2017年7月6日更新

007慰めの報酬が実は最高の作品な7つの理由

007:慰めの報酬

ダニエル・クレイグ主演のボンド映画の中でも、あまり評判の良くない『007 慰めの報酬』。しかし、それが実は最高の映画なのです!

目次

『007 慰めの報酬』は最高の映画!

『007 慰めの報酬』は素晴らしい作品で、もっと評価されてもいいと思います。なにもシリーズ最高傑作だと言うつもりはありませんが、全体を見ればもっとひどい作品もあるでしょう(たとえば『007 ダイ・アナザー・デイ』や『007 美しき獲物たち』より駄作だと言えるでしょうか?)。

私はこの作品が好きだということに誇りを持っていますし、悪の組織「クアンタム」ができる限りの水源を買い占めるというアイディアも、少しSFっぽくて気に入っています。

みなさんには、この記事を読んで、また作品を見直してもらえることを願っています。

001.前作『カジノ・ロワイヤル』の続きであること

もしかするとこれは最大の強みであり、最大の弱みかもしれません。

最高のボンド映画のいつくかでは、ボンドが失った人々に言葉をかけています(『女王陛下の007』のエンディングや、『007 ユア・アイズ・オンリー』のオープニング、『007 リビング・デイライツ』や『007 殺しのライセンス』でも少しあり、『007 カジノ・ロワイヤル』のエンディングにもあります)。そしてこの作品もその新たな例になりました。

『007 慰めの報酬』が面白いのは、今までのシリーズで最高のボンド映画をふくらませ、それぞれのキャラクターの円弧をつなぎ、その行き詰まりを自由に解放しているところです。私はボンドの同僚であったマティスが好きですし、クアンタムも、そこに所属するミスター・ホワイトも、ジェフリー・ライト演じるCIAのフェリックス・ライターも好きですから、彼らに再び会えたことを嬉しく思いました。

『007 慰めの報酬』は、時代に関係なく大抵は成功するボンド映画のやり方を取らず、前作がボンドや周囲に直接影響を与えています。これは初めての続編でした。実際、映画のストーリーは『007 カジノ・ロワイヤル』の直後から始まっていて、ひとつの映画の前後編のようにも見えます。それも私がこの映画を好きな理由のひとつです。

単独の映画として最高とは言えませんが、私はこれをそうは思っていません。ですから、もしこの作品をボンド映画として好きになれないなら、この視点から見直してみてください。きっと楽しめるはずです。

002.監督が素晴らしい

007シリーズについて指摘したいのは、監督がめったにその人らしい作風を用いないということです。もし監督がデヴィッド・リンチならすぐにわかるでしょうが、多くのボンド映画を監督してきたジョン・グレンの時はわかりません。『007 カジノ・ロワイヤル』の監督であるマーティン・キャンベルはしっかりした2つの入り口を用意し、素晴らしい新たなボンド俳優を紹介しました。

映画全体で私の最も好きなシーンは、ボンドが音楽がない中、NPO法人代表のドミニク・グリーンとその取り巻きと鉢合わせた後、オペラハウスから出るために発砲するところです。他のどの監督もオペラ「トスカ」の演出も、そこに続くシーンをあのような独特な方法ですることはできないでしょう。実際このシーンは全てのボンド映画を通して私のお気に入りで、それはフォスターによるものです。

ボンド映画のプロデューサーたちが、決まった型を崩したがらなかったことにも感謝していますが、監督にフォスターを起用したのは正しい判断でした。

003.撮影技術の高さ

誰もが『007 スカイフォール』は映像が最も美しいボンド映画だといい、それは撮影監督のロジャー・ディーキンスによるものだと言います。しかし、多くの人が『007 慰めの報酬』がいかに高い撮影技術で作られたかを忘れてしまっています。

私が素晴らしいと思うのは、火事になったホテルの部屋で傷だらけのボンドがカミールを抱き寄せ、酸素ボンベを撃つシーンです。ほとんどのロケシーン、特にイタリアのシエーナは、撮影監督の目を通さずに一目見ただけでも充分に美しいです。私にとってこの映画は、紀行映画の中での復讐劇として最高のものですから、全てのロケーションが物語に不可欠なものになります。そこに素晴らしい撮影技術が、物語と主人公の両方に今までのボンド映画以上にくっきりと切り取っています。

004.悪役が最高である

私は、一癖あるボンドの悪役が好きです。『007 消されたライセンス』のフランツ・サンチェスとそのイグアナや、血の涙を流す喘息持ちのル・シッフル(『007 カジノ・ロワイヤル』)、痛みを感じないレナード(『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』)、顔に傷のあるアレック・トレヴェルヤン(『007 ゴールデンアイ』)、金属の頭を持つドクター・ノオ(『007 ドクター・ノオ』)……。

しかし、最高の悪役はただの普通の人間です(『007 死ぬのは奴らだ』のミスター・ビッグ、『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』のエリオット・カーバーなど)。彼らは尊大ですが、恐ろしくリアルで私たちの社会にも実在しそうです。ドミニク・グリーンは、その中に入るにふさわしい悪役です。

グリーンはナポレオン・コンプレックスの持ち主かもしれませんし、誇大妄想者というより抜け目のないビジネスマンで、肉体的にはボンドのライバルではありませんが、その惨めな性質が彼を角のない信頼できる人間にしています。

グリーンがカミールに子供のころどのようにピアノの教師に怪我をさせたか語るシーンでの、彼の非常に控え目で目立たない様子はとてもいいと思います。彼はただの背の低い残酷な男で、伝統的なボンドの悪役からは良い方向に変化したものと言えます。

005.アクションシーンも素晴らしい

オープニングのカーチェイスのシーンを批判する人は多く、「編集のせいで死んだシーンだ」と言う人もいますが、私は大好きです。あの全速力のオープニングで、最初から観客の心をぐっとつかみます。

シエーナの建築足場でのアクションシーンも、スピードボートでのチェイスも、砂漠での戦闘シーンも、フィナーレのホテルの爆破シーンも、この映画の立派なアクションシーンですし、他の良いボンド映画と同じようによくできています。

『007 私を愛したスパイ』のスキーシーンや、『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』のオープニング、『007 カジノ・ロワイヤル』のマイアミ空港の滑走路でのシーンほど記憶に残るものはありませんが、ボンド映画のアクションシーンは、いつも作品を中断させずとも息をのむように素晴らしいのです。決まった型もいいのですが、私にとっては際立ったアクションやカメラワークが、この映画が素晴らしいと考える理由のひとつです。もしそれぞれのアクションシーンも見直してもらえれば、賛成してもらえるでしょう。

006.音楽がよい

デヴィッド・アーノルドは信頼の置けるボンド映画の作曲家です。『007 ダイ・アナザー・デイ』のように映画自体が面白くなくても、彼の音楽に責任はありません。彼が聞き覚えのある音を使ったとしても、いつも新しい展開を入れてきます。『フォレスト・ガンプ/一期一会』のアラン・シルヴェストリのように、彼の作品はいつでもしっかりとしていて記憶に残るものです。

007.ダニエル・クレイグは最高のジェームズ・ボンドである

これが最大の理由です。たとえば、もし主演がロジャー・ムーアやピアーズ・ブロスナンだったなら、私もこの映画を嫌ったでしょう。しかしダニエル・クレイグは最高のジェームズ・ボンドですし、彼の演技はこの映画の地に足のついた内容に合っています。クレイグを見るのに忙しすぎて、筋を見失ってしまうかもしれません。彼はキャラクターを発展させ、その顔には哀愁が漂います。

クレイグは画面に映っている間、シーン全体を彼のものにし、映っていない時は、早く戻って来て欲しいと思わせます。

クレイグがこの映画に参加していなければ、私は擁護することはなかったでしょう。私たちが知っていて愛してきたボンドたちとは少し違いますが、しかしもっと人間らしく、信頼できます。

『007 慰めの報酬』とは結局何だったのか?

結論として、『007 慰めの報酬』は変わったボンド映画です。完全に成功したわけではありませんが、実験的な映画です。では、この映画の欠陥を最初に指摘しましょう。避けられない事実として、脚本家は非常に苦しんだでしょう。フォスターは大規模な映画の監督経験は少なく、撮影期間も短く感じられたでしょう。それに私は、これからもボンド映画がこのような雰囲気で続くのなら、見るのをやめるでしょう。しかし、シリーズの中の風変わりな一作としては良い出来です。

『007 ユア・アイズ・オンリー』や『007 殺しのライセンス』も、ちょっとした型破りな作品だったと主張することもできるでしょう。しかし、この方向転換は、シリーズを新鮮に保つために適切でした。『女王陛下の007』のように、今後『007 慰めの報酬』は再評価されるだろうと感じています。私はこれを良いボンド映画とは思いませんが、たまたまジェームズ・ボンドが出ている良い映画だと思います。