2017年7月6日更新

カンヌ対Netflix!IT企業が仕掛ける映画革命

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Netflixオリジナル映画『BLAME!』(ブラム)
©弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

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大きな影響力を持ち始めたNetflix

2015年9月より日本でもサービスを開始したストリーミング配信サービスであるNetflix(ネットフリックス)。同サービスは世界190カ国で展開、会員数は1億人を越えており、世界最大級の規模を誇っています。 映画やドラマが見放題であるストリーミング配信サービスはNetflixをはじめとして、Amazonプライムビデオ、Hulu、dTVなど数多く存在しており、近年競争が激化しています。 そんな中でNetfllixは以前より一貫して自社オリジナルの作品にこだわり、人気映画監督であるデヴィッド・フィンチャーを起用したドラマ『ハウス・オブ・カード』、日本向けには人気番組である『テラスハウス』の続編をネット独占配信するなど精力的にオリジナルドラマを製作してきました。

映画もオリジナル製作へ

映画『BLAME!』(ブラム)
©弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

「ここでしか見られない」コンテンツに力を入れている同サービスが、さらに近年力を入れ始めたのがオリジナル映画です。ドラマと同様に質の高いオリジナル企画の映画作品の製作に力を入れ、複数の映画プロジェクトを開始しています。 日本において初めてのオリジナル映画作品となったのが、『BLAME!』(ブラム)という作品です。 『BLAME!』はセルルックCGと呼ばれる、あえて手書きのアニメのように見せる手法で作られたCGアニメーション映画。原作は講談社の漫画雑誌「アフタヌーン」で1997年から2003年まで連載されていた同名の漫画で、原作者の弐瓶勉は『シドニアの騎士』でも知られています。 本作は技術的にも挑戦していることがわかりますが、特筆すべきは上映方法です。映画館での公開と同時に、Netflix上でも配信を開始するという取り組みを行ったのです。通常だとネット配信やDVDの発売は上映終了から半年以上を経て行われることを考えると、本作は異例といえるでしょう。

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映画館の影響力の低下による映画業界の変化

映画『BLAME!』(ブラム)
©弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

映画ビジネスでは、様々なマネタイズポイントが存在します。時系列順に並べた主なものが下記の4点です。 ①映画館での上映 ②DVD販売・レンタル ③テレビ放映権 ④見放題サービスへの配信 これまでは①映画館での上映による収益比率が高かったため、映画館が重視されそれ以外の視聴方法が非常に限られていました。映画館上映している時に、DVDが発売されてしまっては、映画館への客足が減ってしまうからです。 しかし、映画館の来場者数は近年横ばいとなり、代わりにインターネットで動画を観られるサービスが数多く登場しています。相対的に映画館の影響力は小さくなり、客足減少に対する対抗策としてミュージシャンのライブを劇場の大画面・大音量で生中継するなど、映画を鑑賞するという目的以外での生き残り策を模索しています。 そして映画館に代わって映画業界において存在感を示し始めたのがNetfixなのです。以前であれば、映画館での上映とインターネット配信を同時に行うなどということは、映画館は決して認めなかったでしょう。 もちろん上映する映画館の規模はまだ限られていますが、今回の『BLAME!』の同時配信は映画業界の大きな変化を象徴していると言えるでしょう。

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カンヌも危機感!Netflixを映画祭から締め出し

この変化は映画館だけにとどまりません。カンヌ国際映画祭までもが、2018年以降はNetflix作品は審査の対象外とする意向を示したのです。主催者が「フランスの映画館で公開されない映画作品は審査の対象とするべきはない」とする考えを表明し、これがNetflixの締め出しが狙いではないかと見られています。 これもNetflixが潤沢な資金力を背景に次々とオリジナル映画を製作し、次第に映画祭の中心的な存在となってしまうことを危惧しているからと言えるでしょう。

Netflixは映画業界の「敵」なのか

わずか数年で急成長し、世界規模で映画業界に強い影響力を示すまでになったNetflix。映画館での上映とネット配信を同時に行うなど映画業界との共存の道が見えたかのようにも捉えられますが、一方で映画祭との溝は深まるばかりです。 映画を観る方法として、1億人に支持されているNetflixははたして映画業界の「敵」なのか。今後もciatr[シアター]では、Netflixを始めとする映画ビジネスの現在に迫っていきます。 ciatr特集企画『映画ビジネス最前線』の次回掲載は6月中旬を予定しています。