2018年8月14日更新

傑作香港映画『メイド・イン・ホンコン』の魅力を紹介!初公開当時のエピソードも!

©Teamwork Production House Ltd./Nicetop Independent Ltd

1997年。香港の中国返還を迎えた年に作られた映画『メイド・イン・ホンコン』。貧困や返還にどこか不安な香港を舞台に描かれた名作が20年の歳月を経て、2017年4Kレストア・デジタルリマスター版として蘇りました。そんな映画『メイド・イン・ホンコン』の魅力を紹介します!

珠玉の名作・映画『メイド・イン・ホンコン』とは?

1997年、香港が中国へ返還されたその年制作された映画『メイド・イン・ホンコン』。揺れ動く社会情勢に人々が不安を抱える中、そこに暮らす若者たちの閉塞感や苛立ちを描いた本作は当時、香港電影金像奨にて、グランプリ・監督賞・新人俳優賞の3冠に輝きました。 監督のフルーツ・チャンは無名の新人監督で、知り合いからかき集めた制作費と製作総指揮を務めたアンディ・ラウから譲り受けた4万フィートの期限切れのフィルムを手にこの映画を制作。演技経験のない役者たちとたった5人のスタッフだったのにも関わらず、異例の大ヒットを記録した奇跡の映画なのです。 その『メイド・イン・ホンコン』がこのたび2017年、4Kレストア・デジタルリマスター版として蘇りました。今回はこの珠玉の名作を紹介していきます!

『メイド・イン・ホンコン』のあらすじ

メイド・イン・ホンコン/香港製造 4Kレストア・デジタルリマスター版
©Teamwork Production House Ltd./Nicetop Independent Ltd

1997年、中国への返還を目前に控えた香港。約1世紀に渡りイギリス領であった香港にとって中国に返還されることにより、人々は今までのような自由な生活を送ることができなくなることや中国政府への恐怖に怯えていたのです。 そんな情勢の中、主人公の青年・チャウは中学を中退し、子分のロンと借金取りの手伝いをするしかありませんでした。父親は愛人を囲い子供まで作り家を出ていったきり、パート務めの母親と二人で団地暮らしの日々。 チャウはロンを連れていつものように取り立てにいった先で、同じような境遇の16歳の少女・ペンに出会います。ある日、ロンが自殺した少女の遺書を偶然手にしたことをきっかけに3人の不思議な友情が芽生えていくことに。 ロンに対する執拗ないじめ、チャウの母親の失踪、ペンの両親の多額の借金……。どうすることもできない苛立ちを抱えながら次第にペンに心惹かれ始めたチャウは、彼女の命が残り僅かであることを知り、彼女を救うため生まれて初めて銃を手にするのですが……。

香港が生んだ名監督、フルーツ・チャン

メイド・イン・ホンコン/香港製造 4Kレストア・デジタルリマスター版
©Teamwork Production House Ltd./Nicetop Independent Ltd

フルーツ・チャン監督は1959年、中国・広東省に生まれました。香港に移住し、1981年から香港フィルムカルチャーセンターで学び、1984年にゴールデンハーヴェストに入社。 1991年の映画『大閙廣昌隆』で監督デビューを果たしますが、1994年に独立。映画『メイド・イン・ホンコン』の脚本を書き始め、なんとか資金をかき集め制作にこぎつけます。 本作の制作後、映画『花火降る夏』、映画『リトル・チュン』を制作。この3作を合わせて「香港返還三部作」と呼ばれています。2009年には、中田秀夫監督の映画『女優霊』をリメイクした映画『THE JOYUREI 女優霊』でハリウッド進出を果たしました。 フルーツ・チャン監督は自身も主人公たちと同じような団地で育ち、普通なら忘れ去られてしまうような人々に焦点を当てて映画を作りました。香港の中国返還という大きな節目に、そのやるせなさがこの映画を作るきっかけとなったと、1999年公開時のパンフレット中にある監督インタビューで語っています。 リアルな実感が作らせた映画だからこそ、香港の人々のみならず世界中の人々に大きな衝撃を与えたに違いありません。

夢のホンコンドリームを手にした若き才能、サム・リー

メイド・イン・ホンコン/香港製造 4Kレストア・デジタルリマスター版
©Teamwork Production House Ltd./Nicetop Independent Ltd

サム・リーは1975年9月27日、香港で生まれました。1997年に街中でスケボーに乗っているところをフルーツ・チャン監督にスカウトされ、『メイド・イン・ホンコン』にて俳優デビュー。 本作で、第17回香港電影金像奨最優秀新人賞を受賞しました。その後も映画に出演し香港の次世代スターとして活躍する一方、モデルやラッパー、DJと幅広く活躍していきます。 日本では、2001年の映画『無問題2』や2002年の映画『ピンポン』などに出演し、知名度を上げました。映画『ミッドナイト・アフター』などにも出演し、フルーツ・チャン監督作品における常連の俳優として知られます。 その他のキャストもサム・リー同様、この作品で初めて演技を経験したキャストばかりです。そんなところを微塵も感じさせないキャストとその演出の素晴らしさが本作の魅力のひとつですね!

日本初公開時の『メイド・イン・ホンコン』

日本での映画『メイド・イン・ホンコン』の公開は1999年6月12日。制作から約2年が経過していました。配給は1989年に清算されてしまいましたが、徳間書店のグループの会社で中国映画の配給をしていた東光徳間です。 この配給が決まる前に日本での上映をしていたのが、ぴあフィルムフェスティバルでの特別上映でした。その上映は応募作品とは別に海外で評価が高い作品を紹介しており、その中の1本が映画『メイド・イン・ホンコン』だったと記憶しています。 私も20年前のその会場で本作を初めて鑑賞し非常に心動かされました。そこには、配給会社や脚本家など映画関係者も来場しており、業界内でも注目されていたようです。 映画『メイド・イン・ホンコン』は、これまでの香港映画のジャッキー・チェンのような娯楽映画やウォン・カーウァイ監督のオシャレな映画とは明らかに違っていました。若者たちの直面している絶望から生まれた映画『メイド・イン・ホンコン』に、会場にいた人たちは香港映画の新しい風を感じ、最高に輝く青春映画に出会えたのでした。

『メイド・イン・ホンコン』の魅力とは?

映画『メイド・イン・ホンコン』は多くの人たちに愛される映画となりました。それは様々な要因がうまく重なり合っているからではないでしょうか? 期限切れのフィルムによって色の設計が不可能の中、照明だけの工夫であの独特な雰囲気が偶然出せたこと。オールロケにより香港の街並みの空気感がリアルで非常に映画的に映ったこと。 予算の関係で衣装はほとんど自前だったのにも関わらず、各人の個性を非常によく表現しているとともにそのセンスのよさが窺えること。特にサム・リーの衣装は、ファッション誌から抜け出してきたような完成度がありました。 また、2ヶ月によるリハーサルではキャストに設定だけ与え自分たちの言葉でしゃべらせ、それを基に脚本にしていくことで、よりリアルなセリフにしていったことなど、フルーツ・チャン監督のこだわりと偶然が全て成功し、作品の持つ魅力につながっていったのだと思います。

甦るあの感動!『メイド・イン・ホンコン』4Kレストア・デジタルリマスター版

メイド・イン・ホンコン/香港製造 4Kレストア・デジタルリマスター版
©Teamwork Production House Ltd./Nicetop Independent Ltd

『メイド・イン・ホンコン』の4Kレストア・デジタルリマスター版は、香港映画史を代表する一本として選定されたのを受けて制作されました。香港では2017年 4月の「香港国際映画祭」で初披露後、返還20年の節目となる7月1日に公開されたことは大きな話題となりました。 日本では「第30回東京国際映画祭」でジャパンプレミアとして上映。その後2018年3月を皮切りにリバイバル公開へ。 本作が公開された20年前、このタイミングでリバイバル上映されるとは誰も思わなかったでしょう。色褪せないその魅力に、また新たな若者たちが魅了されています。 名作は時代を超えても尚、輝きを失わないものだと改めて感じました。2018年9月4日には、DVDとBlu-rayが当時リリースされます。 ぜひおススメです。