2017年7月6日更新

心に傷を負った家出少女とトラック運転手の逃避行。言葉の通じないふたり……

父親に虐待を受けている少女、セリーヌ(ルー・レリア=デュメールリアック)は臨海学校を利用して家出をしようとします。浜辺に赤い大きなトラックを見つけ、乗り込みます。少女とトラックの運転手とのロードムービーをアニエスベーが手がけました。

少女は愛を求めて家を出る

主人公は父親に虐待を受けている11歳の少女(ルー・レリア=デュメールリアック)。臨海学校で浜辺に行くことを利用し、家出をしようとします。

浜辺で見つけたのは少女が着ている洋服と同じ色の赤いトラック。そこに乗り込み、どこか遠くへ行こうとします。途中で運転手(ダグラス・ゴードン)に見つかり、男は自分はピーターだと名乗ります。しかし少女は「わたしの名前は…」と名乗ろうとしません。しかもピーターはスコットランド人なため、言葉が通じません。

自由を求めて家出をした少女とスコットランド人の逃避行が始まります。しかし意外な形で終わりはやってきます。

監督はデザイナーとして有名なアニエスベー。運転手ピーターには映画監督でもあるダグラス・ゴードンがキャスティングされました。主人公の少女は600人ものオーディションで選ばれたルー・レリア=デュメールリアックが演じています。

言葉なしでコミュニケーションは成立するのか?

言葉抜きのコミュニケーションには難しいものがあります。ましてや60歳の男性と11歳の少女では共通点すらありません。しかし、2人はお互いを思いやるという心でコミュニケーションを取っていきます。運転手のピーターが歌を歌い、ふとしたことで笑顔になります。長距離運転をするピーターにとっても少女の出現は幸せを与えてくれるものでした。

母親と生まれた赤ちゃんの間では言葉はありません、しかし赤ちゃんの泣き声に母親は何をしてほしいのか分かるようになっていきます。同じように人間とペットも言葉はなくともコミュケーションを取っています。

そう考えると言葉がなくてもコミュニケーションは取れるのだと気付かされます。

監督はファッションデザイナーのアニエスベー

『わたしの名前は…』はアニエスベーが監督をつとめています。それまでも『パルプ・フィクション』などに、デザイナーとして映画に関わってきましたが、今回はアニエスベーとしてではなく本名のアニエス・トゥルブレとしての参加ということで、意気込みが伝わってきます。

今回の映画は実際にあった事件からヒントを得て2日くらいで話をまとめたそうです。完璧主義な彼女は脚本、撮影、美術などにも参加し、妥協が一切ない作品になりました。そして言葉ではなく映像で見せるということに重点をおいた彼女は小物やオブジェにもこだわりました。

少女の赤い服、赤いトラックと空の青色がコントラストとなっている本作のあらゆるところにアニエス・トゥルブレとしてのこだわりを感じられます。

音楽をAir、ソニック・ユースが担当

この映画の音楽はAir(エール)やソニック・ユースが担当しています。

Airが映画音楽を担当したのは今回が初めてではなく、ソフィア・コッポラ監督の映画にも楽曲を提供しています。洒脱なサウンドで有名なAirです。

ソニック・ユースはアメリカのバンドとして有名であり、個々の活動も多いグループです。この映画では未発表の音源が公開されるなど、ファン必見です。

どちらもアニエス・トゥルブレのこだわりの映画にふさわしい音楽になっています。

『帝国』のアントニオ・ネグリも出演!?

マイケル・ハートとの共著『帝国』でも知られている哲学者、政治運動家のアントニオ・ネグリがこの映画に出演しています。旅役として、ワンシーンのみ出演ですので、ネグリの演技が気になる方は、上映中気を抜けませんね。

さまざまな分野の実力者が参加している本作。いずれもアニエス・トゥルブレ監督の交友関係の広さから生まれたものと言えるでしょう。