2025年10月8日更新

【感想】百鬼夜行が描く「203号室」が王道の社会派ホラーで鳥肌が立つ!

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『203号室』

隣に住んでいる年配の女性に好意を抱かれて、様々な事件に巻き込まれていく社会派ホラー「203号室」。作者の百鬼夜行は、人間の恐ろしさや狂気を描いたスリラー作品を数多く手掛けている漫画家です。 そんな百鬼夜行の新作である「203号室」は、誰にでも起こり得る可能性があるストーカー・執着がテーマとなっています。 何気ない日常から不穏な非日常へと変化し、気付いたら手遅れになっているという恐ろしい展開に、ページをめくる指が止まらなくなるような作品です!

「203号室」とは

「203号室」は、男子大学生の主人公が隣人の女性に執着されるストーリーの社会派ヒューマンホラーです。現代社会を舞台にしたリアルな作品なので、人間的なホラーやサスペンスが好きな人には特におすすめの漫画となっています! 主人公である金井蓮は、苦労して上京した大学生。古いアパートで一人暮らしを始め、夢の大学生活に充実感を覚えていました。 さらに隣人の年配女性・高梨は不気味な雰囲気を漂わせながらも、親切に接してくれます。そんなある日、蓮は仲良くなったアルバイト先の先輩が行方不明になったことを知るのでした。 そして恋人であるさくらが嫌がらせを受けたことで、蓮は一連の事件の犯人が高梨だと気付きます。蓮がどのように高梨に立ち向かうのか、最後まで目が離せません!

とにかく高梨が不気味すぎる!

本作の敵キャラポジションとして登場する高梨。彼女がとにかく不気味で、現実世界にも存在していそうなリアルな人物として描かれています。 まず見た目が非常におどろおどろしく、目が黒くてみすぼらしい服装をしており、常に無表情で何を考えているのか一切わかりません。 さらに作中には、蓮が引っ越しの挨拶をしただけで惚れたような描写があるのです!以降も入居初日に手作りの肉じゃがをおすそ分けに来たり、勝手に郵便物をポストから抜いて届けに来たりと、全ての行動が常軌を逸しています。 仲良くなった相手ならまだしも、挨拶を1回しただけの相手にお節介をされるのは迷惑ですよね……。それどころかむしろ恐ろしくて、私なら間違いなく部屋に閉じこもって引っ越しを検討します。 そしてストーリーが進むごとに、高梨の行為もエスカレート。殺人や不法侵入、誘拐などを繰り返すようになるので、サイコパスっぷりに背筋が凍りましたよ!

作者・百鬼夜行による演出が恐ろしい!

高梨のキャラクター性が怖いのはもちろんですが、数多くのホラー作品を手掛ける百鬼夜行の演出方法も、恐怖に拍車をかけています! 舞台となっているボロアパートの陰影やオノマトペの表現によって、作品全体が常に暗い雰囲気を纏っているのです。 またセリフのない静かなシーンや、高梨の沈黙によるじっとりとした重苦しい演出も魅力的。ドキッとなるような派手な展開は少なめですが、常にナニかが背中に張り付いているようなゾワゾワ展開が楽しめました! 個人的には、最初は異常だと思っていた高梨の行動が、読み進めていくうちに「これはマシな方」と常識が麻痺していく感覚に陥っていったのが怖かったですね……。読んでいる私も、いつの間にか高梨に侵食されていることに気付きました。 何と言うか、最初から最後まで作者の手のひらの上で転がされているような感じがします。つくづく百鬼夜行様は心理スリラーの表現がお上手だなと実感させられます!

平和な日常と高梨がいるシーンのギャップ

ホラー作品とは言え、もちろん平和な日常シーンも存在します。上京してから逆風に晒されていた蓮が、アルバイト先の仲間や大学での友人と交流する姿は心が温まります。 特に恋人となる女子大生・さくらとの会話は、作中全体に漂う不気味な雰囲気を中和してくれていました。しかし読者である私からすると、「あぁ、さくらも被害者になるんだろうな」と予想してしまいます。 そして案の定、さくらも巻き込まれて彼女の家族にまで被害が及ぶという残酷な展開が。さくらとの恋愛青春ストーリーは何処へ行ったのやら。ちょっとだけ寂しいです。 しかし蓮を純粋に想うさくらと、別の意味で蓮を純粋に想う高梨が共存していることで、ストーリーの中にギャップが生まれているんですよね。 つい先ほどまで平和だったのに、次のページでは高梨が登場して急にホラーになるというギャップに身の毛がよだちます。日常から非日常へのグラデーションがめちゃくちゃ美しいですね。

コミックシーモアで漫画「203号室」を読んだ感想まとめ

漫画「203号室」は、結局一番怖いのは幽霊や妖怪なんかじゃなくて人間だよね、と思わされる作品です。 王道のヒトコワ漫画ではあるものの、漫画家・百鬼夜行による日常系ホラーストーリーとじわじわとくる演出方法によって、読者の心が蝕まれていきます。 そして私が感じた本作のテーマである「日常に潜む恐怖」が限界まで引き出されていました。どこかリアルな設定と常に張り付く緊張感が合わさって、ページをめくる指が止まらなくなる作品です!