2020年4月5日更新

おすすめ台湾映画傑作11選 台湾出身の名優も紹介

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「台湾ニューシネマ」に加え、新たな才能に富んだ台湾映画

サスペンスに戦記もの、切ない青春ドラマなど、バラエティに富んだ台湾映画。ここではエドワード・ヤンやホウ・シャオシェンらによる「台湾ニューシネマ」作品や、その中でも近年改めて日本公開が実現したものを中心にピックアップしていきます。 台湾ニューシネマとは、1980年代から90年代にかけて起こった台湾映画界に新潮流をもたらした運動。商業的・国策的なものを排し、台湾社会をテーマに深く掘り下げた、リアリズムと芸術性の高い作風が特徴です。 さらに、台湾ニューシネマ以降の2000年代の台湾映画も取り上げ、近年の作品の傾向や作風なども考察。最後に注目の台湾出身の俳優を紹介していますので、お楽しみに!

『幸福路のチー』(2017年製作)

台湾現代史を背景に台北の「幸福路」で育った女性の人生を描くアニメ映画

東京アニメアワードフェスティバル2018で長編グランプリに輝いたアニメ映画。台湾現代史を背景に、一人の女性が人生を見つめ直す姿を描いた作品です。『藍色夏恋』(2002年)でデビューした台湾の人気女優グイ・ルンメイが主人公チーの声を担当しています。 台北郊外の田舎町「幸福路」で生まれ育ち、学生運動を経験し、新聞記者となった後に渡米してアメリカ人と結婚したリン・スー・チー。祖母が亡くなったため久しぶりに帰郷したチーは、幼少期の思い出を振り返りつつ、自身の人生や家族について思い巡らせていきます。 実在する町「幸福路」の隣町で育った監督ソン・シンインの半自伝的作品である本作。学生運動や戒厳令解除で民主化に向かった現代の台湾社会を映し出し、「幸福路」で本当の幸せとは何かを考えるチーの姿に深い思いが込められています。

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『あの頃、君を追いかけた』(2011年製作)

多感な高校生の甘酸っぱいラブストーリー

台湾の作家ギデンズ・コーが、自伝的インターネット小説を自ら監督・脚本を務めて映画化した青春映画。台湾と香港で大ヒットを記録し、2018年には日本でも山田裕貴主演のリメイク版が公開されました。 台湾中西部の町・彰化で高校に通うコートンは、悪友たちとつるんで度々担任教師を困らせていました。コートンは優等生の女子生徒シェンの後ろの席に座らせられ、常に監視されることに。お節介なシェンを煩わしく思いながらも、コートンは次第に好意を寄せるようになります。 イタズラ好きなコートンことコー・チントン役を、本作が映画初出演となる歌手クー・チェンドン、優等生シェン・チアイー役をミシェル・チェンが演じました。サウンドトラックにはクー・チェンドンが歌う挿入歌「寂寞的咖啡因」も収録されています。

『台北ストーリー』(1985年製作)

エドワード・ヤン監督による長編2作目が没後10年を機に日本劇場公開

エドワード・ヤン監督による1985年の長編映画2作目で、ホウ・シャオシェン監督が製作・脚本・主演を務めた台湾ニューシネマ初期の作品。日本ではエドワード・ヤン監督の没後10年である2017年に、初めて劇場公開が実現しました。 経済成長を遂げる中で変わりつつある1980年代の台北。元野球選手のアリョンは家業の紡績業を継いだものの、恋人のアジンはアメリカ移住を考えていました。過去の栄光を忘れられないアリョンと過去を捨てようとするアジンの思いはすれ違っていきます。 ヒロインのアジン役を務め、主題歌も担当した歌手ツァイ・チンは、本作公開の年にエドワード・ヤン監督と結婚しました。台湾ニューシネマを担った映画人ウー・ニェンチェンやクー・イーチェンも俳優として出演しています。

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『私の少女時代-OUR TIMES-』(2015年製作)

アンディ・ラウが製作総指揮を務めた青春ラブコメディ

台湾のテレビドラマ『蘭陵王』を手がけたフランキー・チェンが監督を務めた青春ラブコメディ。「インファナル・アフェア」で知られる香港の人気俳優アンディ・ラウが製作総指揮を務めています。 リン・チェンシンは仕事も恋も上手くいっていない平凡な会社員。ふと昔よく聴いていたアンディ・ラウの曲に触れ、イケメン男子のフェイファンに片思いしていた高校時代を思い出します。当時、不良男子のタイユィと手を組んでフェイファンと彼女を別れさせる作戦を思い付いたのですが……。 歌手としても活動しているアンディ・ラウですが、劇中ではチェンシンの高校時代のアイドルとして登場。クライマックスでは台北で開催されるコンサートに本人役で出演しています。

「セデック・バレ」二部作(2011年製作)

台湾の先住民族による抗日暴動を描いた歴史大作

『海角七号 君想う、国境の南』のウェイ・ダーション監督による、日本統治下の台湾で起こった原住民による抗日暴動「霧社事件」を描いた歴史大作二部作。「第一部 太陽旗」と「第二部 虹の橋」があります。安藤政信、木村祐一など日本人俳優が参加し、日本では前後編ともに2013年に公開されました。 日清戦争後、中国から台湾を割譲された日本は台湾へ進駐。台湾中部の山岳部に暮らしていたセデック族の村にも日本統治による文明化の波が襲い、狩猟民族としての誇りは奪われました。警官への暴行事件をきっかけに、マヘボ社の頭目モーナ・ルダオのもと武装蜂起を決意します。 霧社事件とは、1930年(昭和5年)に霧社セデック族が起こした抗日暴動。長年の差別待遇や低賃金の強制労働への不満が爆発した結果、同年10月27日に行われた霧社地区の運動会での武装蜂起へ発展しました。民族の誇りをかけた戦いに、その独特な死生観にただひたすら圧倒されます。

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『ヤンヤン 夏の想い出』(2000年製作)

8歳の少年の目を通して語られる、エドワード・ヤン監督の家族劇

エドワード・ヤン監督による家族ドラマで、少年ヤンヤンの視点から家族の苦悩や愛情が描かれています。日本からイッセー尾形が出演し、日本の予告編を岩井俊二が演出していることも話題になりました。 ヤンヤンは台北のマンションに住む少年。家族は祖母と父、母、そして姉の5人で、ごく普通の生活を送っていました。しかし、叔父の結婚式が行われた夜に祖母が突然倒れ、家族がそれぞれ抱える様々な悩みが噴出し始めます。 本作は2000年のカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞し、日本でも同年に公開されていますが、実は台湾で劇場公開されたのは2017年になってから。2007年に亡くなったエドワード・ヤン監督の事実上の遺作となっています。

『憂鬱な楽園』(1996年製作)

名匠ホウ・シャオシェン監督による青春ロードムービー

ホウ・シャオシェン監督による青春ロードムービーで、日本の映画プロデューサーである奥山和由が製作総指揮に名を連ねています。同監督の前作『好男好女』(1995年)に出演したガオ・ジェ、リン・チャン、伊能静の3人を再び起用しています。 台北でその日暮らしをするガオ(ガオ・ジェ)は、いずれ上海に店を出すと嘯く中年の下っ端ヤクザ。兄貴分のシイからある商売話を持ちかけられ、舎弟ピィエン(リン・チャン)とその恋人マーホァ(伊能静)と3人で地方の町・平渓へ向かいますが……。 ホウ・シャオシェン監督が前作での3人の関係性の面白さに着目して制作したという本作。台北から田舎町の平渓、そして遥か南の町・嘉義まで3人が流されるまま旅する様子を、南国ムードにノワール風要素を配した不思議な空気感で描いています。

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『牯嶺街少年殺人事件』(1991年製作)

幻とされていたエドワード・ヤン監督の青春ドラマが復活公開

1961年に実際に起きた少年による少女殺傷事件をモチーフにしたエドワード・ヤン監督による青春群像劇。公開後は配給元などの倒産で上映もソフト化も難しい状況でしたが、2016年に4Kレストア・デジタルリマスター版が製作され、翌年には日本でも公開されました。 建国中学の夜間部に入学した小四こと張震は、外省人の両親を持ち、3人の兄姉と1人の妹と台北に住んでいました。夜間部は不良グループが縄張り争いをしており、小四も彼らと関わるうち、素行が悪くなっていきます。そして、不良グループのリーダーであるハニーの彼女・小明に出会い、惹かれていきますが……。 小四を演じたのは本作が俳優デビューとなったチャン・チェン(張震)で、役名も同じ。等身大の中学生を自然に演じ、圧倒的な存在感を残しました。戒厳令下の50年代の台北を舞台にし、中国から台湾に移住した外省人と原住の内省人との争いや、国民党による赤狩りなど、不穏な時代背景も映しています。

『恐怖分子』(1986年製作)

1本のいたずら電話がもたらした悪夢のような悲劇

エドワード・ヤン監督の長編映画3作目で、80年代の台北を舞台にした群像劇。日本で劇場公開されたのは、製作から10年後の1996年でした。 不良少女シューアンがかけた1本のいたずら電話が、それまで互いに係わりのなかった人々の間に不思議なつながりを生んでいきます。カメラマンや作家、医師、刑事など職業も年齢もバラバラ。それがやがて、ある悲劇を巻き起こしていきます。 都会に住む人間の心に潜む孤独を浮き彫りにし、その不条理を描いた作品で、1987年には中華圏を代表する映画賞・金馬奨で最優秀作品賞を受賞しています。日本ではさらに2015年にデジタルリマスター版も公開されました。

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『非情城市』(1989年製作)

日本統治から解放された台湾社会を描く歴史ドラマ

ホウ・シャオシェン監督による歴史ドラマで、日本統治から解放された後の激動の4年間をある一家の姿を通して描いています。ベネチア映画祭で金獅子賞を受賞し、台湾ニューシネマ作品の国際的評価を一気に押し上げました。 船問屋の林家では家長・阿祿のもと長男の文雄が跡を継ぎ、四男の文清は写真館を営み、次男は軍医で南洋に、三男は通訳として徴用されていました。1945年の日本敗戦により51年間の日本統治から解放されたものの、1947年には中国国民党による民衆弾圧「二・二八事件」が勃発。林家も否応なく激動の時代の波に飲み込まれていきます。 林家の四男・文清を演じたのは香港の人気俳優トニー・レオン。台湾語を話せなかったため、ろうあ者役になったともいわれています。台湾社会の暗部だった二・二八事件を描き、戒厳令解除の2年後に公開したことも大きな注目を集めました。

『侠女』(1971年製作)

カンヌ国際映画祭で高評価を受けた剣術アクション

香港・台湾製作の武侠映画二部作で、台湾では第一部「チンルー砦の戦い」が1970年、第二部「最後の法力」が1971年に公開されました。香港の武侠映画で名を馳せたキン・フーが監督を務め、カンヌ国際映画祭で高等技術委員会グランプリを受賞しています。 原作となったのは、中国の伝奇小説集「聊斎志異」の一編「侠女」。魏忠賢たち宦官の陰謀によって処刑された東林党の忠臣・楊漣の娘である楊慧貞は、チンルー砦に身を隠して父の復讐を誓います。 後に『さらば、わが愛 覇王別姫』(1994年)で製作総指揮を務め、プロデューサーとしても成功したシー・フォンが主人公の楊慧貞を演じました。有名な竹林での戦闘シーンなど、革新的なアクションが高評価を受けています。

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台湾の有名俳優を紹介

クー・チェンドン

大ヒット青春映画『あの頃、君を追いかけた』で主演を務め、一躍人気俳優となったクー・チェンドン。1991年6月18日生まれの台湾人俳優で、アルバム「有話直説」で歌手デビューも飾っています。 2014年に北京で、ジャッキー・チェンの息子ジェイシー・チェンと薬物使用容疑で逮捕されましたが、14日間の拘留の後、涙ながらに謝罪。2016年の主演映画『再見瓦城』で復帰し、同作はベネチア国際映画祭でヨーロッパ映画批評家協会最優秀作品賞を受賞しました。

チャン・チェン

エドワード・ヤン監督の『牯嶺街少年殺人事件』で映画デビューを飾ったチャン・チェンは、1976年10月14日生まれの台湾人俳優。デビュー後は学業に専念し、復帰後の1996年にはエドワード・ヤン監督の『カップルズ』で主演を務めています。 兵役のため再度芸能界を離れましたが、アン・リー監督の『グリーン・デスティニー』(2000年)やジョン・ウー監督の「レッドクリフ」シリーズなど著名な監督とキャリアを重ねました。2014年に『ブレイド・マスター』、2015年にはホウ・シャオシェン監督の『黒衣の刺客』で主演を務め、武侠アクションのジャンルで活躍しています。

ビビアン・ソン

ギデンズ・コーの小説を映画化した『等一個人珈琲』(2014年)でデビューしたビビアン・ソン。1992年10月21日生まれの台湾出身の女優で、主演作『私の少女時代-OUR TIMES-』で大ブレイクを果たしました。 2017年には映画『帶我去月球』で歌手を目指す女子高生・李恩佩を演じ、張雨生の90年代ヒット曲「帶我去月球」もカバーしました。2018年の主演作『西虹市首富』は中国でも大ヒットし、一気にアジア圏での知名度を上げています。

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台湾ニューシネマからさらに新しい台湾映画へ

80年代から90年代に台湾映画界を盛り上げた台湾ニューシネマの波。ホウ・シャオシェンやエドワード・ヤン監督など名匠を輩出し、国際的にも高く評価される作品群を生み出してきました。 日清戦争後に日本による統治が始まり、終戦後は中国大陸から中共内戦で破れた国民党政府が移転し、国際社会では中華民国という国としては未承認のままという複雑な歴史を持つ台湾。台湾ニューシネマはそんな台湾社会を様々なジャンルと手法で作品に映し出してきました。 そして時代は21世紀に突入。台湾アニメ界の新星『幸福路のチー』や人気作家ギデンズ・コー原作の映画化作品など、さらに新しい台湾映画の潮流も生まれています。これからの台湾映画界にも要注目ですね!