水上人家

水上人家, THE BOAT GIRL
香港
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「水上人家」の感想・評価・ネタバレ

  • changpian
    changpian 4 2012年11月5日

     香港・キャセイ(国泰)の映画、出たばかりの台湾製DVDで鑑賞。主演の陳厚はだいぶ以前にキャセイからショウ・ブラザーズに移籍していたのだが、なぜか1968年に古巣で一本撮ったもの。お蔵出しかとも思ったが、共演者の顔ぶれから見て同年に新しく撮られたもののようだ。易文の脚本・監督。  題名から想像されるのは、水上生活者の悲惨な生活を描くという内容。実際、1949年の同名香港映画はそのような内容であったようで、監督の顧而已は同じ大光明影業公司で『小二黑結婚』も監督し、やがて会社ともども1951年に上海に移る。  だが、1968年の映画は、その題名に反して、タイトルバックもポップ、また大都会香港の若者生活が描かれ、意外に感じる。陳厚演じる留学帰りの主人公は、水上生活者をテーマに博士論文を書かねばならず、急遽アバディーンに行き水上生活者に取材、やがて住み込んで生活を体験していく。と言ってもあくまでも軽い。やがて、 陳曼玲演じる水上生活者の娘、 蘭蘭に惹かれていき、ガールフレンドの妨害工作にもめげずに、蘭蘭と結ばれるというストーリー。主人公は研究者といってもいかにもいい加減で、銭鍾書の長篇小説『囲城』(邦訳題『結婚狂詩曲』)を思わせる。  この映画は、知識人と農村の娘の関係を描いた香港映画の系譜に入れることもできるだろう。拙稿「映画『桃花江』における中国性」(『未名』29号、2011.3.)にも書いたように、『桃花江』(1956)以後「村娘が登場し、都市と農村の間の差異や隔絶を描いたこのような映画はブームとなり、1960年代半ばまで作られ続けた」。陳厚の取材が引き起こすドタバタ劇は、そのようなクリシェに対するパロディと見ることもできる。そういえば陳厚は『桃花江』にも出演していた。  知識人と農村を描いた他の映画と同様、この映画でも音楽はふんだんに使われている。黄梅調のようなメロディも使われている。キャセイで活躍した俳優、張揚が、ここでは副監督を務めていることも記しておきたい。  [追記]ヒロイン蘭蘭の妹が陳厚に名前を聞かれるシーンで、「私は樂蒂っていうの」と話す。これ、上映時には館内が爆笑に包まれたに違いない。というのも、前年の1967年に陳厚と樂蒂は5年間の結婚生活にピリオドを打っていたからだ。