映画『トゥルーノース』の動画を配信中のサブスクはここ！【3Dアニメで描く衝撃作】

3Dアニメ映画『トゥルーノース』は、日本とインドネシアの合作として制作され、2021年に公開された作品です。監督である清水ハン栄治が脱北者を中心に10年間取材を続け、北朝鮮の強制収容所についてのリアルを描き話題となりました。

平壌で暮らす4人家族のパク一家。ごく一般的な生活をしていた彼らですが、ある日を境に父親が帰ってこなくなってしまいます。ヨハンとミヒの兄妹に対し、母・ユリは父親がすぐに帰ってくると元気づけていました。しかしある晩、家に軍人が押しかけ、3人は強制収容所へと連行されてしまいます。 父親が政治犯であるとして、3人は収容所での労働を余儀なくされました。子供や老人にすら暴力が振るわれる劣悪な環境の中で、ヨハンとミヒは子供時代を過ごします。兄妹はインスという少年と出会い、友人となりました。 数年が経ち、家族を守るために監視員という役職を得たヨハンは、囚人たちを監視する役割を担っていました。そんなある日、ヨハンへ恨みを抱いた老婆によって、母・ユリが刺されてしまいます。

ミヒの兄である少年・ヨハン。真面目で健気な少年であった彼は、父親を失い、強制収容所へと連行され過酷な労働を強いられた後も、家族を守るために監視員になります。 しかし、監視員として他の囚人たちに対して冷徹な行いを続ける中で、次第に心が荒んでいってしまいました。収容所の中でも優しさを失うことのなかったミヒやユリと、次第にすれ違うようになります。 ヨハン役の声優は、ジョエル・サットンが務めました。

幼くして強制収容所へと連行されたインスは、同じ年ごろであったヨハンやミヒと友人となります。処刑として目の前で母親を撃ち殺されたインスは、精神的なショックにより吃音を患っていました。 看守から隠れて遊ぶなど、ヨハンとミヒの兄妹と共に少年時代を過ごします。そして、苦しい生活を共にする中で、ミヒに想いを寄せるようになりました。 インス役の声優は、マイケル・ササキが務めています。

ヨハンの妹であるミヒ。幼い頃から母親譲りの素直で優しい性格をしており、強制収容所での辛い労働の中でもその優しさを保っています。 家族を守るためとは言え、囚人たちに監視員として冷酷に接するようになったヨハンとは次第に距離を感じるようになっていきました。また、看守であるリーから一方的な想いを寄せられています。

ヨハンとミヒの母であるユリは、強く優しい女性として描かれています。夫が政治犯として捕まり、幼い子供2人と共に強制収容所へと連行されても、懸命に2人を育てていました。 ヨハンが監視員となって家族を守ろうとしていることについても否定的です。囚人同士で助け合おうという優しさを持ち続けていました。

本作は北朝鮮の強制収容所の様子を描いており、寒気がするほど厳しい現実が語られるストーリーとなっています。そのため実写映画として制作されていれば、観ていて非常に苦しいものになっていたでしょう。 本作は3Dアニメとして制作されているため、暴力的なシーンや残酷なシーンについても3Dアニメの柔らかさによってなんとか中和されています。 人形劇のようにデフォルメされているわけでもなく、収容所の過酷な環境や登場人物の生きている感情を感じ取れるリアリティは十分にあります。練り上げられた作品であることが感じ取れる映像となっていました。

本作は在日コリアンである監督の清水ハン栄治が、実際に収容所にいた経験を持つ脱北者にインタビューを行って制作しています。制作には10年という歳月がかけられ、監督の自己資金で作られました。 また、本作の言語には韓国語ではなく英語が採用されています。そこには、英語で制作することで世界中のより多くの人に北朝鮮の実情を伝えたいという想いが込められています。 強制収容所の現実についてリアリティのある描写を伴って描いた本作は、監督の熱意が伝わってくる、まさに渾身の映画です。

『トゥルーノース』というタイトルには2つの意味が含まれています。1つは、トゥルーとノースの言葉が示す通り、「ニュースでは報道されない北朝鮮の現実」というものです。 そして、英語の慣用句において「トゥルーノース」にはもう1つの意味があります、それは「絶対的な羅針盤」というものです。これは本作における、厳しい環境の中でも生きるべき道、自分があるべき姿を失わない人間の強さを表していると言えます。