2017年7月6日更新

映画『そこのみにて光輝く』のあらすじ・ネタバレ・感想・キャスト

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そこのみにて光り輝く

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数々の映画賞を獲得した『そこのみにて光輝く』

『そこのみにて光輝く』は2014年に公開された日本映画。80年代の函館を舞台に、過酷な生活状況の中で女という手段を使って家族を養う大城千夏とそれを知りつつ千夏に惹かれる男・佐藤達夫との愛を描いた作品です。 モントリオール世界映画祭では最優秀賞監督賞を受賞。その他、日本アカデミー賞、毎日映画コンクールをはじめ、国内でも数々の映画賞を受賞し、高い評価を得ました。

原作小説『そこのみにて光輝く』

1990年に41歳の若さで自殺した不遇の作家・佐藤泰志(さとうやすし)による小説が原作となっています。1985年に「文藝」で掲載され、1989年には書き下ろしエピソードを加え書籍が出版されました。小説は三島由起夫賞候補には挙りましたが、受賞には至りませんでした。

映画版のあらすじ

あることがきっかけで仕事を辞めた佐藤達夫(綾野剛)は、毎日酒とパチンコに溺れあてもなく生活している男。パチンコ屋に行ったある日、そこで粗野で人懐っこい青年・大城拓児(菅田将暉)に出会い家に招かれることとなります。拓児の家に招かれた達夫は、海辺の小さなバラックに一家4人が住むという非常に貧しい環境に驚きますが、家にいた大城の姉・千夏(池脇千鶴)に一目惚れをします。 しかし、千夏には家族を養う為に愛人生活、そして売春をしているという大きな秘密があり、それを知った達夫はなんとか千夏が真っ当な生活を送れるよう奔走しているうちに、お互い心惹かれ結ばれます。

結末【ネタバレ】

達夫は千夏と家庭を持つ事を夢見ますが、元愛人の中島が千夏を侮辱したことがきっかけで、拓児が中島を襲い事態は悪い方向へと急変。 絶望した千夏は自分の家庭環境と過酷な生活を呪い、寝たきりの父親を殺そうとします。ぎりぎりのところで達夫が千夏を止め、そんな二人を朝焼けのあたたかな日差しが優しく包んで映画は終わります。

メインキャスト

佐藤達夫/綾野剛

綾野剛(あやの ごう)は岐阜県出身、1982年1月26日生まれの俳優です。2003年テレビドラマ『仮面ライダー555』で俳優をデビューを果たします。2012年NHK連続テレビ小説『カーネーション』に出演したことがきっかけで知名度が上がり、その後は映画・テレビドラマで主役、または主役級の役を演じることが多くなりました。 『そこのみにて光輝く』では主人公の佐藤達夫を演じ、毎日映画コンクールで主演男優賞を獲得しました。

大城千夏/池脇千鶴

池脇千鶴(いけわき ちづる)は大阪府出身、1981年11月21日生まれの女優です。 1997年に「三井のリハウス」のハウスガールオーディションでグランプリに輝き、芸能界デビュー。1999年『大阪物語』では映画初出演にも関わらず毎日映画コンクールで新人賞を受賞し、女優としての才能が開花します。その後も、実力派俳優として多くのドラマ、映画で活躍中です。 『そこのみにて光輝く』では愛人生活、売春で家族を養う大城千夏を演じました。苦境ながらも家族のために生きていかなければならない諦念を表現した見事な演技力で女優としても再評価され、本作は池脇千鶴の代表作とも言われています。

大城拓児/菅田将暉

菅田将暉(すだ まさき)は大阪府出身、1993年2月21日生まれの俳優です。2009年『仮面ライダーW』にて俳優デビューを果たし、そのベビーフェイスで若手俳優として人気を集めました。 2013年に主演を務めた『共喰い』で日本アカデミー新人賞、翌年『そこのみにて光輝く』で千夏の弟・拓児を演じ、高崎映画祭にて助演男優賞を獲得。それをきっかけに実力派の若手俳優として注目を浴びています。

『そこのみにて光輝く』の感想

『そこのみにて光輝く』で描かれる世界観に圧倒された

HMworldtraveller とても深い情感にあふれていた。社会の底辺でもがく姿、受け入れるしかない辛い現実、茫然自失な表情などが生々しくて言いようの無い気持ちになった。近親者の介護、貧困、前科、不幸な事故など、何かをきっかけに不遇な環境に転落したり人生の道を踏みはずしたりした者はそこから這い出せないのだろうか。 この映画はその心情密度の高さのせいか終始重苦しい。どこにも持っていきようがないものを内に溜め込み、それが蓄積され心の奥深くに沈殿していくような感じ。淀みが汗や生活臭と共に画面から伝わってくるような空気を持っている。 そして空。達夫や千夏の気持ちを映し出したようなどんより曇った重たい空を見続けてきた目には、最後のシーンがとても眩しくて、どうにもならない状況や絶望感の中に垣間見えた小さいけれど確かな光に救われる思いがした。 この映画は、ラストシーン以外にも光と影の使い方がとても印象的。暗い中で2人が体を重ねるシーンは肌が艶めいたように光って、剥き出しの生と性の切なさを感じると同時に、まるで暗闇の中 見えない出口を2人手探りで探し求めているようでもありました。 何度も観たい映画ではないけれど、確かな余韻が尾を引く この感じ、しばらくすると吸い込まれるようにまた観てしまう気がする。 池脇千鶴の演技が良かった。主演3人は皆素晴らしかったけれど、中でも池脇千鶴の役は彼女以外のキャスティングは考えられないと思った。

俳優陣の存在感がすごい

igagurichan 夏の北海道が舞台なのに、暗い。重い。ジメジメとした閉鎖された世界で登場人物の行き場のない、息苦しさが映像から伝わってくる。退廃的で全てをあきらめている感じなのに、皆、ひとすじの光にしがみつこうとしている。未来を夢見みて笑顔になると、すぐさまどん底に落とされる不条理。恋愛映画でもあり、ディープな家族愛を描いた作品でもあります。 主人公の綾野剛、良かったです。でもこんな事を言うとファンの人を不快にするかもしれないけど、彼の役は彼じゃなくても良かった気がします。池脇千鶴の圧倒的な存在感。最後はいつものちーちゃん笑顔。あと本当の主役はジャケットにも写っていない弟役の菅田将暉でしょう。凄かった…。彼の演技から目が離せませんでした。16歳の頃の仮面ライダー役からずっと成長を追ってるけど、すごい役者さんになったもんだなぁ…将来が楽しみ。すっかり親戚のおばちゃん目線で感慨深かったです笑

ヘビーすぎる内容にこんな感想も

magro  あまりにもへヴィーで救いのない話なので見ていて正直苦しいけど、池脇千鶴のおっぱいがきれいなのでそれだけで五億点。いつの間にか色気のある、いい女優さんになりました。主役級3人の演技は本当に素晴らしかった。高橋和也の「地方のチンケな小物」感も良かった。ものすごい権力者でもなんでもないのに、主人公たちにとっては彼ですら力の及ばない存在なのですね。日本の貧困層というか、ドン底の貧乏生活描写がリアリティに満ちててキツかった。こいつらここから抜け出せなさそう感も。函館が舞台というのもあって、道民の自分にはかなりドスンときました。その分、ラストシーンの美しさがあまりにも際立つわけですが。見終わった後も重苦しいし、すっきりする映画ではないですが、今年見ておいてよかった一本です。  関係ないけど、綾野剛も菅田将暉も平成ライダー出身なんですね。平成ライダーはコンスタントにいい役者さんを輩出しているけど、特撮戦隊ものはそうでもない気がします。選考過程なのか、仕事の仕方なのか、何か差があるのかもしれません。

監督は呉美保

呉美保(お みぽ)は三重県出身、1977年3月14日生まれの監督です。 大阪芸術大学在籍中に痴呆の祖父の姿を撮影した短編で「星の降る里芦別映画学校」で審査員賞を受賞。主宰を務めていた監督・大林宣彦に直訴し、卒業後、大林の事務所「PSC」に入社。そこでの撮影現場経験を経て、映画監督になる決意をします。 「PSC」退社後の2006年『酒井家のしあわせ』で長編映画監督デビュー。2012年には2作目『オカンの嫁入り』で新藤兼人賞金賞を受賞し、若手女性監督として注目を浴びます。『そこのみにて光輝く』は呉監督の3作目の作品で、国内外の監督賞を受賞、アカデミー賞外国映画賞部門への出品を果たすなどの快挙を遂げました。

監督のラブシーンへのこだわり

劇中で、達夫と千夏のラブシーンが描かれますが監督はリアリティーを追求するためにあえて生生しい音を出す様に演出をしました。
裸だと服にマイクを付けられないから、長いガンマイクを遠くから伸ばして音を拾っています。静かなところで撮影しているから実際に音が響くんです。綾野さんと池脇さんには『いやらしい音を出してください』というお願いもしました。女優さんを脱がすためだけに作られた映画や、話の筋もなく突然脱ぎだすような作品は理解できなくて。ちゃんとストーリーがあって、愛があって、リアリティがある撮り方をしたいんです。シーツで体を不自然に隠すようなのはダメ。あと最近の映画では男性が女性のバストトップを舐めるカットは少ないんですが、今回はそこも『ちゃんと舐めてください』とお願いしましたね
引用:natalie.mu
とこだわりを語っています。

『そこのみにて光輝く』の輝かしい受賞歴

達夫と千夏の愛を掴もうともがく姿は多くの観客の胸を打ち、高い評価を得ました。それを裏付けるように、第38回モントリオール世界映画際で最優秀監督賞を受賞。 国内でも、第88回キネマ旬報ベスト・テンにて監督賞、第69回毎日映画コンクールでは日本映画優秀賞を受賞するなど、数々の映画賞を受賞しました。また、主演を務めた綾野剛、池脇千鶴もこの年、国内の俳優賞を総なめにしました。

その他のキャスト

中島/高橋和也

高橋和也(たかはし かずや)は東京都出身、1969年5月20日生まれの俳優、シンガーソングライターです。中学1年生でジャニーズ事務所に所属し、「男闘呼組」のアイドルグループとしてデビュー。1993年にグループは解散するものの、俳優、声優として活動しています。 『そこのみにて光輝く』では千夏の愛人・中島をふてぶてしく演じたことが評価され、高崎映画祭では最優秀助演男優賞を受賞しました。

松本/火野正平

火野正平(ひのしょうへい)は東京都出身、1949年5月30日生まれの俳優です。脇役として多くのテレビドラマに出演していますが、子役からテレビドラマの世界で生きてきたベテラン俳優です。2011年には「にっぽん縦断 こころ旅」でパーソナリティーを務めるなど、お茶の間の顔として親しまれています。 『そこのみにて光輝く』では、達夫を気にかける上司・松本を演じました。