2018年7月3日更新

香港が動いた79日の記録。映画『乱世備忘 僕らの雨傘運動』が教えてくれる「香港人」の想い

乱世備忘
(C)2016 Ying E Chi All Rights Reserved.

2014年に香港で起こった大規模反政府デモ、通称「雨傘運動」。警察に強制排除されるまでの79日間を記録したドキュメンタリー映画が2018年7月14日から公開されます。

「雨傘運動」をおぼえていますか?

2014年9月26日、香港の中心部で「雨傘運動」は始まりました。高校生と大学生を中心とした若者たちが訴えたのは、中国中央政府の圧力を排除した民主的な普通選挙。彼らは授業をボイコットしたり、座り込みをしたりすることで、政府に自分たちの願いを主張したのです。 学生たちは武器を持たず、平和に抗議してきましたが、警察はまるで暴動を鎮圧するかのように催涙ガスなどを彼らに浴びせました。 しかし、香港の未来のために立ち上がった若者たちは妨害に易々とは挫けません。ガスを避けるため、傘をさしながら行動を続け、その姿はいつしか「雨傘運動」と呼ばれるようになりました。

映画『乱世備忘 僕らの雨傘運動』とは?

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本作は雨傘運動が始まった1日目から、警察に強制排除された日までの79日間を20章に分けて伝えるドキュメンタリー映画です。撮影当時27歳の陳梓桓監督が自らカメラを手にして撮影しました。 本作は、一定の距離を保った第三者の視線ではなく、参加者の目線で描かれています。 そんな本作の「主人公」は、16歳から25歳までの5人の若者たち。年齢も職業もバラバラな5人の姿を中心に、雨傘運動に参加者がどのように過ごしていたか、どのような思いで運動に参加したかを本作は映し出し、そんな彼らの姿を未来に残そうとしています。

映画『乱世備忘 僕らの雨傘運動』に対する評価

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本作は2017年に山形国際ドキュメンタリー映画祭に出品され、アジアのドキュメンタリー作品を対象としたアジア千波万波部門の最高賞である小川紳介賞を受賞しました。 山形国際ドキュメンタリー映画祭(通称・YIDFF)とは、1989年から隔年で開催されているアジア初のドキュメンタリー映画向け映画祭です。世界から高い評価を受けている映画祭のひとつであり、アジア地域で作られたものを中心に、世界各地のドキュメンタリー映画が集まります。 また、中華圏を代表する歴史ある映画賞の金馬奨においても、本作は2016年のドキュメンタリー映画部門にノミネートされました。

陳梓桓監督ってどんな人?

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本作の陳梓桓(チャン・ジーウン)監督は、本作が長編映画デビューとなる新進気鋭の映像作家です。香港で生まれ育ち、香港の大学で行政やデジタルメディアについて学んだ後、フリーランスで映像を撮っていました。 以前から香港の政治事件をテーマにした作品も撮っていた陳監督は、実は雨傘運動が始まる前からカメラを回しています。そのきっかけとなったのは、2014年7月1日に行われた座り込みで511人もの人が逮捕された出来事でした。 運動に参加した若者たちと同じく、香港の未来のために動かなければならないと感じた監督は、自らの「武器」であるカメラを手に雨傘運動へ加わったのです。

なぜ「雨傘運動」は起こったのか?

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1839年の阿片戦争の賠償として清朝からイギリスへ割譲された香港は、155年もの間イギリスの植民地として資本主義システムの中にありました。そのため、1997年に中国に返還されても、社会主義体制の中国中央政府とはすぐに一緒になることができません。 ひとまず香港は自治権を持った特別行政区と定められました。中央政府は、時間をかけて徐々に自分たちへ統合させるつもりでしたが、長年資本主義体制の中で暮らしてきた香港の人々は今まで通りのシステムを求めていたのです。そのうえ、香港にさらなる民主主義を求めていました。 そのように各自の思惑が衝突していた中で、中央政府は香港に対する圧力を年々強化。そして、ついには2014年には2017年から香港政府で実施される予定だった普通選挙を撤回するという事態まで発生。そのような中央の態度に香港の未来を憂いた若者たちは、大規模な抗議活動を行うようになり、それが雨傘運動へと発展していったのです。

2018年7月14日から全国で順次公開予定

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香港では劇場公開することが叶わず、ゲリラ上映をすることしかできなかった本作。日本では、2018年7月14日東京・ポレポレ東中野を皮切りに、名古屋シネマテークや大阪のシネヌーヴォなど全国6都市のミニシアター系映画館での公開が決まっています。 お住いの近くで公開されたときや、お出かけした先で公開されているのを見つけたときに、ご覧になってはいかがでしょうか?