2017年7月6日更新

映画『ノーカントリー』の知っておくべき隠れた事実20選

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ノーカントリー

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1.『ノーカントリー』にハビエル・バルデムが出演しない可能性があった!

ハビエル・バルデムの演じた、マッシュルームカットの不気味なサイコパス”アントン・シガー”がいない『ノーカントリー』なんて想像できません。もちろんコーエン兄弟もバルデムを第一候補に考えていました。 しかし彼自身はバイオレンスが大嫌いで、運転も出来ず、英語を話すのも得意ではない、さらに銃を扱ったこともないと出演をしぶったと言われています。またスケジュール的にも出演が難しかったそうです。 コーエン兄弟はシガーを、倫理的にも国籍的にも、どこにも属さない存在にしたかったそう。その点ハビエル・バルデムはうまく演じていますよね。

2.マーク・ストロングが出演していたかも

バルデムと共にシガー役の最有力候補として残っていたのが、2010年公開のロバート・ダウニー・Jr主演の『シャーロック・ホームズ』や同年公開のクロエ・グレース・モレッツ主演の『キック・アス』などで印象的な悪役を演じているイギリスの俳優マーク・ストロングです。 彼は次のように語っています。
ある週末に電話をもらい、ハビエルは出演できなさそうだと聞いたんだ。それから数日は、「コーエン兄弟と本当に仕事することになるぞ」と考えていた。

3.主役候補としてヒース・レジャーの名前が挙がっていた

2008年に28歳の若さで急逝したヒース・レジャー。アン・リー、クリストファー・ノーラン、トッド・ヘインズらの名監督と多くの優れた作品を残し、2008年公開の『ダークナイト』ジョーカー役でアカデミー賞助演男優賞を獲得しています。 伝えられるところによれば、コーエン兄弟はルウェリン・モス役をヒース・レジャーに演じてほしいと考えていましたが、彼は断ったのだそうです。

4.ロバート・ロドリゲスとタランティーノがジョシュ・ブローリンのオーディションを担当

ジョシュ・ブローリンはルウェリン・モス役を熱望していました。彼のスクリーンテストを担当したのは、2005年公開のネオノワール犯罪映画『シン・シティ』の監督などをつとめているロバート・ロドリゲスとクエンティン・タランティーノです。 豪華な顔ぶれですが、これは当時ブローリンが、彼らの制作していた2007年公開のホラー映画『プラネット・テラー in グラインドハウス』に出演していたから。結果は思わしくなかったものの、エージェントが粘って彼を推し続け、見事役を手に入れました。

5.あやうくモス役を逃すところだったジョシュ・ブローリン

めでたくモス役を演じられることになったジョシュ・ブローリンですが、キャスティングが決まった2日後にバイクで事故に遭い、肩を骨折してしまいました。ブローリンは車にぶつかってはね飛ばされた瞬間、
くそ!本当にコーエン兄弟と仕事がしたかったのに!
と思ったことを覚えているそう。 幸運なことにルウェリン・モスは物語のかなり前半で肩を撃たれて負傷するため、役を演じるのに問題はありませんでした。

6.モスを演じたかったギャレット・ディラハント

『ノーカントリー』で映画デビューしたギャレット・ディラハントは、モス役を手にするために5回オーディションを受けたそう。最終的にはベルの助手を務める保安官ウェンデル役に落ち着きました。

7.ポール・トーマス・アンダーソン監督と撮影がバッティング

『ノーカントリー』の撮影の大部分はテキサス州マルファの人里離れたエリアで行われました。 偶然にも同じ時期にその周辺でポール・トーマス・アンダーソン監督も2008年公開のダニエル・デイ=ルイス主演映画『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』を撮影していたのです。 2つの映画撮影は上手く共存できていたのですが、一度衝突がありました。アンダーソン監督のスタッフが油井やぐらでの火災のテストをして大量の煙が発生した時、『ノーカントリー』チームがその方向を向いてワイドショットの撮影をしていたのです。 そのため本作の撮影は1日延期されました。

8.極力音楽を減らし、緊張感を演出

本作は、極力音楽を減らすことに努めたそう。音響編集を担当したスキップ・リーヴセイはニューヨークタイムズ誌で次のように語っています。
ハリウッドで作られるサスペンススリラーにはたいてい音楽がついている。でも『ノーカントリー』では、観客に「今から何が起こるかわかっているぞ」と思わせないように、音楽というセーフティネットを外すことにしたんだ。 そうすることで物語はもっと緊張感に満ちたものになる。音楽がガイドしてくれる安心感から観客を追い出してしまうというわけさ。
バイオリンやパーカッションを使った抽象的な音を使うことも検討されましたが、無音状態の持つ緊張感を崩してしまうことがわかりました。 最終的に作中でかかる音楽は16分間だけ、それもエンドクレジットがほとんどを占めています。

9.3人のメインキャラは同時には登場しない

トミー・リー・ジョーンズ演じるエド・トム・ベル保安官と、ハビエル・バルデム演じるアントン・シガー、そしてジョシュ・ブローリン演じるルウェリン・モスの3人の主要登場人物は同時にスクリーンに登場することはありません。 ちなみにトミー・リー・ジョーンズは3人の中で最も出演時間が短いのですが、一番にクレジットされています。

10.キャトル・ガンの銃声には身近なものを使用

シガーが使っていたキャトル・ガンは牛を屠殺する際に使われるもので、額にボルトを打ち付けて牛を気絶させる装置です。撮影ではこの装置の銃声を出すためにネイルガンを使ったそう。

11.トミー・リー・ジョーンズは自身のイメージがステレオタイプ化することを心配していた

これまでテキサス州の保安官を何度も演じたことがあるトミー・リー・ジョーンズ。『ノーカントリー』に出演する際、似たような役をまた演じて自身のイメージがステレオタイプ化されてしまうことを心配していました。 しかしピューリッツァー賞受賞のアメリカの代表的な小説家コーマック・マッカーシーの小説を原作に、コーエン兄弟がメガホンをとる作品出演の魅力にはあらがえなかったようです。

12.テキサス娘を演じたイギリス生まれの女優ケリー・マクドナルド

コーエン兄弟は、イギリス、グラスゴー生まれの女優ケリー・マクドナルドがテキサス生まれの女性を演じることができるのか、はじめのうちは懐疑的だったそうです。その不安は、言うまでもなく必要のないものでした。

13.マリアッチの歌う歌

モスが国境を越え、血だらけで横たわっている場面で、メキシコ人の伝統的な楽団マリアッチが歌を歌い始めます。その歌詞の内容は、「お前は羽を持たないのに飛ぼうとした 空に触ろうとした お前は多すぎる富を欲しがった 火と遊ぼうとした」というもの。この場面にぴったりですね。

14.アメリカとメキシコの国境

アメリカとメキシコの間の国境の様子は一からセットが組まれ、1980年代の様子を苦労して完璧に再現していました。

15.麦わらのカウボーイハット

物語が夏の設定で、テキサスの人々は涼しい帽子をかぶるようになる時期であることから、モスとベルは麦わらのカウボーイハットをかぶっています。

16.冒頭の殺人シーンの裏側

コーエン監督は、物語冒頭のシガーによる殺人シーンを、映画のなかで最も暴力的なものにしたいと考えていたそうです。しかし手錠で首を締め付けるアクションは大変な痛みを伴うため、撮影には工夫が必要でした。 保安官の背中につけたベルトに、手錠とシガーの手に見せかけた義手を取り付けたそう。全然わかりませんね。

17.『ノーカントリー』というタイトルの由来

『ノーカントリー』の原題は、"No Country for Old Men"といいます。アイルランドの詩人ウィリアム・バトラー・イェイツによる『ビザンティウムへの船出』という詩の一節をとったものです。 事件を振り返って語るトミー・リー・ジョーンズが嘆くように、「老人のための国はない。秩序だった調和のとれた古き良き世界は失われてしまった」というような内容でした。

18.シガーのブーツ

シガーの履いているブーツは映画のために特別に作ったものです。衣装デザイナーのメアリー・ゾフレスは、でこぼこで先がとがっていて、大きくて人が殺せそうな感じのワニ皮のブーツにしてほしいと注文しました。 シガーの特徴的なキャラクターを反映してのことだそうです。

19.プールの場面は原作にはなかった

モスがプールで日光浴をしている女性と話をする場面は、原作にはありません。これは映画で新しく付け加えられた場面というよりは、原作のあるエピソードの代わりに入れられたものだそうです。 原作にはモスがテキサス州エル・パソに向かう途中で、一緒にヒッチハイクをすることになる少女に話しかける場面がありました。

20.『ノーカントリー』の中で使われたサイレンサーは実在しない

シガーのショットガンに取り付けられたサイレンサーは本作のための特注品で、このようなサイレンサーは存在しません。 映画では素晴らしい効果を発揮していますが、実際にショットガンの銃声を消すには小さすぎるとのことです。