手塚治虫『アポロの歌』原作ネタバレ解説!有害図書に指定された問題作が実写ドラマ化
MBS/TBS系列「ドラマイズム」枠にて、手塚治虫の問題作『アポロの歌』の実写ドラマ化が決定!この記事では、『アポロの歌』の原作ネタバレや実写キャストを解説します。 本記事にはストーリーのネタバレが含まれるため、原作未読の人は注意してください。
手塚治虫作品『アポロの歌』のあらすじ【ネタバレなし】
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手塚治虫が遺した『アポロの歌』は、1970年に『週刊少年キング』で連載された長編SF青春漫画です。 大学紛争などが相次いだ当時の世相も反映され、暗く悲劇的な雰囲気が漂う本作。ストーリーの軸を担う主人公・近石昭吾は、ふしだらな母親に虐待されて育ち、男女の愛情を激しく嫌悪するようになります。やがて彼は精神病院へと送られ、治療の影響で夢の世界に住む愛の女神と出会うことに……。 愛の女神から「愛の試練」を課され、様々な時代を旅する過程がオムニバス形式で描かれます。
漫画『アポロの歌』結末までネタバレ解説!
序章 神々の結合
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近石昭吾の母親には複数の愛人がいて、彼女にとって息子は新しい男を作る障害でした。 幼い頃に母親が寝室で性交する現場を見てしまい、酷い虐待を受けた経験がある昭吾。この時、「できてしまったから産んだ」と言われたことがトラウマになりました。彼は愛というものに憎悪を覚え、愛し合う動物たちを見るたび殺して回るように……。 飼育される動物にも手を出したため、警察は昭吾を精神病院に勤める医師・榎に託しました。 電気療法のショックによって、昭吾は宮殿のような夢の世界へ。そこで女神像から「愛を呪った罰」を受けるよう言い渡されます。夢の中で出会う“女性を愛し、結ばれる直前で死別する”悲劇を繰り返しながら、愛について学ぶことになるのでした。
第1章 デイ・ブルーメン・ウント・ダス・ライへ
最初の夢での昭吾の身分は、第二次世界大戦中のナチス・ドイツ兵士。輸送中だったユダヤ人・エリーゼに惹かれ、爆撃された際の混乱に乗じて逃がしました。 エリーゼは後を追ってきた昭吾の正体に気付かず、両親の仇として銃で撃ちます。追跡してきた兵士たちが彼女を殴打して輪姦しようとするも、昭吾が背後から彼らを銃殺。共に瀕死状態の2人は心を通わせ、会話をしながら息を引き取るのでした。 後日、花畑で2人を発見した兵士は「役立てる」と言い、エリーゼの遺体だけを回収しました。
第2章 人間番外地
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第2の夢ではセスナのパイロットになっており、報道カメラマン・ナオミに雇われていました。 海底火山の噴火を取材しに向かったものの、セスナ機が無人島に不時着。2人は次第に惹かれ合い、行為に及ぼうとしますが、危険を知らせる大型船舶が接近します。船員は島の動物を銃殺し始め、昭吾と揉み合った拍子にナオミを撃ってしまいました。 昭吾がナオミの遺体と逃げようとした瞬間、島は大噴火によってマグマに包まれるのでした。
第3章 コーチ
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精神病院で色情狂の女性患者に迫られ、揉み合った末に死なせてしまった昭吾。病院を出た彼は遭遇したカップルの女性を強姦しようとして、男性を殺して逃亡します。 渡ひろみという女性が別荘で匿ってくれますが、彼女の顔はあの女神像によく似ていました。 一方、ひろみの許嫁・山部は、彼女が中学生(?)に入れ込んでいると知って嫉妬心を募らせます。昭吾は山部崖から転落させられ、頭を強打して重傷を負ったのでした。
第4章 女王シグマ
第3の夢の世界は「合成人に支配されている未来」。レジスタンス「人間密同組織」のメンバー・昭吾は、合成人女王シグマのもとへ連行され、子作りの実演を命じられます。 生殖器や排泄器を持たないクローンであり、愛の概念を知らないシグマ。昭吾に「自分を渡ひろみだと思え」と言って性行為を再現させる内に、不思議な感情が芽生えました。それが首相ビビンバの逆鱗に触れ、彼女は自らレジスタンスに撃たれます。 昭吾も自身のクローンに撃たれ、人間密同組織に破壊されたシグマの最後のクローンは、昭吾の遺体を抱いて爆破装置を作動させました。
第5章 ふたりだけの丘
崖下への転落から生還し、年上のひろみに恋心を抱き始めていた昭吾。彼が別荘に戻ると、医師の榎が昭吾と距離を取るよう教え子のひろみに助言していました。 昭吾はひろみが助言を受け入れたことにショックを受け、そのまま別荘を飛び出します。 ギリシア神話のニンフ(精霊)・ダフネが太陽神アポロの求愛から逃げた逸話から、「月桂樹になれ」と諭され、一旦はロッジを去ったひろみ。彼女もまた昭吾への愛に気づいて引き返し、崖から身を投げる昭吾の身代わりになり、自分が転落して死亡します。 その後、別件で警察から追われた昭吾は、ひろみの遺体と共にガソリンの保管所で籠城。しかし、警察官が発砲した銃弾がガソリン缶に当たり、昭吾は爆死してしまうのでした。
エピローグ
ふと気付いた昭吾の前に再び愛の女神が現れますが、女神が彼の罪を許すことはありません。 永久にこの「愛の試練」を受け、苦しみ続けるよう命じる女神。昭吾は「せめてもうひと目だけ、ひろみに会わせてほしい」とお願いします。すると、女神は「どの時代にも彼女は待っている。いつでも会える」と告げ、世界が続く限り繰り返す生命のドラマを説くのでした。
『アポロの歌』は有害図書?手塚治虫が伝えたかったことは?
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『アポロの歌』は愛と性がテーマの性教育漫画でもあり、永井豪の『ハレンチ学園』(1968年)以降の流れから、過激な性・裸体描写が含まれます。『ハレンチ学園』は『アポロの歌』以前に出版され、過激な性描写から苦情が寄せられた作品でしたが、手塚治虫は単行本のあとがきで『ハレンチ学園』に触れ、すでに子どもたちがセクシーな描写を受け付けるようになってきていると考えていました。 しかし連載当時、依然としてPTAなど性的な作品への目は厳しく、神奈川県では有害図書に指定されました。 大胆な性愛表現ゆえに問題作とされた一方で、手塚治虫は快楽を主とした性は描いていません。彼の視点はあくまでも、「種の保存は全生物の根源的な行為」だということ。生命の誕生は神聖なもので、世界の歴史は誠実な愛の性(行為)によって続いてきたのです。 同時期の作品『やけっぱちのマリア』と違い、絶望的なストーリー展開なのも、尊厳を冒した者は罰を受けるというメッセージかもしれません。
『アポロの歌』佐藤勝利・髙石あかりW主演で実写ドラマ化へ
主要キャストを紹介!
近石昭吾役/佐藤勝利
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主人公・近石昭吾は性に奔放な母とのトラウマから、人妻と寝てお金を得ている大学生。幼なじみを死なせてしまった罰で、永遠に結ばれない恋を繰り返すことになります。 そんな昭吾を演じるのは、アイドルグループ「timelesz」としても活躍中の佐藤勝利。連続ドラマへの出演は、『赤いナースコール』(2022年)以来2年ぶりです。
渡ひろみ役/髙石あかり
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渡ひろみは昭吾に想いを寄せる幼なじみで、歌手を目指してBAR「アガペ」で働いています。昭吾が転生する全世界に存在し、そして必ず彼と惹かれ合いますが……。 ヒロインを務めるのは、「ベイビーわるきゅーれ」シリーズなどの髙石あかり。2025年度後期の朝ドラ『ばけばけ』のヒロインに抜擢され、今後が期待される若手女優です。
監督を務めるのは二宮健
本作の監督と脚本は二宮健が手がけ、手塚プロダクションも監修として参加しました。 映画『とんかつDJアゲ太郎』(2020年)などで知られる二宮。『アポロの歌』については、「自分の礎を築いた手塚治虫先生の作品の中でも、特に心を揺さぶられた一作」とコメントしています。
現代ドラマとしての『アポロの歌』 SF展開をどう描くのか!?
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実写ドラマ化にあたっては、『アポロの歌』を現代解釈したストーリーが展開されます。 キャラクター設定は様々な変更が加えられ、「愛の試練」が課されるきっかけも殺生ではなく、ひろみを死なせたことになっているようです。 また深夜枠とはいえ、原作は序章冒頭の着床シーンなど漫画ならではの性愛の表現も多く、映像表現としてどこまで攻められるかは気になるところ。主人公が時代や世界を超えるSF展開についても、どうドラマ化されるのか期待が高まります。
ドラマ『アポロの歌』2月18日深夜スタート!愛と宿命の描写に期待!
佐藤勝利と髙石あかりのW主演ドラマ『アポロの歌』は、2025年2月18日深夜から放送スタート!実写ドラマ版の世界観を楽しみつつ、この機会にぜひ原作も読んでみてください。