月14日から絶賛公開中!

『ハウス・ジャック・ビルト』各種ポスター
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シリアルキラーものでありながら「トリアー史上、最も笑える作品」と評判の『ハウス・ジャック・ビルト』。「カンヌで途中退出者続出!」というコピーから、「どんな残酷描写があるのだろう?見たいけど見たくない……」と思っている人も少なくないのではないでしょうか。グロテスクな描写はもちろんありますが、(筆者の主観では)それほどでもないので、それを理由に躊躇している人はぜひ鑑賞してみてください! 残酷描写よりも倫理的な不快感が強い作品ですが、ラストまで観るとまた印象が変わってくるでしょう。 本作は2019年6月14日より全国公開中です。