2020年3月19日更新

R指定・PG指定の意味を解説!レイティング毎のおすすめ映画も紹介

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『お嬢さん』 2
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日本の映画レイティングとは?R指定のおすすめ作品も紹介

映画には各国が独自の基準を持つレイティングシステムがあります。アメリカではハリウッドのメジャースタジオがメンバーであるMPAA(アメリカ映画協会)、日本では映画倫理機構と、それぞれの協会や機構が定めたレイティング基準によって映画の内容を審査します。映画の冒頭に表示される「映倫」のマークは、映画倫理機構が審査済みの作品という印ですね。 この記事ではまず日本のレイティングシステムについて解説し、後半に各レイティングのおすすめ作品を紹介していきます。各作品でなぜそのレイティングに指定されたのかという点にもフォーカスしたいと思います。 ※記事の性質上紹介作品に関するネタバレ情報を含む場合があります。ご注意ください。

映画のレイティングを解説、R18、R15、PGの基準とは

日本に映画倫理機構の基となる映画倫理規定管理委員会が設立されたのは、終戦後の1949年。1956年には通称「新映倫」と呼ばれる映画倫理管理委員会が設立され、現在の映画倫理機構となったのは2017年でした。 時代の変遷とともに映倫規定も見直しが行われ、細かいレイティングが導入され、旧来の3区分から現行の4区分に改定されました。ここからはレイティングの4区分を詳しく説明していきます。

G (General Audiences)

General Audiencesとはすべての観客の意味で、全年齢層が鑑賞できるレイティングです。区分マークは緑色で「G」と表示されています。旧区分では一般映画と呼ばれていました。 小学生以下の子どもが鑑賞してもショックを与えないような、穏やかな内容の作品であることが基準です。大人向きの作品もありますが、幼児や小学生向けの作品ではより慎重な描写や表現が求められます。

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PG12

12歳未満の子どもが鑑賞するには、成人の保護者の助言と指導が必要とされる区分。PGとはParental Guidance(親の指導・助言)の略で、区分マークは水色で「PG12」と表示されています。1998年から新たに導入された区分です。 子どもが真似する可能性がある麻薬・たばこ・飲酒・車の運転や、性的・暴力的・残酷な描写やホラー映画などが対象となっています。地上波で放送される際はG指定同様の扱いとなる場合も多いようです。

R15+

旧区分では一般映画制限付と呼ばれた区分で、1998年にR-15指定、2009年にR15+と名称が変更されています。15歳未満の入場・鑑賞を禁止する区分で、区分マークはピンク色で「R15+」と表示されます。RはRestricted(観覧制限)の略。 PG12の規定に加え、いじめや過度な暴力描写も対象となります。放送禁止用語が頻繁に使用されるものや暴力団・偽造犯罪行為を扱った作品なども審査の対象です。地上波で放送される場合は深夜になるか、ゴールデンタイムでは該当シーンがカットされることもあります。

R18+

旧区分では成人指定と呼ばれた区分で、1998年にR-18指定、2009年にR18+と変更されました。18歳未満の入場・鑑賞が禁止される区分で、赤色の区分マークに「R18+」と表示されます。激しい性的表現や著しい反社会的行動、さらに麻薬の賛美表現などが対象。 R18+に指定された作品はマスコミでの宣伝が困難になり、公開できる映画館の数も少なくなります。また、地上波での放送も事実上不可能です。

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PG-12おすすめ映画

『パラサイト 半地下の家族』(2020)

2020年初めの映画界最大のトピックといえば、ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』がカンヌ国際映画祭のパルムドールとアカデミー賞作品・監督賞を受賞したこと。どちらも韓国映画初、アカデミー賞に至ってはアジア映画として初めての快挙でした。 そんな世界的な高評価を得た作品ですが、アメリカではR指定、韓国では15歳以上が鑑賞できる「15可」に指定されています。しかし日本ではPG12であり、暴力・性的表現の基準が日本は他国より厳しくないようです。 本作は半地下に住む全員失業中の家族が、高台のデザイナーズハウスに住むIT長者の裕福な家族に「寄生虫」のごとく侵食していく様子を描いたブラックコメディ・サスペンス。確かに劇中には軽い性愛描写と大量の血が流れる暴力描写がある上、社会批判を含んだ内容を理解するにもハードルが高いといえます。

『怒り』(2016)

吉田修一の同名小説を李相日監督が映画化した『怒り』は、渡辺謙をはじめ森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、妻夫木聡など知名度の高い実力派俳優たちが結集した群像ミステリー。吉田修一×李相日は2010年の『悪人』以来のタッグとなります。 東京・八王子で起きた凄惨な夫婦殺人事件の現場に「怒」という血文字を残して逃亡した犯人。その一年後、経歴不明の男三人がそれぞれ千葉・東京・沖縄の3カ所に現れます。愛した人がもし殺人犯だったら—人を信じることの困難さを問いかける作品です。 PG12のレイティングに指定されたのは、未成年が飲酒する場面があることが一つ。そして新宿二丁目での同性愛描写や、妻夫木聡演じる優馬と綾野剛演じる直人のセックスシーンがあることでしょうか。また、広瀬すず演じる少女・泉が沖縄の米兵にレイプされる場面があることも考慮されたのかもしれません。

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『惡の華』(2019)

押見修造の同名漫画の実写映画化作品で、主演を伊藤健太郎と玉城ティナが務めました。中学二年生という多感な思春期を送っている春日高男を主人公とした青春映画です。 青春映画といってもPG12指定であることからわかるように、決して爽やか系ではありません。詩集「惡の華」を愛読する春日は、憧れの同級生・佐伯の体操着を思わず盗んでしまいます。そこをクラスの問題児・仲村に見られて弱みを握られ、思わぬ主従関係に陥っていくのでした。 ドSな仲村から「ド変態」や「クソムシ」などと浴びせかけられる悪態の数々、さらには盗んだ体操着を着て佐伯とのデートを強要するなど、小学生以下の子どもには刺激が強すぎる内容ではあります。思春期特有の鬱屈した感情を読み取るには、小学生では早すぎるのではないでしょうか。

R15+、R-15指定おすすめ映画

『デッドプール』(2016)

マーベル・コミックの異色ヒーロー「デッドプール」を主人公にした単独映画で、「X-MEN」シリーズのスピンオフ作品。毒舌を吐く自己中ヒーローという型破りなデッドプールを、ライアン・レイノルズが演じています。 末期癌の宣告を受けた元傭兵のウェイド・ウィルソンは、ガンを治せると誘われ人体実験を受けますが、不死身の肉体を得た代償に醜い姿に変貌。赤いコスチュームをまとって「デッドプール」となり、人体実験をしたウェポンXプログラムのリーダー・エイジャックスを追います。 15歳未満の中学生以下の子どもが鑑賞するには、刺激の強い流血を含む殺傷・暴力と性愛描写があるということでR15+指定となりました。確かにそれも理由にあるのでしょうが、何よりデッドプールの毒舌の数々が発禁用語!大人には楽しめるブラックユーモアのセンスも子どもにはわかりづらいかも。

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『悪の教典』(2012)

貴志祐介の同名小説を三池崇史監督が映画化した作品。伊藤英明がサイコパスである主人公の高校教師・蓮実聖司を演じ、初の悪役に挑戦しています。 生徒や教師、PTAから絶大な信頼を得ている英語教師の蓮実は、実は生まれながらのサイコパスという裏の顔を持っていました。自分の行動を邪魔する者は躊躇なく始末していき、やがて小さなミスを補正するため担当クラスの全員を殺す計画を立てます。 教師が生徒たちを猟銃で次々ためらうことなく惨殺していくという展開に驚愕。そもそもその題材自体が問題だったようです。大量殺人と多量の流血、さらにはいじめやセクハラ、淫行といった学園内の問題も題材としては刺激が強めです。

『空気人形』(2009)

是枝裕和監督作としては珍しいR15+指定の作品で、女性の代用品である空気人形が心を持つ物語。空気人形の「のぞみ」を演じたのは、韓国の人気女優ぺ・ドゥナです。 持ち主の秀雄(板尾創路)が「のぞみ」と名付けて愛玩する空気人形に、ある日「心」が芽生えます。秀雄が留守の間に街へ出かけるようになったのぞみは、レンタルビデオ店の店員・純一(ARATA)に出会い、恋するように。のぞみはなぜ自分が心を持ったのかを問い続けます。 性欲処理の代用品である空気人形が主人公になっているため、アダルトグッズの知識がない年齢層には不向きかもしれません。性愛描写の場面は過激ではないものの、純一がのぞみの空気を抜いたり吹き込んだりするシーンは不思議でフェティッシュな官能性があります。

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R18+、R-18指定おすすめ映画

『お嬢さん』(2017)

『オールド・ボーイ』で著名なパク・チャヌク監督によるサスペンス・ドラマで、イギリスの作家サラ・ウォーターズの小説「荊の城」が原案となっています。主人公の少女スッキを、オーディションで抜擢された新人女優キム・テリが演じました。 日本統治下にあった1930年代の韓国。スラム街に育った少女スッキは、藤原伯爵(ハ・ジョンウ)を名乗る詐欺師から、資産家の令嬢・秀子(キム・ミニ)の財産を奪い取る計画を持ちかけられます。計画に乗ったスッキは、秀子が叔父と暮らす屋敷にメイドとして働き始めますが……。 R18+でもギリギリな女性同士の性行為シーンが大きな話題を呼び、成人指定映画としては異例の大ヒットを収めた本作。しかしすごいのはそれだけではなく、一級のコンゲーム・サスペンスとしても、最高のフェミニズム映画としても大いに楽しませてくれる快作でもあることなのです。

『娼年』(2018)

石田衣良の同名小説を原作としたR18+指定作品で、主演を松坂桃李が務めました。娼夫として生きる主人公リョウを演じ、大胆なセックスシーンに挑んでいます。 大学とバーのバイトだけの退屈な日々を送るリョウは、友人の紹介で会員制ボーイズクラブのオーナーと知り合い、彼女の店で働くことに。初めは娼夫という仕事に戸惑っていたリョウですが、次第に女性の欲望に秘められた奥深さに気づいてやりがいを見出していきます。 とにかく松坂桃李のAV男優ばりの演技に度肝を抜かれる作品ですが、人の欲望は果てしなく深く多様であるという興味深いテーマにも注目したいところ。様々に倒錯した性への欲望が描かれるため、R18+の中でも「極めて刺激の強い性愛描写」として指定されています。

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『トレインスポッティング』(1996)

『トレインスポッティング』
©CHANNEL FOUR FILMS/zetaimage

アーヴィン・ウェルシュの同名小説を、ダニー・ボイル監督が映画化。ユアン・マクレガーが麻薬に溺れる若者マーク・レントンを熱演して出世作となった作品で、2017年には20年後のレントンを主人公とした続編『T2 トレインスポッティング』も公開されました。 スコットランドのエディンバラに住むレントンは重度のヘロイン中毒で、友人である映画オタクのシック・ボーイと人の良いスパッドも同じくヘロイン中毒。三人は麻薬を辞めようとして恋愛に飛び込むものの上手くいかず、以前よりも麻薬中毒に陥ってしまいます。 世界的に大ヒットした『トレインスポッティング』ですが、当時はR-18指定で公開。その大きな要因は、若者の麻薬使用と犯罪行為を「クール」に描いている点でしょうか。過度な性愛・暴力描写に加えて、麻薬の乱用とそれを称賛する傾向があることもNGだというわかりやすい例です。

レイティングの意義とは?R指定の意味を知れば映画の見方が変わる

劇場で公開される映画はすべて映画倫理機構の審査を受け、映倫番号を取得します。映画倫理機構は映画界が自主的に設立した第三者機関なのです。 まだ成人していない若年層が映画から受ける影響は大きく、主に傾倒しやすい性・暴力・犯罪描写にR指定が適用されてきました。そんな歴史的な教訓からも、映画界が自ら各年齢層に適切な内容かを審査する制度を設けているわけですね。 レイティングの意義は「青少年の健全な育成」を守ること。なぜこの作品にはR18+指定が?と思うことがあれば、その指定理由を映倫のホームページで確認することもできます。作品のレイティングが気になった時は、ぜひ一度調べてみてください!その意味を知れば、映画の見方が変わってくるかもしれません。