ロンドンのMayfair Hotelでインタビューを決行
ロンドンのMayfair Hotelにてインタビュー。映画界の天才はカナダのモントリオールから今朝飛行機で到着。機内で少々お酒を飲み、時差ボケか二日酔いに手こずりながら、終日ジャーナリストと対談しなければならないそうです。
取材やインタビューがひっきりなしに続いているため、時間も把握できないほど忙しい様子。そして電話でルームサービスを頼もうとしています。
「伝統的なイングリッシュ・ブレックファーストがいいな。スクランブルエッグはウェルダンで。マッシュルームは嫌いだから抜いてもらって、トーストしたブラウンブレッドと濃いめのラテをお願いします。」おどけた様子でこちらを見つめるグザヴィエ。「あっ、待って。やっぱりエスプレッソにする。コーヒーが必要なんで早めにお願いします。じゃないと気絶しそう。」
は僕のテープレコーダがまだ録音中かを確認し、10分しかないインタビューの中質問に答えてくれました。
若き天才監督としてカンヌで絶賛
カナダのモントリオール出身の俳優/映画監督/脚本家であるグザヴィエは、『Mommy/マミー』のプロモーションのため、ロンドンに滞在しています。本作は若干25歳の彼が手掛けた5作目の映画で、第67回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した作品。
グザヴィエは教師の母とエジプト出身の俳優兼ミュージシャンの父マヌエル・タドロスとの間に生まれました。4歳でデビューし、幼少期より子役として映画やテレビ番組に出演していました。そして2009年、彼が20歳の時、自伝的映画でもある『マイ・マザー』で監督デビュー。同作は第62回カンヌ国際映画祭の監督週間で上映されると、8分間ものスタンディングオベーションを受け絶賛されました。
翌年公開された『胸騒ぎの恋人』や3作目『わたしはロランス』もまた、カンヌ国際映画祭のある視点部門で上映され、グザヴィエはカンヌの常連となりました。そして、2014年には『Mommy/マミー』で、カンヌ国際映画祭コンペティション部門で、巨匠ジャン=リュック・ゴダール監督『さらば、愛の言葉よ』と共に審査員特別賞を受賞しています。
『Mommy/マミー』を作ろうと思ったきっかけは?
『Mommy/マミー』は、ADHD(多動性障害)のため情緒も不安定で、一度スイッチが入ると攻撃的な性格になってしまう15歳の息子スティーブを育てる気の強いシングルマザーのダイアンが、息子との生活に右往左往しながらも、隣家に住む女性教師カイラと親しくなったことから、少しずつ日々に変化が訪れるというストーリー。
この映画を作ろうと思ったきっかけを聞いてみると、
僕は映画や僕自身について語ることはあまり好きじゃないんだ。とてもうれしいことだけど、好きじゃない。反抗しているわけでもなければ、全く興味がないわけでもないんだよ。
彼の作品からは、自分の道を貫きたいという強い意思が伝わってきます。
立て続けに作品を作る理由とは?
インタビューで頻繁にされる質問は何かについて聞いてみると、
今までの映画のことや年齢のことかな。彼らが聞かないといけないことは理解しているし、不満を感じない。嫌になるほど何度も聞かれることは逆に価値のあることじゃないかな。
とおどけた様子で答えてくれました。
また、遊び盛りの年にどうして立て続けに作品を作れるのかについては、以下のように語っています。
心配はいらないよ。まだ楽しんでいるからね。僕がやるべきことは仕事だなんて思っていない。キャリアについて考えたこともなければ、このチャンスをものにしなきゃとも思わない。ただ自分を表現したいだけなんだよ、マドンナみたいにね。
自身や作品が誹謗中傷を受けることについて
The Hollywood Reporterは『トム・アット・ザ・ファーム』をナルシスト映画と呼びましたが、これについてグザヴィエは、「なら僕のナルシストのお尻にキスすれば」とツイートしています。10万人を超える彼のフォロアーはこれに大熱狂。彼のような若くして成功した人はそんなマイナス意見など気にも止めないのでしょう。
ウッディ・アレンのように、グザヴィエは自身の虚栄心や不安、虚勢を映画に描きたいのです。「僕は自分が好きなことや理解していること、自分に関係していることをクリエイトしたい。」と語る彼はどこまでも寛大で、ネガティブな意見をぶつけられても大して気にしていない様子。
続けて「僕に対するレッテルや誹謗中傷が嫌いというわけじゃない。どの記事にも”調子に乗った子供"って書かれるけど、それを意味のあるものとして受け止めているんだ」と語ってくれました。
どうして"調子に乗った子供"と言われるのでしょうか?それは、初めてカンヌに行ったとき、ナーバスになっていた彼は虚勢を張ることで不安を抑えようとしていたのですが、反ってその態度が鼻に突くと一部の批評家から反感を買ってしまうはめに。
その強がりはもうなくなったか聞いてみると、「不安になることはもうないかな。けど僕のアイデア、選択、行動、決断全てを疑っている。人を不快にさせてしまうことを恐れなければ、物事を達成する能力は疑わないと思う」と答えてくれました。
次回作は初の英語作品
ドアがノックされ、ウェイトレスがシルバードームのカバーを台車を引いて食事を持ってきました。「入ってもいいですか?」とウェイトレスが尋ねると、「もちろん。僕の朝食だからね」と茶目っ気たっぷりに答えるグザヴィエ。
彼の次回作は、初の英語作品『The Death and Life of John F. Donovan(原題)』で、架空の人気俳優ジョン・F・ドノバンの人生がゴシップ騒動により暗転するさまを描く風刺劇だそうです。内容はスーパーヒーロー映画で有名になったドノバンと、11歳のファンの私的な書簡が流出し、あるゴシップ記者がドノバンを児童性愛者のように仕立て上げるというもの。
そのゴシップ記者役をジェシカ・チャステインが演じるとのことですが、ジェシカはカンヌで『Mommy/マミー』を鑑賞し、ツイッターを通して直接彼にコンタクトを取りました。それ以来2人は友人関係だそうです。
この2年間数名の女優たちと一緒に働きたいと思っていたところに、ジェシカが現れた。彼女から連絡をくれたのでスムーズにやり取りすることができたよ。
インタビューの時間は終了し、僕が立ち去ろうとすると、「11分11秒だ。何かお願い事をしないと」とグザヴィエが話かけてくれました。「君の願いことは何か」と質問すると、「それは秘密だよ。言ったら叶わないからね。君は願い事した?」彼の質問に僕がうなずくと、「叶うといいね。」と言いながら彼は笑顔でスクランブルエッグの方に戻っていきました。