2020年12月1日更新

『ミステリと言う勿(なか)れ』をネタバレありで紹介!アフロ探偵が饒舌で事件解決

ミステリと言う勿れ

ミステリーなのにミステリーじゃない?タイトルから矛盾を展開する『ミステリと言う勿れ』は田村由美が描く話題作。日常に潜む謎や人間の深層心理を巧みな会話で描く本作の魅力とは?久能整の魅力や事件の真相をネタバレありで解説します。

目次

『ミステリと言う勿れ』人気の理由をネタバレありで解説!アフロ探偵が事件解決?

『ミステリと言う勿(なか)れ』は『7SEEDS』や『BASARA』といった壮大なSFファンタジーを描いてきた田村由美が描く、一風変わったミステリー漫画です。主人公が事件の謎を解いていくという意味では本作はたしかにミステリー作品と言えるでしょう。 一方でタイトルでは“ミステリーと言うな”と矛盾する主張をしています。一見すると矛盾しているように感じられますが、作品を読んでみるとたしかにミステリーのようでミステリーではないと感じるのがこの『ミステリと言う勿れ』という作品です。 人間の心理や社会の在り方は、一概にコレという正解があるものではありません。そういう曖昧な部分に踏み込みながらも、ついでに事件も解決していく探偵の姿が楽しめる本作。この記事では『ミステリと言う勿れ』の魅力やあらすじを紹介します。

『ミステリと言う勿れ』あらすじ紹介【巧みな話術で事件を解決】

本作は主人公・久能整(くのうととのう)が事件の謎を解いていく姿を描く作品です。最初の事件では彼自身が殺人の容疑をかけられ事情聴取を受けることに。 彼は取り調べを受ける中でそこにやってくる刑事と様々な話をします。一見すると事件解決にはまったく関係ないように思える世間話や愚痴を聞きながら、整は刑事たちの悩みの本質を見抜きちょっとしたアドバイスをしていくのでした。 次々と証拠が出てきて整の立場は悪くなっていきますが、それでも整は「おしゃべり」をやめません。それどころか取調室にいながら、次々と推理を立てて事件を解決に導いていきます。 見事な記憶力と観察力で自身への疑いを晴らし真犯人を見つけた整はそれ以降も事件に巻き込まれていくことになるのでした。

主人公はアフロ頭の名探偵・久能整(くのうととのう)

本作の探偵役を担うのはアフロ頭が印象的な大学生・久能整です。彼は大学で心理学を学んでおり、人間というものに並々ならぬ好奇心を抱いている人物。 彼の関心事はいつでも人間に向けられており、なぜそう感じるのか、なぜそう行動したのかなど他人が見過ごすような小さな引っ掛かりをいくつも拾っていきます。それがときに相手の本心を暴くきっかけとなり、同時に事件解決の糸口となるのです。 整はとにかくおしゃべりな人物。しかも知識の引き出しが非常に多く、多方面の分野に関する雑学を知っています。読者は彼の知識量に脱帽し惹き込まれていくのです。

ミステリだけどミステリではない?『ミステリと言う勿れ』の魅力は“会話”

『ミステリと言う勿れ』は作者の田村があとがきで「整がただただしゃべりまくる話」と書いているように、とにかく整が会話をしていく作品です。そしてこの“会話”こそが本作をミステリーだけどミステリーではないという不思議な魅力の作品に仕上げています。

日常の謎を会話で解決

探偵モノの作品では一般的に、探偵が次々と推理を披露して事件を解決に導いていきます。一方で本作の探偵・整はとにかく話が事件から脱線していくのです。 家事としてのゴミ出しの話からワニ最強説、ロイヤルミルクティーの由来まで、バラエティに富んだ話題が飛び出し、奇妙な形で事件解決へと着地していきます。中には身近な疑問に関する会話もあり、読者も整によって新たな価値観や気付きを得られるのです。 また安楽椅子探偵(あんらくいすたんてい)ものとして描かれているのも本作の特徴で、整は自ら動いて情報収集をするわけではありません。その場から動かず与えられた情報と会話から引き出した情報で、真相を暴いていくのです。

全ての読者に関係するテーマ

本作は事件解決を目指すというミステリー的な要素を提供しつつ、同時に整の言葉を通して読者に哲学的な問いを提示する作品です。整は本来探偵が言わないであろう「真実は1つなんかじゃない」というセリフを言います。 ミステリーというハラハラドキドキするエンターテイメントを楽しむだけでなく、その奥に潜む「真実とは?」「なぜ殺人をしてはいけないのか?」といった普遍的で哲学的なテーマを読者は受け取ることになるのです。 英題「Do not say mystery」は直訳すると「ミステリーと言わないで」となります。身の回りに潜む疑問を「ミステリー」と呼んで名探偵任せにして知らんぷりをするのではなく、自分で考えるべきというメッセージが本作のタイトルには含まれているのではないでしょうか。

事件ネタバレ解説①:バスジャック

どうしても行きたかった印象派展に向かう途中、整が乗ったバスがハイジャックされてしまいます。犯人・犬童オトヤはなぜか乗客たちに自分の欠点や人を殺した経験があるかどうかを答えさせていくのでした。整は相変わらずの緊張感のない会話でオトヤを激昂させてしまいます。 オトヤを取り押さえたのは坂本という男でしたが、彼も犯人の一味で犬童我路(ガロ)という男でした。人質はそのまま犬童家の屋敷に招待され一夜を明かすことに。屋敷で人質たちは引き続き思考パターンを試されるような質問をされていきます。 整がなんとか知人の池本巡査に連絡を取ると、最近起きている連続生き埋め殺人事件の最初の被害者が犬堂愛珠(あんじゅ)という人物で犯人の関係者であることが判明。さらに整は鋭い観察眼を活かし人質の熊田という男が本物のガロ、ガロと名乗った人物がハヤで犯人は3人グループだったことを言い当てます。 愛珠はガロの姉で、バスジャックは連続殺人事件の犯人を探すため計画されたものでした。整はきれい好きで、何でも見えない所に片付ける運転手・煙草森(たばこもり)が犯人だと推理。煙草森には人を殺したという意識はなくただ“片付けた”のでした。 煙草森は連行され犬童たちは不起訴になります。ところが煙草森は移送中に誘拐され死体となって見つかり、ガロたちは行方をくらましたのでした。

事件ネタバレ解説②:京都からの手紙

新幹線で広島に向かう整は、隣の席の女性・紘子(ひろこ)が読んでいる手紙に仕込まれた暗号に興味を持ちます。イラストに隠された暗号を解読すると、そこには「京都には来るな」というメッセージが。その手紙は彼女の育ての親が隠し持っていた実父からの手紙でした。 紘子を返すよう促す実父の手紙には、暗号で「信じるな」「暴れてる」「逃げて」といった警告とも取れる文が添えられています。整は暗号の文面から彼女の実母と育ての母は親しい仲で、実父の暴力から紘子を救おうとしていたことを推測するのでした。 さらに整は紘子の後ろに座っている女性が育ての親だと言い当てます。育ての親・サキが語るには、実父はすでに死んでいて、実母は心が病んでいるということでした。実母は実父として本文を書き、自分で暗号イラストも書き、娘を守っていると思い込んでいるというのです。 手紙の謎が解け晴れやかな様子で降車する紘子ですが、整はサキを呼び止めます。紘子が「ひろこ幸せで」と解読した暗号の正しい読み方は「ふたりでころした」でした。 整は2人の母で実父を殺したのではないかと尋ねますが、サキは紘子が「幸せで」と読んだならそれが正しいのだと言い新幹線を降りていきます。整は自分の育ての親に思いを馳せながら広島まで眠ることにするのでした。

事件ネタバレ解説③:嵐のアイビーハウス

整は大学の准教授・天達(あまたつ)にバイトに誘われ、謎解きミステリー会の手伝いに行くことになります。アイビーハウスと呼ばれるその屋敷には主のアイビーこと蔦、整と以前同じゼミだった相良(さがら)レン、橘高(きつたか)、ネットで知り合ったというパンとデラがやってきました。 早速謎解きが始まります。女性の転落死に関する設問で、整は持ち前の推理力を活かし正解を回答。この問題自体は作り話だと言いますが、実際にこの家では天達の恋人・喜和(きわ)が5年前にストーカーに殺されて死ぬという事件が起きていました。しかし捜査も終了しており天達はもうふっきれたと語ります。 謎解きも終わり何気ない時間が過ぎていきますが、整はずっと違和感を感じていました。夕飯時に出されたワインに毒が入っていると指摘した整は、橘高がここへ来てから何度も嘘をついていることを指摘。 さらに橘高が自分の痕跡を残さないように行動しており、他の6人を無理心中として皆殺しにしようと計画していると言います。橘高は喜和のストーカーに誤って居場所を教えてしまったことや親の介護のストレスから、最近起きているストーカー殺人に関与していたのです。 橘高は実は刑事で潜入捜査をしていたデラとパンに連行されていきます。整はせっかく作ったカレーが押収されてしまい残念そうにするのでした。

異色のミステリー漫画『ミステリと言う勿れ』は読者の思考を加速させる

事件や日常に潜む人間の心理や哲学を浮き彫りにする『ミステリと言う勿れ』は読者に多くの問題提起をするミステリー漫画のような、そうではないような不思議な作品です。事件解決とは違った部分で、常識やルールだと思っている事柄への新たな視点を与えてくれます。 本記事では作中で描かれている事件の顛末について触れてきました。しかし本作の最大の魅力は、整の膨大なうんちくや雑学の中に散りばめられています。読む人によって彼のどのセリフが胸に刺さるかも違ってくるのでしょう。ぜひ本作を手に取って整とともに脳をフル回転させてみてください。