衝撃のサイレント映画が完成。家族を失った姉妹の願いは、津波にさらわれた家を作ること

2017年7月6日更新

津波で全てを失った姉妹が家族を探し出そうと浜辺へ帰ってきますが、浜辺には村の痕跡すらありませんでした。それでも気丈に家族が集うための家を作ろうとします。疲れて眠る夢の中に現れる家族の面影。流木で家を作る姉妹に希望はあるのでしょうか。渋谷のユーロスペースで9月19日(土)に、ついに公開されます。

津波で家族が流された震災後の現実と家族と暮らす夢が交差する

『シロナガスクジラに捧げるバレエ』は津波で何もかも失われてしまった浜辺へ帰ってきた姉妹の7日間を描いています。

幼い姉妹(11歳と9歳)は家族と暮らした浜辺へと帰還します。津波が全てをさらってしまう前には浜辺の村には普通の、そして平凡な幸せがありました。しかし、2人が思い浮かべていた懐かしい浜辺の村の痕跡はどこにもありません。もちろん姉妹の家族の姿も。

姉妹の目的は津波で失った家族を探し出し、もう一度一緒に暮らすことでした。もう2度と離れてしまわないようにとロープで結ばれた姉妹は流木をさがし、家を作ろうとします。3姉妹で一緒に遊んだこと、優しかった父と母、そして祖父母の思い出が蘇ってきます。疲れ果て眠る2人は夢の中で次々と家族と再会します。姉妹に希望の光は差すのでしょうか…

シロナガスクジラに捧げるバレエ

キャストは無名ながらもオーディションに受かった松下華菜(はるな)と大久保妃織 (ひおり)が主演の姉妹をつとめ、また、この映画の監督である坂口香津美が、少女たちの父親役をつとめます。

この映画の最大の特徴はセリフが全くなく、サイレント映画ということです。姉妹の切なさ、詩のような映像を音楽とともに伝えていきます。

震災に正面から向き合った作品

シロナガスクジラに捧げるバレエ

出典: cinematrip.jp

忘れもしない2011年の3月に東北大震災は起きました。

発生した後に1人の少女がテレビに映し出されました。その少女は津波で流された母の手を離してしまったと涙ながらに言い、それでも自分は強く生きて行くと言いました。それが現実で生きていくということなのかもしれません。震災で起きたことはあまりにも辛い出来事です。出来ることならばそんな現実からは目を背けたいと思ってしまうでしょう。

しかし、実際は今でも行方不明者がいて、家族を失った人々が生きているのです。そういった現実を真正面から受け止めた作品と言えるでしょう。

姉妹役の二人は映画初出演

シロナガスクジラに捧げるバレエ

3姉妹で長女と3女を演じたのはこの作品のオーディションに応募して決まった2人の女の子です。2人とも映画は初出演です。

長女、鶴役を演じたのは松下華菜(はるな)。2001年4月19日東京都生まれの14歳で初出演はミュージカルでした。

3女、朱鷺役を演じたのは大久保妃織(ひおり)。2003年9月19日東京都生まれの12歳でやはり初主演はミュージカルです。

この映画出演当時は12歳と9歳だったそうです。これからの2人の女優としての活躍が楽しみです。

ドキュメンタリー畑の坂口香津美による暗くも美しい世界観

坂口香津美

坂口香津美はこれまで200本以上のドキュメンタリー作品を手がけています。その中心は若者や家族の姿です。

初めての映画作品は、最愛の妹を亡くし引きこもりになってしまった青年が自立するまでの姿を描いた『青の塔』。そのほか『カタルシス』でもメガホンをとりました。8年というブランクを経て3作目の『ネムリユスリカ』では性犯罪で生まれた少女を描き、激しくダークな世界観に相対する映像美が海外メディアで絶賛されました。2009年には『夏の祈り』で初のドキュメント映画を製作し、2014年には2作目のドキュメント映画『抱擁』を製作しました。『シロナガスクジラに捧げるバレエ』では監督の傍ら、少女たちの父役も演じています。

坂口監督の作品はダークな世界観ながらも再生を描いていることが多く、ただ悲しみに打ちひしがれてはいません。それは見るものにとっても救いになっていると思います。

音楽は新垣隆が担当

新垣隆

出典: mantan-web.jp

今テレビなどでも人気の新垣隆が音楽を担当しています。ゴーストライターの事件もありましたが、日本の作曲家であり、芸術音楽家としても知られています。

今回の映画ではチェリストの海野幹雄とともに作曲を手がけており、詩のような映像に全編に流れる音楽が心を揺さぶります。

2015年9月ついに渋谷で公開

シロナガスクジラに捧げるバレエ

本作は2014年に制作された作品ですが、2015年9月19日に渋谷ユーロスペースにて公開決定。全国公開は順次とされています。

「東日本大震災の発生5年目」という今、観ておかなければならない1作。ぜひ劇場に足を運んではいかがでしょう。