2017年7月6日更新

全編セリフなし、字幕なし!耳の不自由な少年少女の閉じた青春を描く衝撃作『ザ・トライブ』

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映画『ザ・トライブ』

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2014年のカンヌ国際映画祭で披露された問題作。出演者は全て聾唖者のためにセリフも字幕もナレーションも音楽もなし

2014年のカンヌ国際映画祭で最も衝撃的と言われたのが本作「ザ・トライブ」です。全編セリフ無し、字幕無し、ナレーション無し、音楽無しと言う型破りな映画なのです。 出演は主人公を始め、全て素人の本物の聾唖者(ろうあしゃ。耳の不自由な方)達です。あまりの衝撃的な内容にカンヌでもラスト20分の間に席を立つ人が続出したと言うほどです。 日本でも2015年4月から劇場公開され話題となった本作のDVD及びブルーレイが11月25日より発売・レンタルが開始されました。

ろう学校という閉ざされた世界で起きる少年たちの世界を正面から描く

映画『ザ・トライブ』
ろう学校に入学したセルゲイ。耳が不自由である事以外はごく普通の青年であるセルゲイ。一見平和そうに見えた学校はそんなセルゲイにとって耐え難い地獄であった。 そのろう学校では、裏で暴力や麻薬、売春などを生業にしている組織トライブ(部族)があったのだ。新参者であるセルゲイは酷い暴力を受けるが、あることがキッカケで古株の1人に認められる。 そして、セルゲイは麻薬ディーラーや売春の仲介をやり、悪の道に堕ちていく。次第に組織の中で力を持っていくセルゲイだが、リーダーの愛人アナを愛してしまう。そしてセルゲイはある決心をする。

監督はこの作品が初めての長編作品

監督のミロスラブ・スラボシュピツキーはこれが初の長編映画です。監督がこの映画を作った意図を次の様に語りました。 「本作は恐らく催眠状態と言って良い様な潜在意識下から新しい感情を呼び起こしてくれると思う」と。また「この映画は決して声の出る俳優達で作ろうとは思わなかった」と語っています。 説明的要素が一切排除されている事には「観客が一語一句理解出来なくてもパントマイムや歌舞伎の様に全体として何が起こっているのか判る事が重要だった」と言及しています。

喧嘩やリンチのシーンで誰も声を発さないため、暴力が際立つ

ろう学校が舞台と言う事で、苦難から仲間で乗り切る様なハートウォーム作品かと思ったら大間違いです。あまりのバイオレンスさに恐らくR-18作品になること必至と言える作品です。 しかし、それに驚くのは聾唖者(ろうあしゃ)へ対する偏見から起こるものかも知れません。ただ、通常の学校ではここまでの事は起こり得ないと考えるのは、やはりろう学校の閉鎖性や人々の無関心が引き起こすものでしょう。 喧嘩もリンチも誰も声を発しないので非常に静かで、逆にその対比が暴力を際立てています。また、観賞するほとんどの人が手話を理解していないので次の展開が全く読めません。 唐突なバイオレンス映像が斬新な感覚なのです。非常に陰惨な作品である意味ホラーと言っても良い程のものかも知れません。

斬新な内容に、カンヌ国際映画祭でグランプリ他3賞を受賞

あまりの斬新さに2014年、第67回カンヌ国際映画祭で批評家週間でグランプリ他全部で3賞を受賞しました。その後、世界中の映画賞にノミネートされ、結果的に30以上の賞を受賞しました。 それほど衝撃的で観るべき内容の映画だと言う事でしょう。 聾唖者だけで作ったギャング映画の様な様相の映画『ザ・トライブ』。世界的な評価を得ながらも、観客の評価はあまりの衝撃的内容に賛否両論です。 実際に数多の映画祭で途中退席が続出した事も納得の作品なのです。とは言え、この映画が投げかけた問題は、多くの人が真摯に受け止めて考えねばならない問題でしょう。陰惨な内容だけに囚われずに観賞する事が必要な作品と言えます。 なお『ザ・トライブ』は11月25日(水)よりDVD及びブルーレイにて発売・レンタルが開始されています。