2019年3月18日更新

伝説的大ヒット作「踊る大捜査線」シリーズをまるっと解説【年表付き】

踊る大捜査線

たった1シーズンの連続ドラマから始まった「踊る大捜査線」シリーズ。劇場版は邦画史を塗り替える大ヒットを記録し、シリーズは15年に渡りました。「踊る大捜査線」とは何だったのか、徹底的に解説していきます。

フジテレビの伝説的大ヒット作「踊る大捜査線」シリーズとは

1997年にフジテレビで放送が始まった刑事ドラマ『踊る大捜査線』。それまでの刑事ドラマとは一線を画し、サラリーマン出身の刑事を主人公に、会社のような警察組織を舞台にした画期的な作品でした。 織田裕二が演じた主人公・青島俊作のキャラクターも親しみやすく、彼を取り巻く同僚や上司などのサブキャラたちにもスポットを当てて、現実の警察組織をリアリティたっぷりに描いています。 ドラマのヒットを受け、その後スペシャルドラマや劇場版、スピンオフ作品も制作されました。今回は2012年までの15年間に及んだ「踊る大捜査線」シリーズを解説しています。

ドラマ『踊る大捜査線』から「踊るレジェンド」までシリーズを紹介

「踊る大捜査線」シリーズ年表

放送・公開年 作品タイトル 作品タイプ
1997年 踊る大捜査線 連続ドラマ
1997年 踊る大捜査線 歳末特別警戒スペシャル スペシャルドラマ
1998年 踊る大捜査線 番外編 湾岸署婦警物語 初夏の交通安全スペシャル スペシャルドラマ
1998年 踊る大捜査線 秋の犯罪撲滅スペシャル スペシャルドラマ
1998年 深夜も踊る大捜査線 湾岸署史上最悪の3人! ミニドラマシリーズ
1998年 踊る大捜査線 THE MOVIE 劇場映画
2003年 深夜も踊る大捜査線2 ミニドラマ
2003年 踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ! 劇場映画
2005年 交渉人 真下正義 スピンオフ劇場映画
2005年 容疑者 室井慎次 スピンオフ劇場映画
2005年 踊るレジェンドドラマスペシャル逃亡者 木島丈一郎 スピンオフスペシャルドラマ
2006年 踊るレジェンドドラマスペシャル弁護士 灰島秀樹 スピンオフスペシャルドラマ
2007年 踊るレジェンドドラマスペシャル警護官 内田晋三 スピンオフスペシャルドラマ
2010年 深夜も踊る大捜査線3 ミニドラマシリーズ
2010年 踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ! 劇場映画
2012年 踊る大捜査線 THE LAST TV サラリーマン刑事と最後の難事件 スペシャルドラマ
2012年 深夜も踊る大捜査線 THE FINAL ミニドラマシリーズ
2012年 踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望 劇場映画


『踊る大捜査線』は意外なことに、連続ドラマとしては1997年1月から3月までの1シーズンしかありません。連続ドラマの平均視聴率は18.2%で、同年放送の木村拓哉主演ドラマ『ラブジェネレーション』が30.8%、人気ドラマの続編『一つ屋根の下2』が27.0%を記録していることを考えると決して高視聴率とは言えませんでした。 しかし、その後単発でスペシャルドラマが4回、スピンオフドラマのミニシリーズが4シーズン、劇場版が4本、劇場版のスピンオフ映画が2本、そのまたスピンオフドラマが3本と、実に多種多様な展開をみせます。 スペシャルドラマでは連続ドラマ終了後の青島刑事の後日談や、内田有紀演じる篠原巡査を主人公にした番外編などが描かれました。 1998年10月に5夜連続のミニドラマとして始まった『深夜も踊る大捜査線』は、湾岸署署長・副署長・刑事課長の三人組“スリーアミーゴス”を主人公としたシリーズ。以降、劇場版が公開されるタイミングで2003年、2010年、2012年と4シリーズ続きました。 またスピンオフ映画『交渉人 真下正義』と『容疑者 室井慎次』の、さらなるスピンオフドラマが「逃亡者 木島丈一郎」と「弁護士 灰島秀樹」、そして「警護官 内田晋三」の3本です。これらの作品は2005年から2007年までの3年間続き、総称して「踊るレジェンド・スペシャル・プロジェクト」と呼ばれました。

連続ドラマ『踊る大捜査線』のあらすじ

さて、ここでシリーズの根幹となった連続ドラマ『踊る大捜査線』のあらすじをおさらいしましょう。 サラリーマンから転職して念願の刑事となった主人公の青島俊作。期待を胸に湾岸署への初出勤の日を迎えますが、自分が思い描いていた世界とは程遠い現実を思い知らされることとなります。 事件解決を最優先する非情な態度をとる警視庁と、自分の思う正しいことをしたいという青島の信念との間に起こる衝突や葛藤、理不尽な現実を経験していきます。 そんな中でも、信念を持って青島を指導する和久平八郎、ストーカー被害という辛い過去と対峙する恩田すみれとともに刑事として成長。また、犯罪被害者で青島たちを慕って警察官を目指す柏木雪乃や、東大卒のキャリアである真下正義など、多くの仲間が青島を支えるようになります。

「踊る大捜査線」シリーズのメインキャスト

青島俊作/織田裕二

敏腕営業マンから念願の刑事へと転職をした異色の警察官・青島俊作。テレビシリーズでは巡査部長でしたが、後に湾岸署刑事課強行犯係係長・警部補へと昇進します。映画『ホワイトアウト』や『アマルフィ 女神の報酬』などで主演を務めた織田裕二が演じました。

室井慎次/柳葉敏郎

東北大学卒の異色の経歴を持つ警察官僚・室井慎次。警視から後に警察庁長官官房審議官・警視監へ昇進。青島と衝突し合いながらも、所轄の働きやすい組織改革に励みます。室井慎次は、数多くのドラマに出演する柳葉敏郎が演じました。

恩田すみれ/深津絵里

湾岸署刑事課盗犯係・巡査部長で正義感あふれる・恩田すみれは、『阿修羅のごとく』や『ステキな金縛り』に出演する日本を代表する女優の一人、深津絵里が演じました。ストーカー被害の過去と闘いながら、毅然とした態度で捜査にのぞむ女性刑事です。

真下正義/ユースケ・サンタマリア

東大卒のキャリア官僚で、警視庁初の交渉人となる真下正義。テレビシリーズでは警部補から警部へ昇進し、その後係長や課長代理などを経て最終的に湾岸警察署署長となっています。『UDON』や『酒井家のしあわせ』、『エイプリルフールズ』などに出演したタレント兼俳優のユースケ・サンタマリアが演じています。

柏木雪乃/水野美紀

父が殺された事件の捜査で湾岸署と関わりを持ったことをきっかけに、警察官を志すようになった柏木雪乃。後に警察官採用試験を受け、湾岸署刑事課強行犯係・巡査部長となります。真下正義と結婚し、二児の母となる雪乃を、映画『千里眼』や『恋の罪』に出演した水野美紀が演じました。

和久平八郎/いかりや長介

同署同課強行犯係・巡査長の後、元湾岸署刑事課指導員となる和久平八郎。青島俊作に刑事としての基本を教え込んだ和久を、いかりや長介が演じています。コントグループ「ザ・ドリフターズ」の3代目リーダーで、1980年代半ばから俳優やタレントとしても活躍するようになります。がん闘病の末、2004年に永眠。『踊る大捜査線 THE MOVIE3』では、和久平八郎も病死したという設定になっています。

中西修/小林すすむ

湾岸署刑事課盗犯係係長・警部補の中西修は恩田すみれの上司であり、「恩田君恩田君恩田君!」と苗字を連呼するのがお決まりのセリフが有名。『THE FINAL 新たなる希望』の撮影終了の直後に亡くなっているため、小林すすむの演じた最後の役柄です。

魚住二郎/佐戸井けん太

湾岸署刑事課強行犯係係長・警部補だった魚住二郎。後に湾岸署刑事課課長・警部となります。フィンランド人の奥さんがいますが、「THE MOVIE2」では別居中という事実が明らかになりました。『ごくせん』や『サトラレ』、『TRICK』など数多くのテレビドラマに出演している佐戸井けん太が演じています。

スリーアミーゴスを演じたキャスト

神田署長/北村総一朗

(写真中央) スリーアミーゴスの一人で、写真中央が湾岸署署長・警視正から後に湾岸警察署の指導員となった神田署長。ミスのない捜査とスキのない接待がモットーです。『竜馬がゆく』など数多くのNHK大河ドラマ作品をはじめ、映画では『いぬのえいが』や『アウトレイジ』に出演する北村総一朗が演じました。

秋山副署長/斉藤暁

(写真右) スリーアミーゴスの一人で、写真右が湾岸署副署長・警視から後に湾岸警察署の指導員となった秋山副署長。演じた斉藤暁は、テレビシリーズと同時に『電磁戦隊メガレンジャー』の撮影もあったため、スリーアミーゴスの中で秋山のみが出演していないカットがいくつかあります。

袴田健吾/小野武彦

(写真左) スリーアミーゴスの一人で、写真左が湾岸署刑事課課長・警部から後に湾岸警察署の副署長となった袴田刑事課長。青島に手を焼きながらも、部下思いな一面も見せる青島直属の上司を、「釣りバカ日誌」シリーズや『ザ・マジックアワー』に出演している小野武彦が演じました。

チョイ役・ゲストで出演したキャストが豪華すぎた

「踊る大捜査線」シリーズには、今では考えられないくらい豪華なゲストがチョイ役で出演していました。 連続ドラマには、第2話に青島の事情聴取を受ける女性役で篠原涼子、第3話にひったくり被害に遭った中学生役で水川あさみ、第5話に援助交際希望の女性の一人で小池栄子がチョイ役でゲスト出演。 第6話には篠原ともえが湾岸署の一日署長として本人役で、宇梶剛士が生活安全課の刑事役で出演しています。また、第8話ではホンジャマカの石塚英彦が窃盗犯役、第9話では阿部サダヲが被害者の兄役を演じました。

スペシャルドラマにも多くのゲストが出演しました。「歳末特別警戒スペシャル」には伊藤英明、稲垣吾郎、広末涼子、仲間由紀恵、古田新太といったかなり豪華なメンバーが出演。「秋の犯罪撲滅スペシャル」では、大塚寧々と宮藤官九郎が重要な役どころを演じています。 また、劇場版にも意外な人物が!『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』にはナインティナインの岡村隆史が犯罪者役で、神木隆之介が万引きならぬスリ家族の長男役でゲスト出演していました。

邦画史の歴史を変えた映画「踊る大捜査線」シリーズ

第1作目が興行収入101億円、第2作目が173.5億円と大ヒットを記録した劇場版「踊る大捜査線」。なんとこれらは実写邦画では歴代興行収入第1位と3位で、2作目はアニメ作品を含む全体でも第5位という記録(2019年3月現在)。しかも50位までに劇場版4作すべてが入っています。 連続ドラマ終了の翌年、1998年に劇場版第1作目『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!』が公開。2003年に『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』、2010年に『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』、そして2012年に『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』がシリーズ最後の劇場版として製作されました。 第2作目と第3作目の間の2005年には、スピンオフ映画として企画された「踊るレジェンドムービー」の『交渉人 真下正義』と『容疑者 室井慎次』が、5月と8月に連続公開されています。 それでは邦画史の記録に残る映画「踊る大捜査線」シリーズを作品ごとに振り返っていきましょう。

劇場版1作目『踊る大捜査線 THE MOVIE』

1997年10月に連続ドラマ『踊る大捜査線』の劇場版の制作が発表され、1998年10月31日に公開された『踊る大捜査線 THE MOVIE』。 観客動員数は700万人、興行収入は101億円を記録し大ヒット。第22回日本アカデミー賞では、いかりや長介が和久平八郎役で最優秀助演男優賞を受賞しています。また、重要な役どころで小泉今日子がゲスト出演しました。

映画のあらすじ

湾岸署の管轄の川で熊のぬいぐるみが腹に詰められた水死体が発見され、同時に署内では窃盗事件も発生。さらに警視庁副総監の誘拐事件も起き、湾岸署に捜査本部が設置されます。 しかし極秘捜査を進める本部は所轄に協力を求めようとせず、青島たちは怒りを募らせつつも、それぞれの事件解決に向けて捜査に奔走します。

劇場版2作目『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』

前作のメインキャストとスタッフが続投した劇場版第2作目は、2003年7月19日に公開。観客動員数1260万人、興行収入173.5億円と前作を大きく上回る記録で再び大ヒットしました。 舞台は前作の5年後で、登場人物たちの部署が移動したり、昇格や降格した様子が描かれています。新キャラクターの沖田警視正を、真矢みきが嫌味たっぷりに演じました。 この作品は青島の「レインボーブリッジ封鎖できません!」という有名なセリフを生みましたが、実はレインボーブリッジは封鎖できるということもまた話題に。劇中で青島と室井の会話だけで、その存在を知らされた“潜水艦事件”にも注目が集まりました。

映画のあらすじ

お台場は観光名所となり、すっかり様変わりした5年後の湾岸署。管轄内で婦女暴行事件とスリ事件が次々と発生し、ついに殺人事件まで起こります。湾岸署に殺人事件の特設本部が設置され、初の女性管理官・沖田警視正がやってくることに。しかしその最中、第2の殺人事件が発生してしまいます。

劇場版3作目『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』

劇場版第3作目は前作から7年ぶりに、2010年7月3日に公開されました。スピンオフ映画『交渉人 真下正義』と『容疑者 室井慎次』からは5年ぶりです。 和久役のいかりや長介が2004年に亡くなっており、本作には和久の甥である伸次郎が登場。『チーム・バチスタの栄光』の伊藤淳史が演じています。柏木雪乃は産休中という設定で、シリーズ中初めて水野美紀が出演しない作品となりました。 所轄と本庁の調整役を担う鳥飼は、小栗旬が演じています。さらに、これまでのシリーズ中に登場した犯人役で登場したキャストが再登場。伊集院光、稲垣吾郎、岡村隆史、小泉今日子ら豪華俳優・タレント陣が集結することとなりました。

映画のあらすじ

青島は刑事課強行犯係の係長に昇格し、3日後に控える新湾岸署への引越し作業に追われていました。そんな最中、管内でバスジャック事件と銀行強盗が発生。さらに新湾岸署から拳銃3丁が盗まれる事態に。青島は鳥飼誠一管理補佐官とコンビを組んで、捜査に当たることになります。

劇場版4作目『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』

シリーズ最後の劇場版となった第4作目は前作の2年後、2012年9月7日に公開され、本作をもって15年に渡る「踊る大捜査線」シリーズは終幕を迎えました。 最後にふさわしく、これまでに登場した警察官役の俳優が出演。香取慎吾や小栗旬のほか、ムロツヨシ、小泉孝太郎、真矢みき、筧利夫、大杉漣など豪華なサブキャストが集いました。

映画のあらすじ

湾岸署管内で国際環境エネルギーサミットが開催される中、会場で誘拐事件が発生します。しかし被害者は射殺体で発見され、捜査会議では鳥飼に捜査情報を文書で報告し、所轄の刑事には情報を隠したまま捜査が行われることに。そんな状態の中、さらなる殺人事件が起こります。

ハイパーリンクやオマージュなど、「踊る」には小ネタが盛りだくさん!

「踊る大捜査線」シリーズには、同一世界の中で展開されていることを示す“ハイパーリンク”が張り巡らされており、映画・ドラマへのオマージュなども見受けられます。その中からここに、いくつかの小ネタを紹介します。

カエル急便

『踊る大捜査線』といえば“カエル急便”と即答できるほど、度々シリーズ内に登場する架空の運送会社。特徴あるカエルのロゴマークが目印です。カエル急便が登場する時は、何らかの事件が発生する合図でもあります。

レインボー最中とカップ麺

レインボー最中は湾岸署管内の唯一の名産品として登場。もちろん架空の代物で、署長たちが接待で常時利用していた七色の最中です。 青島をはじめ湾岸署のメンバーが食べていた架空のカップ麺も話題に。「キムチラーメン」や「わさびラーメン」、さらには「湾岸ラーメン」などオリジナルラーメンが登場しています。特に湾岸ラーメンは劇場版3作・4作目公開時に、実際に明星食品から全国発売もされました。

ドラマ『東京ラブストーリー』

『東京ラブストーリー』といえば、青島を演じる織田裕二の代表作の一つ。このビデオテープが1998年のスペシャルドラマ「秋の犯罪撲滅スペシャル」にこっそり登場しています。被疑者のビデオテープを調べる他のメンバーたちがドラマに見入っている横で、青島が織田裕二演じるカンチにダメ出ししているのが面白い!

黒澤明の『天国と地獄』へのオマージュ

黒澤明の1963年の映画『天国と地獄』は全編白黒ですが、ワンシーンだけ煙突から出る煙に着色が施されています。映画『踊る大捜査線 THE MOVIE』でも同様に白黒画面の場面があり、煙突からピンク色の煙が出てきました。青島もそれを見て「天国と地獄だ」と言っています。

いつ見ても、今見ても面白い!「踊る大捜査線」シリーズ

青島刑事を演じた織田裕二の代表作「踊る大捜査線」シリーズ。プロデュースを担当し続けた亀山千広によれば、シリーズのコンセプトは“リアリティ”で、「踊る」世界の時間軸も実際の時間軸と同じに進められていました。つまり連続ドラマがスタートした1997年1月と、実際の時間がリンクしているのです。 そうやって進んだこの世界の時間も、2012年9月で終わってしまいました。しかしこのシリーズはリアリティを追求していたからこそ、その当時の世相や警察組織の現実なども楽しめる、今見ても面白い作品に仕上がりました。 いつ見ても面白い作品ですが、シリーズは最初の連続ドラマから観るのがおすすめ!ぜひ実際の時間軸とともに成長していく青島たちを、最初から見届けてあげてください。