アイス・キューブのプロフィール
アイス・キューブ(本名:オシェイ・ジャクソン)は、1969年6月15日生まれ、カリフォルニア州ロサンゼルス出身のラッパー/俳優です。
10代になったころからヒップホップに興味を持ち始め、高校時代にラップを書き始めます。1987年の秋からはフェニックス工業大学に通い、建築設計を学びました。
友人で同じくラッパーのサー・ジンクスとヒップホップグループC.I.A.を結成し、ドクター・ドレーのパーティーでパフォーマンスしたところ、すぐにエレクトロ・グループ、 World Class Wreckin' Cruのメンバーとして音楽業界に足を踏み入れることになりました。彼の作詞家としての才能を認めたドレは、Wreckin' Cruのヒット曲"Cabbage Patch" のアシスタントを任せました。
その後、アイス・キューブは17歳のときに地元の有名人であったイージーEに引き合わされ、ニューヨーク出身のグループのリリックを書くように依頼されました。しかし、結局それは採用されず、イージーE自身がラップをすることになり、これがストリートで大ヒットします。それを受け、アイス・キューブはドクター・ドレー、イージーEとともにハードコアラップグループ、N.W.A.を結成することになリました。
伝説的ヒップホップグループN.W.A.や、ソロでも大活躍
大人気グループN.W.A.時代
アイス・キューブは幼いころから社会問題や政治に関心を持っていたため、N.W.A.のリリックには安物のドラッグやギャングの抗争、異人種間の対立、暴力的な警察との対立などの社会問題を扱った強いメッセージが込められ、LAギャングスタ・ラップの世界に新しい風を吹き込みました。
ちなみにN.W.A.は「Niggerz With Attitude(肝の据わったニガー)」の略で、名付けたドクター・ドレーは後から何の略かわかった時に相手を怖がらせることができると考えていたといいます。
N.W.A.のファーストLP『ストレイト・アウタ・コンプトン』は、リリースから3ヶ月で100万枚以上を売り上げ、その大半を手がけたアイス・キューブは19歳で業界から一目置かれる存在となります。アルバムには『ファック・ザ・ポリス』という曲が収録されており、この曲がFBIから目をつけられてしまいました。FBIは「この曲が若者たちに警察を攻撃しろというメッセージを送っている」として、プレイしないよう警告書を出しましたが、彼らはこれを無視しました。この時期のことについて、アイス・キューブは次のように語っています。
「別にどうでもって思ってるね。オレの地元じゃ、誰もが警官を警戒するのに忙しくて、FBIなんてテレビの中の人たちって感じだし。警官のように、オレたちを追い掛け回して暴力を振るったりしない限りオッケーだよ。あの警告書もジョークだと受け止めてるくらいだ」「ほかのレコード会社や弁護士とかは震え上がってたけど、オレらは売り上げを伸ばし、自分たちの名前を売る絶好のチャンスとしか思わなかったね」
N.W.A.の屋台骨となっていたアイス・キューブですが、ギャラの関係でグループやレコード会社ともめ、1989年に突然グループを脱退し、ソロに転向しました。
ソロに転向した後
1990年5月、アイス・キューブはファースト・ソロアルバム『AmeriKKKa's Most Wanted』をリリースします。このアルバムにもまた、強烈なメッセージが込められており物議を醸しましたが、売り上げは好調でした。
その後、1991年にN.W.A.はドレーが中心となって製作したアルバム『100マイルズ・アンド・ランニン』でアイス・キューブを痛烈に非難した楽曲を発表し、それに本人が応報する形で両者がアルバムを発表するたびにディスり合いを続けていました。しかし、1995年にイージーEがエイズで亡くなる直前に和解しています。
アイス・キューブについての5つの事実
1.有名なダンスの制作に携わった
80年代に流行した「キャベッジ・パッチ」ダンスを知っていますか?アイス・キューブはこれを作るのを助け、有名にした人物のひとりです。彼は実際にドクター・ドレーが「キャベッジ・パッチ」という歌に合わせて踊るダンスを考案するのを手伝いました。
2.N.W.A.脱退後は一度もドクター・ドレーと仕事をしていない
N.W.A.から脱退した後、アイス・キューブはグループで一緒に活動していたドクター・ドレーと一度も一緒に仕事をしていません。彼は脱退後ドレーと仕事をしなかったことをとても後悔していると語っています。いつかはふたりで再結成することもあるかもしれませんね。
3.「アイス・キューブ」という名前の由来
「アイス・キューブ」という芸名を使うと決めたとき、彼は座ってアイスティーを飲んでいました。彼は自分のことを、目新しいけれども心の冷たい人間であると思っていて、それはラッパーとして成功したときになりたいイメージでもありました。芸名を決めた瞬間は、人生で最もクリエイティブでシンプルな瞬間だったと言います。
ちなみに、現在は戸籍上の名前も「アイス・キューブ」になっています。
4.この30年間、毎年1本の映画に出演している
アイス・キューブは『ボーイズ'ン・ザ・フッド』で映画デビューしてから、毎年1本映画に出演しています。彼は映画業界で30年仕事をしていますので、これまで30本の映画に出演したことになります。
5.好きな仕事は音楽?俳優業?
「ラップをしているときは自分自身になれる」とアイス・キューブは語っていますが、映画の仕事の方が収入は格段に多いです。彼はどちらの仕事も楽しんでいるようです。
アイス・キューブの主な出演映画
『ボーイズ'ン・ザ・フッド』(1991)
LAのサウスセントラルを舞台に、優等生のトレ、フットボールの名選手で妻子持ちの高校生リッキー、リッキーの兄でストリートギャングのドウボーイ。彼らはギャングに目をつけられ、ある日いざこざからリッキーが射殺されてしまいます。激怒したドウボーイは気が進まないトレを連れて報復に行きます。アメリカの黒人青年の実像を描いた問題作として、高い評価を受けました。
アイス・キューブはこの作品でドウボーイを演じ、映画デビューしました。
『スリー・キングス』(1999)
ジョージ・クルーニー主演の社会派アクション映画です。湾岸戦争休戦協定成立直後のイラクをを舞台に、アメリカ軍のゲイツ、バーロー、エルジンの3人が、捕虜から得た地図をもとに軍の指揮下を離れ、フセインの隠し金塊を無断で強奪しに行きます。しかし、同時にイラクの惨状とアメリカの行ったことを知ってしまいます。
戦争を皮肉ったブラックユーモアも盛り込まれ、戦争批判の映画となっています。アイス・キューブは、ジョージ・クルーニー演じるゲイツとともに金塊を探すエルジンを演じました。
『ゴースト・オブ・マーズ』(2011)
地球人が火星を植民地にし、天然資源を採掘している2176年。資源の尽きたシャイニング渓谷はゴーストタウンと化していました。学者が探索中に誤って火星先住民族の亡霊が解き放たれ、火星警察のバラード警部補と刑務所内で生き残った数人の囚人たちが協力して、ゴーストとの戦いを繰り広げます。
アイス・キューブが演じたジェームズ・”デゾレーション”・ウィリアムズは、火星一の犯罪者で、囚人たちのリーダー格です。
『21ジャンプストリート』(2012)
ジョニー・デップの初主演作のテレビシリーズを映画化したものです。ジョナ・ヒルとチャニング・テイタムの主演で、全米で興行収入が1億ドルを超える大ヒットとなりました。
犯罪特別捜査課に配属されたジェンコ(テイタム)とシュミット(ヒル)は、青年犯罪を撲滅するために高校で潜入捜査をすることになりますが、彼らは高校生活を本気で楽しんでしまうようになります。ところが、そこで凶悪犯罪を目の当たりにします。
この作品でアイス・キューブは主人公2人の上司、ディクソン警部を演じています。
自身の伝記映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』をプロデュース
アイス・キューブは2015年に自身の伝記映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』をプロデュースしました。これは、彼自身が在籍していた伝説のヒップホップグループN.W.A.の結成から分裂、そして実現しなかった再結成直前までを描いたものです。
ギャングスタ・ラップというジャンルを確立した同グループの当時の様子を丁寧につづり、彼らの活動がどのような意味を持っていたのかを見せる映画となっています。
治安の悪い地区に住む黒人青年であるというだけで、何もしていなくても警察官に殴られ、ねじ伏せられる生活の不条理を訴えるために、ヒップホップグループを結成した背景や、仲の良かった仲間が金銭的な問題で対立してしまうやるせなさを描いています。
『ストレイト・アウタ・コンプトン』のプロデューサーにはアイス・キューブだけでなく、ドクター・ドレーや亡くなったイージーEの妻も名を連ねています。
息子のオシェイ・ジャクソン・Jr.とそっくり!映画で息子が父を演じた
映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』で若き日のアイス・キューブを演じたのは彼の実の息子、オシェイ・ジャクソン・Jr.です。このキャスティングで、親子があまりにも似ていると話題になりました。
写真左が息子のオシェイ・ジャクソン・Jr.で、右が当時のアイス・キューブです。
アイス・キューブの今後の出演作品
『Ride Along 2(原題)』(2016)
結婚式が近づくなか、ベンはマイアミへ行き、もうすぐ義兄となるジェームズとともにドラッグ・ディーラーを捕まえる潜入捜査を開始します。しかし、ベンの軽率でお調子者な性格のため、必要以上に騒動が起きてしまうアクション・コメディです。
アイス・キューブは麻薬取締捜査官のジェームズを演じます。
『Fist Fight(原題)』(2016)
チャーリー・デイ演じる教師が同僚の教師(アイス・キューブ)をクビにさせたことから、2人の放課後のケンカが始まるコメディ映画です。
『Barbershop: The Next Cut(原題)』(2016)
カルヴィンの理髪店に10年以上ぶりに集まった仲間たち。カルヴィンも他の従業員も変わらずそこにいましたが、店はすっかり変わってしまっていました。昔は男性客だけだった店に今は女性も集まり、聞こえてくる話題もドラマの話やゴシップになっています。あるとき、地域の治安を改善するため理髪店のメンバーたちは、地域の住民に無料でヘアカットをすることにします。
家族や地域の住民とのつながりを感じられるあたたかいコメディ映画で、アイス・キューブは理髪店の店主カルヴィンを演じます。
『xXx: The Return of Xander Cage(原題)』(2017)
事故のために死んだと思われていたザンダー・ケイジは実は生きており、NSAの工作員アウグストゥス・ギボンズの指示で新しく大変な任務についていました。
前作でトリプルXを演じたアイス・キューブが今回も出演するのではないかと噂されています。