【ネタバレ】映画『六人の嘘つきな大学生』真犯人と伏線は初見じゃわからない？最後の封筒の意味まであらすじ解説

超人気のIT企業への最終選考に挑む就活生6人が、波乱のグループディスカッションを繰り広げる『六人の嘘つきな大学生』。 そんな本作は、徐々に明かされる登場人物の真実と過去が見どころです。 ここからは結末までのあらすじネタバレやストーリー考察、電子書籍サービス・コミックシーモアの詳細を紹介していきます。

『六人の噓つきな大学生』は就活生6人を主人公とした就活ミステリーで、2021年に刊行された朝倉秋成による小説。2022年に漫画化と舞台化、2024年に映画化されたメディアミックスの話題作です。 序盤の日常パートから中盤の最終選考編に至って、ありとあらゆるところに伏線が貼られているのが本作の特徴。しかしミスリードが良い仕事をしており、真実を上手く隠しており、最後まで固唾をのむ展開から目を離せません。 終盤にかけて徐々に明かされていく真実。すべてを知ったときに1ページ目から読み返すと、6人のイメージがガラッと変わります！

超人気IT企業「スピラリンクス」の最終選考に残った波多野、嶌、久賀、袴田、矢代、森久保の6人は、説明会終わりにファミレスで懇親会を兼ねた話し合いを行っていました。 最終選考の内容はグループディスカッション。内容次第では全員内定の可能性もあると聞かされ、全員合格しようと誓い合います。しかしその日の夜、スピラリンクスから面接内容の変更メールが届きます。 新たなディスカッションの議題は、最も内定に相応しい人を自分たちで決めるというもの。しかも内定者は話し合いで決められた1人だけという厳しいものでした。 そして始まった最終選考、6人は数回に分けた投票で内定者を決めるという流れに。しかし学生たちの過去の罪が書かれた告発文が見つかり、話し合いは大きく拗れていきます。

ラスト近くで、実は嶌が大学2年の時に兄が運転する車で交通事故に遭い、足に障害が残っていることが明かされます。 これが見事な叙述トリックで、前半に出てきた矢代が電車の優先席に先立って座るシーンや、久賀が嶌のインタビューの際に車いすマークに停めていたことが「悪人→善人」エピソードに鮮やかに転換します。 八代も久賀も優先席や駐車枠を傲慢に使用していたのではなく、嶌の足を気遣っての行動だったのです。

嶌が2019年に八代・久賀・森久保・袴田にインタビューをおこなう描写でも、4人が悪人であるように描かれていましたが、これも完璧な叙述トリック。さらに告発の事実も異なっており、印象の付け方次第でこんなにも騙されてしまうものかと思うほど！ 袴田にいじめの事実はなく、真相は自殺した部員がいじめの加害者でした。森久保も家計を助けるために高額バイトに手を出したものの、詐欺と知った上で加担していたわけではなかったのです。 また矢代も金を貢がせる悪い女のような印象を与える発言をしていましたが、実際には高校生から付き合っている彼氏からのプレゼントを今も大切に使っている一面も。 これらのインタビューの反転エピソードからは、「人は多面的な存在で、一面で理解できるようなものではない」というテーマがうかがえます。

最終選考にて唯一アリバイがないことが発覚した波多野。そして封筒から出てきたのは、未成年飲酒をしている写真でした。周りから見て相対的に弱いタレコミをされたこともあり、他の5人は波多野を犯人と確定させます。 しかしそのとき波多野は、「あのときのあれは僕に対する宣戦布告だったのだ」と頭の中で考えていました。「あのときのあれ」とは、6人が顔合わせをしてしばらく経った飲み会でのこと。 波多野は九賀に、酒が飲めない嶌に無理やり飲ませたことを問い詰められていました。ここで波多野は真犯人が九賀であることに気付き視線を送りますが、波多野が見たのは嶌だと多くの観客が思ったのではないでしょうか。 しかし実際に嶌が飲んでいたのは、ブドウ味のジュースデキャンター。波多野たちは酒を強要していませんでしたが、最後の最後まで九賀は勘違いしていたのです。

準備段階では全員合格しようと意気込みますが、人事から選考内容変更のメールが届きます。それは「話し合いで内定者1人を決める」というもの。突然枠が1つに絞られ、緊張ムードで迎えた最終選考当日。波多野の案で30分ごとに投票を行い、累計票数が一番多かった人を内定者とすることに。 1回目の投票の後、嶌が部屋に置いてある封筒を発見。そこには各々の名前宛で封筒が6つ入っていました。久賀の封筒には、袴田が野球部で部員を自殺に追い込んだという告発文が。 それぞれの告発文には次の人の封筒を開けさせる仕掛けがあり、告発文が明かされる度に投票で不利になっていきます。そんな中、封筒を置く森久保の姿が監視カメラに捕らえられていました。 疑心暗鬼が続く中、封筒の開封を止めた波多野が他の5人に支持され始めます。しかし告発写真がいつ撮られたのかが明らかになり……。

「犯人がいつ写真を撮ったのか」が焦点に。そして「犯人は選考に影響が出ないように自分の告発だけ弱いものにしているのではないか」と意見が出ます。アリバイを確認していく中で、波多野だけが唯一無実を証明できるものがありませんでした。 波多野の告発内容は未成年飲酒。他の者と比べて軽微な罪だったため、5人は波多野が犯人だと決定づけます。この瞬間、波多野は犯人が誰であるか気付きますが、打開する術はありません。真犯人にはめられたってこと……？ 最後の投票の結果、累計票数が12票になった嶌が内定を勝ち取ります。波多野が封筒を開封せずにその場を去ったため、結局嶌の告発内容は確認できないまま。告発した犯人は本当は誰だったのか……。 そして最終選考から、8年の時が流れることになります。

スピラリンクスで働いている嶌のもとに、波多野の妹から連絡が入ります。なんと波多野は病気で亡くなり、嶌へ手掛かりを残していたのです。妹から渡されたのはUSBと謎の鍵。 嶌は真犯人の正体を明かすために、かつての仲間である4人に会いに行くのでした。しかし解決のヒントとなるようなものは一切浮かんできません。独自に調査しているということは、やっぱり嶌は犯人ではないのか……？ しかし波多野が告発写真を撮ることは、移動時間を考えると不可能であることが判明。さらにある人物には本当はアリバイがなく、他の就活生を脅していたことに気付きます。

告発写真を撮るためには森久保の一橋大学、久賀の慶応義塾大学、として八代のキャバクラがある錦糸町まで3か所を巡らなければなりません。普通に考えれば、国立から三田は1時間半、三田から錦糸町は40分の距離で難しい移動ではありませんでした。 ところが、波多野の妹が「慶応の総合政策学部は湘南藤沢にある」と気付きます。国立から藤沢までは2時間ですが、藤沢から錦糸町まで1時間で移動するのは絶対に無理なはず。そこで嶌は八代・久賀・森久保の3人のうち誰かが嘘をついたと考えますが、八代と森久保が犯人に脅されていた証拠を見つけたのでした。

真実を知った嶌は、真犯人のもとに向かいます。嶌を待っていたのは九賀でした。5人を陥れたのは九賀だったのですね……。まったく予想できませんでした。 九賀はSNSを使って、5人の弱みを集めていたのです。そして人事のフリをして森久保に封筒を渡し、封筒を開封する順番も調整。しかし彼の目的は内定を勝ち取るためではありません。 九賀は優秀な友人がかつてスピラリンクスの面接を受けて選考で落とされたことで、企業そのものに疑問を抱いていました。そして嘘に塗り固められた選考と就活生に嫌気が差し、就職活動自体に復讐しようと考えたのです。

最後に波多野のトランクルームに辿り着き、保管されてあった自分の告発文を確認した嶌。そこには「嶌衣織の兄は薬物依存症。嶌衣織の兄は歌手の『相楽ハルキ』。二人は現在同居している」と書いてありました。 その前に、嶌の同僚が「相楽ハルキのファン」だと語っており、今は薬物依存から立ち直った「いい人」だと周りに反論していました。その時嶌は、異常な関心を示していましたが、実はこの告発文への伏線だったわけです。 さらに、トランクルームで嶌がある封書を見つけます。それは波多野がスピラリンクス人事宛に送ろうとしていた「告発文」でした。そこには最終選考の妨害工作について自分は無実で、犯人は久賀であり、内定者の嶌の告発文を同送すると書かれていました。 もし嶌が内定者としてふさわしくなければ、再選考を実施してほしいと綴っていた波多野。嶌はやはり彼のことも一面しか見ていなかったのだと悟り、最後に「好青年のふりをした腹黒大魔王さん」と想いを馳せるのでした。

波多野の妹に「兄のことどう思ってたんですか？」と聞かれた嶌は、最後に「……好きだったよ」と答えました。しかし妹に最終選考での投票は「好きな人投票」だと指摘され、自分が最初の4回はすべて久賀に票を入れていたことを思い出します。 おそらく嶌が好きだったのは久賀だったのでしょう。そのことを指摘されて、最後にようやく気が付いたよう。妹に波多野を「好きだった」と答えたのは、優しい嘘だったのではないでしょうか。 彼に思いを馳せた嶌は「嫌味でも皮肉でもお世辞でもない、本当にありがとう」と、彼のそれまでの行動に本心から感謝していました。あるいは“人間的に”好きだったのかもしれませんね。

同じくトランクルームに残されていたゲーム機には、「ヨウイチ」という名前が書かれていました。これも最終選考で波多野が自分の悪事を思い起こしていた時に語っていた、小学生の時に返し忘れたゲーム機の伏線回収です。 そんな昔の1件を思い出す波多野の人の良さが強調されているエピソードですが、そのゲーム機をわざわざ嶌へのメッセージとして残すあたりも心憎い伏線。波多野という人物の多面性を描く材料になっています。

波多野の告発写真の出元が大学サークルのホームページからと気付いた嶌は、そこでビールを飲む波多野の写真をボツ欄から発見します。犯人はなぜわざわざボツ欄の写真を使ったのか。 キリンラガーの缶をも持つ告発に使われたボツ写真とスミノフの瓶を持つ告発には使われなかった写真、この2枚の写真の違いを考えた嶌は、犯人が「アルコールに詳しくない人物」だと推察します。つまりアルコールを飲まない人物。 犯人はスミノフがアルコールだとは知らず、わざわざボツ写真からビールを飲む写真を選んでいたのです。

スピラリンクスで新卒面接官を任された嶌ですが、「洞察力には自信がある」と語る就活当時の自分と重なる就活生に出会います。あの頃の自分は就職を勝ち取るために当たり前のように嘘をついていたし、嘘をつかれてもいた……。 嶌はその就活生に「その洞察力に自信があるか」と質問しますが、彼女が「あります」と答えると、嶌は面接シートに「×」を書き込みます。ところが、その後で他の面接官が会社に関する明らかな「嘘」を答えると、彼女は「貴重なお話ありがとうございました！」と笑顔で返したのです。 嶌はこの就活生に酸いも甘いも嚙み分ける柔軟性を見出し、この先も成長が期待できると考え、最終的には「◎」を書いてシートを提出します。 本作は選考基準や犯人の動機から考えても、新卒採用制度に一石を投じるシビアな描き方をしています。就活の理不尽さや人の多面性に思いを巡らせるには絶好の作品かもしれません。

赤楚衛二演じる立教大学経済学部の波多野祥吾(はたのしょうご)。性格は穏やかで真っ直ぐ、大学ではフィールドワークサークル部に所属しています。探求心は旺盛で、場を引き締める6人の精神的支柱。

浜辺美波演じる早稲田大学社会科学部の嶌衣織(しまいおり)。鋭い洞察力と正義感を持ち、控えめながらも自分の意見はしっかり表明します。未開拓な分野にも参入できるよう、スキルを伸ばしていこうと考えています。

佐野勇人演じる慶応義塾大学総合政策学部の久賀蒼太(くがそうた)。大学ではゼミの代表も務めた統率力抜群の逸材。フェア精神を愛し、グループディスカッションでも常に冷静かつ的確に行動するリーダー的存在です。

山下美月演じる明治大学で国際文化を専攻する八代つばさ(やしろつばさ)。語学力と人脈には絶対的な自信を持つ、社交性に優れた人材です。国際問題に興味があり、海外渡航経験も豊富で、物怖じしない性格。

倉悠貴演じる一橋大学社会学部社会学科の森久保公彦(もりくぼきみひこ)。公認会計士の資格を持っており、財務や総務で活躍したいと考えています。口数は少ないものの、冷静に分析する能力に秀でています。

西垣匠演じる法政大学の袴田亮(はかまだりょう)。大学ではスポーツと社会の関わりを学びました。高校時代は野球部でキャプテンを務めており、気合と根性で場を切り抜ける熱血タイプのムードメーカー。

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