2019年6月28日更新

【人種、性別、国籍etc】様々な差別と戦う人を描いた傑作映画10選

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映画を通して知る!社会に根強く残る様々な差別

「差別」と一口に言っても、世界中に共通するものから特定の社会独特なものまで実に様々。映画は社会を映す鏡であり、多種多様な差別問題はこれまでにもいろいろなジャンルの作品でメインテーマとして取り上げられてきました。 例えば肌の色の違いで起こる人種差別、性の多様性による無知と偏見が起こすLGBT・性差別。宗教や身分や経済格差、アメリカでの黒人差別や日本での在日朝鮮人差別なども、何度も取り上げられてきた問題です。 今回は差別の多様性を踏まえて、社会に根強く残っている様々な差別をテーマとした作品を紹介していきます。特に、逆境の中でも生き抜く力強さを感じさせてくれる人物が主人公となった映画をチョイスしました!

同性愛者を公表しマイノリティのために戦った政治家『ミルク』

ミルク Milk
©︎Focus Features/Photofest/zetaimage

『ミルク』はガス・ヴァン・サント監督、ショーン・ペン主演の伝記映画で、実在の政治家ハーヴィー・ミルクの人生を描いています。ミルクの同性の恋人スコット・スミス役にはジェームズ・フランコ、ミルクと敵対するダン・ホワイト役にはジョシュ・ブローリンがキャスティングされました。

あらすじと見どころ

同性愛に理解が及ばない1970年代のサンフランシスコで、マイノリティの権利を主張するために市会議員に立候補したハーヴィー・ミルク。当選してからは弱者救済の活動を始め、徐々に支持者と理解を勝ち取っていきますが、対立も生じて身の危険を感じるようになります。 アメリカで初めて同性愛者であることを公表して公職に就いたミルクは、カストロ地区のゲイ・コミュニティ代表として「カストロ通りの市長」と呼ばれ慕われました。3度目の立候補でようやく初当選し、同性愛者の地位向上と権利獲得に尽力。 しかしホモフォビアとの戦いは厳しく、任期わずか11ヶ月で凶弾に倒れました。ミルクの葬儀が行われた晩には自然に何千もの追悼キャンドルが灯され、彼の意志を受け継ぐ人々で埋め尽くされましたといいます。

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ユニークな個性を活かす!身分格差と外見的偏見を打ち破って成功した『グレイテスト・ショーマン』

グレイテスト・ショーマン
©2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

アメリカの伝説的興行師P・T・バーナムの人生をモデルとしたミュージカル『グレイテスト・ショーマン』には、容姿や人種など多様性に富んだ人々が登場します。バーナムを演じたのはヒュー・ジャックマン、そのビジネスパートナーとしてバーナムを支えるフィリップ・カーライル役をザック・エフロンが演じました。

あらすじと見どころ

貧しくも幼なじみの令嬢チャリティを妻にしたバーナムは、家族を幸せにするためにまったく新しい興行を思い付きます。それは、ユニークな個性を持ちながら活かせず人前にも出れずにいた人々にスポットライトを当てること。彼らを主役にしたショーを企画し、賛否両論を得ながらも成功をつかんでいきます。 19世紀も半ばという時代に、外見的な違いによって偏見を持たれていた人々を見出し表舞台に立たせたバーナム。確かにはじめは見世物にすぎないショーだったかもしれません。しかし、その逆境を覆していったのは他ならぬ団員たち!自分たちの個性をショーで表現できる誇りを持って、堂々と「This is Me!」と歌い踊りました。 バーナム自身も身分違いの恋から結婚し身を立てていった人物。ゼンデイヤ演じるアンとカーライルもまた、身分と人種の違いに苦しみます。これは、身分・経済格差や外見的偏見と戦う人々の宣戦布告ともいえるアツイ物語。レティ役を演じたキアラ・セトルが団員たちと歌う「This is Me」は、ゴールデングローブ賞主題歌賞を受賞しました。

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『ボーイズ・ドント・クライ』で知る性同一性障害への無知と差別

ボーイズドントクライ
©︎Fox Searchlight Pict/Photofest/zetaimage

主演のヒラリー・スワンクがアカデミー賞をはじめとする数々の映画賞で主演女優賞に輝いた作品で、性同一性障害を持った実在の人物ティーナ・ブランドンの人生を描いています。ブランドンの恋人となるラナ役をクロエ・セヴィニーが演じました。

あらすじと見どころ

ネブラスカ州フォールズ・シティに転居してきたブランドン・ティーナは、バーでラナという女性に一目惚れ。ラナの仲間であるジョンとトムとも男友だちとして付き合い始めます。しかし実はブランドンはティーナという名の女性。心身の不一致を自覚した状態で、苦しみながら生きる道を模索していました。 性同一性障害とは身体的性別と自己の性意識が異なる状態で、現在では医学的な疾患と認識され、LGBTのT「トランスジェンダー」と表現されるようにもなってきました。 ブランドンはヘイトクライムによって衝撃的な最期を遂げることになります。あらゆる差別行為の中で一番あってはならないヘイトクライムという犯罪。これは、性差別や人種差別によって引き起こされる偏見と憎悪の極みです。

アメリカ野球界における人種差別の壁に風穴を開けた『42〜世界を変えた男〜』

チャドウィック・ボーズマンが黒人初のメジャーリーガーであるジャッキー・ロビンソンを演じた伝記映画です。ロビンソンとメジャー契約を結んだブルックリン・ドジャースのジェネラル・マネージャー、ブランチ・リッキーをハリソン・フォードが演じました。

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あらすじと見どころ

まだ黒人差別が色濃く残る1947年、ドジャースの経営を担っていたリッキーは周囲の反対を押し切って初めて黒人選手のロビンソンとメジャー契約を結びます。しかしこれはファンやチームメイトだけでなく、世間からも非難を受けることに。それでも強い意志でプレーを続けるロビンソンの姿に、人々の心も動かされていきます。 1940年代のアメリカ球界は、まだまだ有色人種のメジャーリーガーなど考えられなかったという時代。そんな野球界に人種の壁を越えて乗り込んだのが、ロビンソンとリッキーです。 ロビンソンはそのプレーで、リッキーはその手腕でそれぞれ周囲が納得やむなしという偉業を成し遂げていきました。原題は『42』で、ロビンソンの背番号。アメリカとカナダの全野球チームがロビンソンの偉業に敬意を表して、この番号を永久欠番としています。

アパルトヘイトと戦い続けた人々!不屈の魂を持った『インビクタス/負けざる者たち』

クリント・イーストウッド監督による社会派ドラマで、南アフリカ共和国が国を分断したアパルトヘイトから再生していく様子を描いています。ネルソン・マンデラ大統領をモーガン・フリーマン、南ア代表ラグビーチームの主将フランソワ・ピナールをマット・デイモンが演じました。

あらすじと見どころ

1994年に南ア初の黒人大統領に当選したマンデラが、一番初めに取り組んだのは黒人と白人の融和。そしてスポーツによって国の人々の心を一つにすることでした。1995年に自国開催されるラグビーのW杯に向けて、マンデラは代表チーム「スプリングボクス」のキャプテンであるピナールにその意志を伝えます。 アパルトヘイトとは南アフリカ共和国の人種隔離政策であり、白人と有色人種の混血を避ける目的で実質的に隔離したもの。国際社会から非難を浴び、1991年にはこの政策を撤廃、初めての全人種総選挙で当選したのがマンデラです。 マンデラは反アパルトヘイト運動によって、国家反逆罪で27年間も投獄されていた生粋の闘士。ピナールたちチームメンバーはマンデラが収容されていた独房を訪問し、そこで「負けざる者」の意志を感じました。この体験がおそらく、国を一つにした伝説的な試合の布石となったのではないでしょうか。

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『ミシシッピー・バーニング』に見るKKKによる黒人差別の歴史

ミシシッピーバーニング
©︎Orion Pictures Corporation/Photo/zetaimage

ミシシッピー州で実際に起きた公民権運動家失踪事件を基に、1960年代のKKKによる黒人差別問題を明らかにした問題作です。主演はジーン・ハックマンで、FBIから派遣されるベテラン捜査官アンダーソンを演じました。共演はウィレム・デフォーで、相棒のエリート捜査官ウォード役で出演しています。

あらすじと見どころ

アメリカで人種差別を禁ずる公民権法が制定される直前の1964年、ミシシッピー州で活動していた公民権運動家の3人が失踪する事件が起きます。FBIから派遣されたアンダーソンとウォードは、捜査に協力するどころか妨害すら始める住民たちを目の当たりにし、次第にここがKKKに支配された町だと知ることになります。 19世紀南北戦争後に南部で誕生したとされるKKK=クー・クラックス・クランとは、アメリカで生まれた白人至上主義を掲げた秘密結社。公然と黒人差別を行い、反ユダヤ主義でもあります。特に黒人を擁護する白人も敵視するため、ミシシッピー州の事件も引き起こされたと考えられています。 しかし現在も公然と差別発言を繰り返す大統領が誕生し、白人至上主義が再燃しているのを見るとまるで時代が逆行しているよう。それでも公民権運動によって勝ち取った公民権法は、その後差別を是正するアファーマティブ・アクション政策にもつながっています。

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エイズ差別が発生した当時を生々しく描いた『フィラデルフィア』

フィラデルフィア
©︎TriStar Pictures/Photofest/zetaimage

ジョナサン・デミ監督、トム・ハンクス主演の法廷ドラマで、エイズ発症とゲイの因果関係についての偏見を覆すべく裁判で戦った弁護士の物語です。主人公アンドリュー・ベケットの弁護を引き受ける弁護士ジョー・ミラーをデンゼル・ワシントンが演じました。

あらすじと見どころ

同性愛者であるベケット弁護士はエイズを発症したことで事務所から解雇されますが、これを不当な差別として訴訟を起こします。ベケットに弁護を依頼されたミラーは実は同性愛者に偏見を持つ人物。しかし社会を相手取り偏見と闘おうとするベケットの真摯な姿を見て、引き受ける決意を固めます。 1980年代初めにAIDS(エイズ)という病がアメリカで知られ始めたころ、原因不明の死病として恐れられ、ゲイや麻薬常習者に感染者が多発したために社会的偏見が生まれました。当時は触るだけでも感染するのではと誤解され、劇中でもミラーがベケットに触れるのを恐れる描写があります。 ベケットが闘ったのはゲイへの偏見とエイズという病そのもの。裁判中にも病が進行していく様子がリアルに描かれています。現在ではエイズの感染経路は性的感染のほかにも血液感染や母子感染で発症することがわかっていますが、今も世界中に多くの感染者がいて闘病を余儀なくされています。

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貧困と身分格差に抗い続けて成功を手にした『スラムドッグ$ミリオネア』

スラムドッグ・ミリオネア
©︎Warner Bros./Photofest/zetaimage

ダニー・ボイル監督がインドを舞台に撮ったヒューマンドラマで、アカデミー賞で監督賞と作品賞など8部門受賞した作品です。主人公のムンバイのスラム街で育った青年ジャマールをデーヴ・パテール、彼の運命の人ラティカをフリーダ・ピントが演じました。

あらすじと見どころ

インドには少数派イスラム教徒への宗教差別が現在も色濃く残っており、ジャマールの母親はイスラム教徒で、ヒンズー教徒の襲撃で命を落としてしまいます。 深刻な貧困と身分格差の中で生きる子どもたちが、インドには多く存在しているという事実も描かれます。ジャマールのようなスラムの孤児たちは自ら稼いで日々を凌ぐしかないという厳しい現実があります。 しかしスラムドッグ(スラムの負け犬)と呼ばれたジャマールの快挙を、インド中の人々が見守り沸き立つ瞬間は鳥肌モノ!彼が貧困を生き抜いて得た人間力は、路上での経験によって培われたものだったわけです。

『GO』で描かれた在日韓国人社会を通じて感じる国籍差別

行定勲監督、窪塚洋介主演で製作された2001年の日本映画『GO』では、韓国国籍を持つ主人公・杉原がアイデンティティを模索する様子が描かれています。原作は金城一紀の同名小説、脚本を宮藤官九郎が手がけた作品です。柴咲コウが杉原の彼女・桜井を演じました。

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あらすじと見どころ

在日韓国人の杉原は国籍など気にしないタイプ。民族学校に通っていた中学時代は「開校以来のばか」と言われるほどで、日本の普通高校へ通ってもケンカばかり。しかしある日桜井という少女に出会い、自分の国籍を打ち明けるか悩むようになります。 北朝鮮籍の在日1世である杉原の父親・秀吉は、日本に移り住んでからの厳しい経験で得た信条を息子に言葉少なくも伝えています。「広い世界を見ろ」という言葉は日本の在日社会という狭い枠を飛び出せという強いメッセージ! 宮藤官九郎ならではの突き抜けたコメディセンスが光る脚本で、在日社会とその周りの日本人たちとの軋轢を描きながらも、国籍差別など吹き飛ばすほどの勢いを感じます。

職場での性差別を克服していくサクセスストーリー『ドリーム』

 『ドリーム』
© 20TH CENTURY FOX/zetaimage

アメリカ人宇宙飛行士として初めて地球周回軌道飛行に成功したジョン・グレンのミッションを支えた、3人の女性スタッフの奮闘を描いた物語。主演はタラジ・P・ヘンソンで、数学の天才キャサリンを演じました。共演はオクタビア・スペンサーとジャネール・モネイ、キャサリンの上司ハリソン役でケビン・コスナーが出演しています。

あらすじと見どころ

米ソ間で宇宙開発競争が激化した1961年、NASAが推進していた有人宇宙飛行計画「マーキュリー計画」のために優秀なスタッフが求められていました。そこに計算手として抜擢されたのがキャサリン、そしてドロシーとメアリー。しかし白人男性優位の職場では、女性であり黒人でもある彼女たちに対する風当たりも強く、キャサリンたちは二重の差別に苦しむことになります。 能力があるのに正当に評価されず、性差別と人種差別の両方でキャリアを築けなかった時代。そんな中にあっても、決して自分を卑下せず胸を張って仕事をこなし、影で偉業を支えたキャサリンたちの勇姿は実に爽快! ハリウッド映画界がセクハラ問題で揺れる中、今一度この作品を思い起こせば、性差別とはなんと不合理で進歩を阻害するものかと感じずにはいられません。

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新たにエイズ差別問題を描いた『BPM』にも注目!

『フィラデルフィア』ではエイズ発生当時の現実を知ることができましたが、1990年代のエイズ問題を取り上げたフランス映画『BPM』にも注目が集まりました。2017年のカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞し、日本でも2018年3月24日に公開されます。 この作品はエイズ活動家団体「ACT UP」のメンバーたちの人生を追い、エイズ患者やHIV感染者に対する偏見や差別への抗議活動を今に伝えています。 これからも様々な差別をテーマにした作品が作られていくことを願い、差別に無関心にならず、無知でいないようにしていきたいものですね。