2026年1月16日更新

『変な地図』ネタバレ考察!登場人物とテーマから見る「変な」シリーズの進化を解説

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『変な地図』(2025年)

YouTubeで大人気を博しているホラー・ミステリーYouTuberの雨穴。代表作『変な家』は2024年に実写映画化され、大ヒットしました。 そんな雨穴の最新作、『変な地図』の単行本が2025年10月31日に発売され、注目を集めています。 この記事では、『変な地図』の結末までのネタバレを紹介します。

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雨穴最新作『変な地図』概要・あらすじ

2015年。大学生の栗原文宣は、彼の祖母が正体不明の古地図を握りしめて不審死したという意外な事実を知ります。その古地図には、7体の妖怪が描かれていました。 これはいったいなんなのか。なぜ祖母は死に際にこんな物を持っていたのか。その謎を探るため、栗原青年は旅に出ます。 そこに待ち受けていたのは、海沿いの廃集落、不可解な人身事故、潰れかけの民宿、因縁に満ちたトンネル、そして古地図に秘められた悲しい事実でした。

【ネタバレ】『変な地図』トリックを解説!事件の結末は?

衝撃的な社長・大里幸助の死

ある日、矢比津鉄道の社長・大里幸助はR県の湖隠駅と柿童駅を結ぶ、「母娘トンネル」の中で目覚めました。あと数分で始発電車が柿童駅を出発し、このトンネルを通り抜けます。狭いトンネルには、電車が通過する際の強風を考えると、逃げ場はありませんでした。 大里は、一番近い非常出口を目指して走りながら考えます。彼は昨夜、日頃から対立していた会長の矢比津に誘われて、夕食をともにしました。自分の今の状況に矢比津が関係しているのでは、と考えていた大里は、そのまま電車に轢かれてしまいます。

栗原文宣が祖母の自殺の謎に迫る

建築工学の准教授だった母の影響で、建築学の道に進んだ大学生の栗原文宣。ある日、栗原は父から、彼が生まれる前になくなった母方の祖母の家を手放したいと告げられます。栗原は売却する前に、一度家を見ておきたいと言い、父とともに飯田橋の家を訪れました。 祖母の家に行ってみると、栗原は不可解な点をいくつも発見し、祖母は自殺したのではないかと父に尋ねます。すると父は重い口を開きました。栗原の祖母は浴室でリストカットをしたものの死にきれず、手すりに結んであった針金で首を吊ったというのです。 しかし、元気でご飯会なども開催していた祖母が自殺した理由はわからず。父は「亡くなる少し前から、急に元気がなくなった」と説明しました。 さらに栗原は、祖母の仕事部屋の本棚の裏に、祖母が死に際に握っていたという「変な地図」が隠されているのを発見しました。その地図には、山に住む化け物たちとそこへ向かう女が描かれていました。 そして、祖母の家に定期的に母が通っていたことが判明。栗原はその理由を、「お母さんは、お祖母さんの自殺の原因を探っていたのだ」と述べました。母や祖母が調査していたことの真相が気になった栗原は父の反対を振り切り、もう一度祖母の家へ向かいます。そこで、祖母は調査を完結させていたこと、そして調査を通して浮かび上がった真実に耐えかねて祖母は自殺したことを栗原は確信します。さらには、古地図に描かれているのは、R県河蒼湖集落であることもつきとめました。栗原の母はその事実を突き止めた1ヶ月後、栗原の妹を産んだ直後に亡くなりました。栗原は、母が果たせなかった実地調査へ向かうことを決意します。 R県へ向かった彼は、酔っぱらいに絡まれていたところを帆石水あかりというR県警の警察官に助けられます。旅の目的地を伝えると、あかりは自分の実家である旅館「帆石水亭」への宿泊を勧めます。 あかりから聞いた話では、数日前に矢比津会長が旅館を訪れ、河蒼湖の開発などについて話し合っており、脅迫めいた言葉を口にしていたといいます。

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人身事故に遭遇する栗原

栗原が電車に乗っていると、破裂音がして、ブレーキ音と警笛が鳴り響きました。運転士は、いきなり人が目の前に出てきたといいます。 その後、栗原が無線で話した鉄道員・スガワラが乗客を案内しにきました。スガワラの指示に従い、栗原は非常口を抜けて行きます。そして、栗原は、新駅の設置が予定されている場所が、さきほど事故が起こった場所であることに気がつきましたが、今年完成予定の駅を設置するための開発が一切進んでいないことに違和感を覚えます。 河蒼湖集落跡地にたどり着いた栗原は、三角屋根のお堂で沖上喜見子という女性の手記を発見。そこには集落の女性たちが過酷な労働を強いられてきた衝撃的な過去が記されていました。栗原の祖母・知嘉子はこの集落の出身だったのです。 そして、栗原がお堂を調べているとき、あかりから電話があり、あかりの父が朝から行方不明だと伝えられます。

人身事故にしては違和感が…?

大里の遺体から大量のアルコールが検出されたことから、彼の死は酔ったすえにトンネルに迷い込んだ「人身事故」として処理されました。 しかし、この事故には不可解な点がいくつかありました。1つは電車の運転士の証言です。彼は「いきなり、人が目の前に……」と語りました。しかし電車のヘッドライトは、数100m先まで照らすことができます。もし大里が線路の上を歩いたり、倒れたりしていたのであれば、衝突するもっと手前で気づくことができたはずです。 2つ目は音の順序がおかしいことです。普通なら、「ブレーキ音や警笛」を鳴らした後に「衝突音」がするはずです。しかし今回の“事故”では、強烈な衝突音が鳴り響いた直後にブレーキ音と警笛が鳴っています。これは、運転士が大里に全く気づいていなかったことを示しています。 3つ目は電車のフロントガラスに付着していた血痕の位置です。一般的な電車の車高が4mで、170cmを超えない小柄な大里の身長を考慮すると、彼が線路上に立っていた場合に付着するとは考えにくい、不自然な位置でした。 このような違和感を繋ぎ合わせ、栗原は、大里と待機していた犯人が、非常口付近を電車が通る際に、大里を線路にはなったのだと推測します。さらに、栗原は、その犯人は、あかりの父なのではないかと告げます。

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事件の真犯人は?

翌日の朝、栗原は前日感じた違和感を整理し、河蒼湖集落に住んでいた人たちが湖隠集落へ移転したのだと気付きます。 そこで、湖隠集落へ向かった栗原は無人駅を管理する駅員に遭遇します。彼は、大里社長と矢比津会長は最初いいコンビだったものの、大里が非常口を母娘山トンネルに増設するという案を出した際に、矢比津会長が反対したことがきっかけで、関係が崩れたといいます。さらに、その後、矢比津会長の隠し子が幹部になったことに不満を感じた大里は、河蒼湖集落の観光開発を強行したという。 この話を元に、栗原は、あかりの父は、「借金を帳消しにする代わりに大里を殺害しろ」という取引を矢比津会長に持ちかけられたのではないかと考えます。それならば、母娘山トンネルで事件を起こした理由にも説明がつきます。 さらに、栗原は、あかりの父が自殺をし、保険金を妻と娘に渡そうとしているのではないかと推理します。そして、その予想は当たっており、あかりの父は矢比津会長とも相談した上で、事故に見せかけた自殺を決行したのでした。

栗原とあかりの調査によって事件の真相が明らかに

あかりと栗原は調査していく中で、大里社長殺人事件の詳細を明らかにしていきます。スマホに指紋が一つしかなかったこと、鍵穴に髪の毛が詰め込まれていたこと、そして、あかりの父が手は無傷であったものの膝を怪我していたことから、あかりの父が途中で怪我をして、大里を歩かせる必要があったと気付きます。あかりの父は、髪の毛によって第1・2非常口を故障させており、アラームで大里を起こして、第3非常口まで歩かせたのだと栗原はいいます。 翌日、栗原は電車を使って湖隠集落へ向かいます。そして、昨日同じ電車に乗り合わせていた女性に、河蒼湖集落の歴史について教えてほしいと頼みこみます。そこで、矢比津剛堂がトンネル建設を断念したこと、しかし技術が進歩し、剛堂の息子・啓徳が引き継いだことを知りました。さらに、剛堂が急死する前、啓徳に母娘山に関する秘密を伝えていたと栗原は推測します。 その後、栗原とあかりは湖隠駅で落ち合い、森の中に湖隠駅と母娘山を結ぶ明るい道があることを確かめます。明るい道の木の幹は細く、均一であることから、矢比津鉄道が開通した約75年前に、誰かがここ一帯の木を伐採し埋め直したと栗原は説明します。伐採は、線路をひくために行われたものの、計画にミスがあって、木が埋め直されたのです。 さらに、栗原は、計画のミスのせいで、落盤事故が起き、大勢の人がなくなったものの、鉄道開発を進めたかった国が、事故を隠蔽したのだろうとあかりに伝えました。この秘密を隠すために、矢比津会長は母娘山の開発に反対していたのです。

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【結末】明らかになった「変な地図」の謎

『変な地図』

あかりの家に帰ると、そこには血痕があり、女将の姿が見当たりません。栗原とあかりは、あかりの母を探して、湖隠集落へ向かいました。そこで、布に包まれた人と、槍と包丁を持った黒コートの人物を発見。 そして、栗原は、黒コートの人物が槍を持っていたことから、あかりを殺す気はなかったこと、それが女将であることに気づきます。さらに、2人が話していく中で、栗原の祖母・知嘉子の妹・喜嘉子の子どもが女将の母であること、つまり、女将は喜嘉子の孫であり、女将と栗原は遠縁の親戚であることが明らかになっていきます。 さらに、栗原は、喜嘉子が、偽物の三角点を作ることで、矢比津鉄道の工事に狂いが生じ、落盤事故が起きたこと、それによって多くの男性が命を落とし、女性が虐げられなくなったことを伝えます。 そして、最後に、栗原は女将に話をしにいきます。そこで、古地図は、知嘉子が男性を騙し、国道へ続く道を示すものであったこと、そしてその地図のおかげで知嘉子は河蒼湖集落から逃げ出せたことが明らかになりました。前々から起こっていた不吉な予兆、さらには、お堂から発見された古地図に、そして騙された喜嘉子の反応によって、「知嘉子が魔に攫われた」というストーリーを男性たちも信じ込んだのでした。 知嘉子が自殺したのは、自分を逃がすために作られた古地図が、めぐりめぐって落盤事故が起き、集落の人間を苦しめたことを知ったからなのでした。

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『変な地図』は「変な」シリーズ集大成!関連性を考察

【相違点】「変な」シリーズの登場人物が活躍?

『変な地図』では、「変な〜」シリーズの人気キャラクターである栗原が物語の中心となっています。彼の人柄や過去が明かされ、これまでにない面白さがあります。そのほかにも、『変な絵』の登場人物が別の名前で登場している可能性も示唆されています。 また、これまでのシリーズでは「間取り」や「絵」などがモチーフでしたが、今回は「地図」がモチーフとなっており、人間の知覚にとどまらず、「世界」そのものと向き合う壮大な物語が展開されます。また、地図を描くことは、「記録すること」「生きた証を残すこと」であり、これも本作のテーマとなっています。

【進化】『変な地図』はシリーズの伏線を回収

『変な地図』では、主人公である栗原が自らの家族や過去と向き合うことで、過去2作を含む3作すべての伏線が回収されています。 これまで『変な家』では「家族の秘密」を描き、『変な絵』は「記憶の歪み」をテーマに描かれていました。そして『変な地図』では、「記憶の継承」が描かれています。 本作の主人公である栗原は、YouTube版では人気のキャラクターですが、小説版では1度だけ言及されたキャラクターであり、彼の再登場によって、3作をつなぐすべての伏線が回収されています。

『変な地図』Kindle版と初回配本にはそれぞれ特典が!

『変な地図』Kindle版には朗読動画と考察マップ

『変な地図』(2025年)

『変な地図』のKindle版には、作品のイメージが膨らむ「考察マップ」と著者・雨穴が作中に登場する『沖上喜見子の手記』を朗読する動画がついてきます。 朗読動画では、物語で重要な役割を果たす『沖上喜見子の手記』の未公開部分も含め、雨穴自身が淡々と朗読しています。声のトーンや間のとり方など、文字だけでは伝わらない温度感がわかります。 「考察マップ」では、マップ上に物語の舞台が時系列順に整理され、クリックやタップでエピソードを確認できるようになっています。 「考察マップ」を使えば、読者は栗原の足取りを追体験することができ、作品への没入度が飛躍的に高まるでしょう。

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『変な地図』初回配本には「変なしおり」

『変な地図』変なしおり

2025年10月31日に発売された『変な地図』の単行本には、初回配本の限定購入特典として「変なしおり」がついてきます。 「変なしおり」は、作者である雨穴が首を90度傾けた変なポーズの撮り下ろし写真と、「変な地図」に描かれた古地図のイラストを使用した今しか手に入らない特製アイテム。 しおりとしてそのまま使用できるのはもちろん、点線で切り抜いて立たせたり、一緒に写真を撮る事もできる楽しい仕様になっています。

『変な地図』感想・評価は?魅力的すぎるホラー

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1枚の地図をきっかけに、少しずつ判明していく事実。ところどころに感じる違和感や嫌な予感。話の構成がしっかり練られていて、絵も多いので中弛みせず一気読みできた!なにより栗原さんの過去や人物像を知れたのがよかった。

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栗原さんのバックボーンが描かれた人怖ホラー。物語全体を通したホラー度はシリーズ屈指かも。ある程度は読者に推理させる構成も、読者を不気味がらせる重要な工夫だと思う。これまで過去の事件を辿っていく話が多かったから、現在進行形の事件を止めていくという切り口も新鮮。

『変な地図』は考察要素盛りだくさんの最新作

変な地図 雨穴

実写映画も大ヒットとなった『変な家』シリーズの最新作『変な地図』。絵も多く読みやすいと評判の本作は、過去作を含む3作の伏線すべてが回収される、考察要素盛りだくさんの作品となっています。 Kindle版や初回配本特典も含め、様々な楽しみ方ができる『変な地図』を、ぜひ手にとってみてください。