静かなる情熱 エミリ・ディキンスン

静かなる情熱 エミリ・ディキンスン

A Quiet Passion
2016年製作 イギリス 125分 2017年7月29日上映
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『静かなる情熱 エミリ・ディキンスン』のスタッフ・キャスト

『静かなる情熱 エミリ・ディキンスン』の感想・評価・ネタバレ

  • s_p_n_minaco
    s_p_n_minaco 0 2017年12月3日

    寡作な天才テレンス・ディヴィス監督待望の新作は、詩人エミリ・ディキンスンの伝記というより喪女映画。しかも殆ど室内劇。あの家の中の亡霊が出てきそうな不穏さ不気味さは『遠い声、静かな暮し』の予告で観たのと同じだ…ランプの灯で照らされた部屋が何故こんなに怖いのか。時計の音や小鳥の声が何故こんなにゾッとするのか。階段をこんなに不穏に撮る監督を他に知らない。エミリの歯を見せた豪快な笑顔もまた怖い。 批判的で正直で頑なで禁欲的なエミリは決して魅力的な人物像じゃないが、同時に家族や家、親友や妹への強い連帯意識もあり、自分の世界とそれ以外の境界がハッキリしてる。とにかくああ言えばこう言う、という会話が正にマシンガントークというか、言葉の熾烈な闘いというか。単に宗教や風土の呪縛ではなく、価値観や魂の対決と分断なので現代でも充分理解出来る。そんな魂の叫びであるエミリの詩が多数引用されていて、特に惹句の「これは世界にあてた私の手紙です/私に一度も手紙をくれたことのない世界への」はグサリと刺さった。 そしてさすがシンシア・ニクソンの鬼気迫る眼力と声に射抜かれる。メイク衣装小道具の作り込みも半端なく、窓辺の机で黙々と書いた詩を豆本みたいな詩集にDIYしてるのが印象的。場面の省略も静かに劇的で、肖像写真のところはかなり怖い…。また、テレンス・ディヴィスは音楽(音)による演出が重要で、今作はオペラやピアノなどがジワジワ効いてくる。怖い映画じゃないのに、亡霊の怨念や呪詛が染み付いているかのよう。やっぱ凄えと震えるしかない。

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