映画『ベン・イズ・バック』が公開!『ギルバート・グレイプ』の生みの親ピーター・ヘッジズ作品の極意と一貫したメッセージとは
新作映画『ベン・イズ・バック』が公開となるピーター・ヘッジズ監督。名作『ギルバート・グレイプ』の脚本でも知られる彼が、一貫して作品に込めているメッセージとは?新作の見どころとともにお伝えします。
新作『ベン・イズ・バック』が公開!ピーター・ヘッジズ作品の真髄とは?
『ギルバート・グレイプ』をはじめとする、数多くの感動作を生み出してきた映画監督ピーター・ヘッジズ。彼の最新作『ベン・イズ・バック』が2019年5月に公開されます。 ヘッジズ作品の多くは、決して完璧とはいえない家族の姿を誠実に描き、観客に感動を与えています。 今回の『ベン・イズ・バック』ではアカデミー女優、ジュリア・ロバーツが主演。そして、彼女からの熱烈なラブコールを受けて、「父の作品には絶対に出演しない」と宣言していた息子のルーカス・ヘッジズも出演しています。 女優として揺るぎない地位を獲得しているジュリア・ロバーツと、若手実力派No.1との呼び声も高いルーカス・ヘッジズが共演する本作。この記事では、ピーター・ヘッジズ作品に込められた一貫したメッセージを紐解くと共に新作『ベン・イズ・バック』の見どころを紹介していきます。
『ベン・イズ・バック』のあらすじ
クリスマスイブの朝、19歳のベン(ルーカス・ヘッジズ)は突然実家に戻り、家族を驚かせます。彼は、薬物依存症の治療施設を抜け出して帰ってきたのでした。久しぶりの再会に母のホリー(ジュリア・ロバーツ)は喜び、暖かく迎え入れるものの、疑い深い妹のアイヴィーや義父のニールは、ベンが問題を起こして自分たちの生活を脅かすのでは、と警戒します。 ベンはホリーの監視を条件に、24時間だけ家に滞在することを認められます。しかしその夜、一家が教会でのクリスマスの催しから帰ると、家が荒らされ愛犬が消えていました。これは自分の昔の仲間の仕業に違いないと考えたベンは、凍てつくような寒さのなか、犬を取り戻すために飛び出して行ってしまいます。ホリーも彼を追って外へ。 過去を精算しようとするベン。一方で、息子の人生を食い荒らす恐ろしい事実を知るホリーは、救うことができるのは自分だけであると気づき、彼を全力で守ることを決意します。しかし、ベンはホリーの前から姿を消してしまい……。
ルーカス・ヘッジズとジュリア・ロバーツの演技が光る
ルーカス・ヘッジズ【薬物依存症と過去から脱出しようともがくベンを熱演】
2016年の映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたルーカス・ヘッジズ。本作で彼が演じるのは、不運にも薬物依存症に陥り治療施設に入所していた19歳のベン・バーンズです。ベンは、クリスマスイブの朝に治療施設から脱走し実家に戻りました。 ベンは薬物依存症と自らの過去から脱出しようともがきますが、世間の偏見やこれまでの人間関係を断ち切ることは簡単なことではありません。自分が戻ったことで家族に危害がおよび、加害者と自分自身への怒りや家族への愛との間で葛藤します。その心情をヘッジズは繊細に演じました。
ジュリア・ロバーツ【息子を全力で守る母親役で“キャリアの頂点”へ】
『プリティ・ウーマン』(1990)や『エリン・ブロコビッチ』(2000)などへの出演で知られるジュリア・ロバーツは、本作でベンの母ホリー・バーンズを演じています。 ベンが突然戻ってきたことに驚きながらも、暖かく迎え入れるホリー。そして、ベンの帰宅によって事件が起き、彼が姿を消してしまったあとも諦めずにベンを探し続けます。ロバーツは息子を絶対に守り抜くという、その深い愛と強い決意を熱演し、本作で“キャリアの頂点”へのぼりつめたと評価されています。
ピーター・ヘッジズ作品の一貫したメッセージとは?
不完全な家族が懸命に生きている
本作の監督、ピーター・ヘッジズは1996年『ギルバート・グレイプ』の脚本で一躍注目を浴びました。ジョニー・デップ演じる青年ギルバートが知的障害を持つ弟のアーニーをはじめとする家族の世話に追われる毎日から、自分の人生を見つめ直す姿を描き出した本作は、俳優陣の熱演もあり高い評価を得ています。 その後ヘッジズは『アバウト・ア・ボーイ』(2002)では、アカデミー賞脚色賞にノミネート。2003年には『エイプリルの七面鳥』で長編監督デビューを果たしました。 これまでのキャリアを通して彼が描きつづけてきたのは、どこかユニークで、可笑しくも不完全な家族が不完全な世界で一生懸命生きている、誠実で感動的な姿。本作でも欠点のある、複雑で興味深い家族の在り方を、薬物依存の息子と彼を愛する母を通して描ききっています。
『ベン・イズ・バック』に込めた思いとは
ピーター・ヘッジズは、親子の愛と厳しさの境界線を繊細に描いた本作について「明確な答えを提供するのではなく、どんなに善意の人でも、自分の手に負えない状況には完全には対処できないことを、さり気なく伝えようとしている」と様々な悩みを抱えている親たちに寄り添う発言をしています。 また、「映画館を出たときに、来たときよりも生き生きしていたり、他の人々の経験をもっと受け入れたくなったり、人生のもろさと美しさを思い出させられるような映画が大好きだ。『ベン・イズ・バック』で語ろうとしたのは、そういうストーリーなんだ」と自身の映画づくりに対する信条も込めたと語りました。 それまで父の作品に出演することを拒否していたルーカス・ヘッジズも、本作の脚本の素晴らしさに魅了され、出演を決めたとか。また、ルーカスの出演を熱望したロバーツは本作について、「どの家族にもそれぞれのやり方があるはず。私たちがこの映画を通して伝えようとしたコンセプトは、とにかく互いのことを諦めないで、ということなの」と語っています。
『ベン・イズ・バック』は2019年5月24日全国公開
危うくも確かにつながれた家族の絆を描き出すピーター・ヘッジズ監督。『ベン・イズ・バック』では緊張感あふれる演出とサスペンスフルな展開を交え、観客の心を鷲づかみにします。 本作は息子の薬物依存という重いテーマが用いられていますが、多くの家族は大なり小なり様々な問題を抱えているのではないでしょうか。そんなすべての家族、すべての親たちに送る、ヘッジズの“衝撃と感動”の1作『ベン・イズ・バック』は2019年5月24日より全国公開です。