2017年7月6日更新

ヴィム・ヴェンダース、『さすらい』を生んだ巨匠の軌跡を辿る!

ヴィム・ヴェンダース

70年代から映画界の一線で活躍しつづけるドイツの映画監督、ヴィム・ヴェンダース。日本とのゆかりも深い彼の主な作品やその評価についてご紹介します。名作ぞろいのフィルモグラフィーには、あなたも観たことのある作品があるのではないでしょうか。

ヴィム・ヴェンダースのプロフィール

ヴィム・ヴェンダースは1945年8月14日生まれ、デュッセルドルフ出身のドイツの映画監督です。ドイツのロードムービーの旗手として、またニュー・ジャーマン・シネマの立役者として知られています。

寄宿学校卒業後、大学で医学や哲学を専攻しましたが、どちらの道も断念し、1966年に画家を志してパリに移住しました。

しかし、高等映画学院の入試に失敗し、翌年、映画配給会社ユナイテッド・アーティスツのデュッセルドルフ・オフィスで働くために帰国します。同年秋に、ミュンヘンテレビ・映画大学に入学しました。

1976年から映画監督としての活動を開始。その後3年間で9本の映画を製作しました。1972年に発表した『ゴールキーパーの不安』がヴェネチア国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞し、以後一線で活躍をつづけています。

ヴィム・ヴェンダースの主な監督映画

自由な精神あふれるロードムービーの傑作【1972】

『都会のアリス』、『まわり道』につづくヴェンダースのロードムービー三部作の第三作目です。

各地の映画館を巡り、映写機を修理しながら旅をするブルーノは、ある日一台の車が猛スピードで川に突っ込むのを目撃します。川から脱出した男とともに、トラックは東西ドイツ国境沿いを走り続けていきます。

主人公らと一緒に旅をしながら即興で演出をつけていったというこの作品は、宮崎駿の『ルパン三世 カリオストロの城』や青山真治の『EUREKA』に影響を与えたと言われています。

この作品でヴェンダースは、第29回カンヌ国際映画祭国際映画批評家連盟賞を受賞しました。

美しい風景に人間の哀愁が漂うロードムービー【1984】

兄のトラヴィスがテキサスの砂漠に倒れていると連絡を受け、迎えに行く弟のウォルト。4年前に妻子を置いて姿を消したトラヴィスは、彼らの両親にゆかりのあるテキサス州パリスに土地を買ってあるとウォルトに告げます。

ロサンゼルスの自宅にトラヴィスが到着すると、そこには息子のハンターがいました。トラヴィスは今度はハンターとともに、妻を探してテキサスへと旅立つことになります。

第42回ゴールデングローブ賞最優秀外国語映画賞にノミネートされた『パリ、テキサス』は、第37回カンヌ国際映画祭ではパルムドールと国際映画批評家連盟賞を受賞しました。

10年ぶりに故郷で撮影した切ないラブストーリー【1987】

人間の長い歴史を見届けてきた守護天使ダミエルは、あるとき親友のカシエルに人間になりたいという願いを打ち明けます。それは、天使としての永遠の命を放棄することでもあるのですが、サーカスの美しい空中ブランコ乗りに恋をしたダミエルは、ついに壁に隔てられた街・ベルリンに人間となって降り立ちます。

この作品は、第40回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞。日本ではそれまでの単館公開記録を塗り替え、当時のミニシアターブームも相まって社会現象となりました。

世界中で空前のキューバ音楽ブームを起こした傑作【1999】

『パリ、テキサス』のサントラも手掛けたアメリカのギタリスト・ライ・クーダーと、彼のグラミー賞受賞アルバム「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」に参加したキューバの老ミュージシャンたちとその後を追った作品です。

アムステルダムと、ニューヨークのカーネギーホールでの公演のシーン以外はすべてキューバで撮影され、それまで知られていなかった名プレイヤーたちにスポットを当てました。

天才振付家の躍動を3D映像でとらえたドキュメンタリー【2011】

2009年に亡くなったドイツの振付家ピナ・バウシュをテーマにしたドキュメンタリーで、3D映画として制作されました。

長年の友人であったバウシュと20年以上前から彼女の映画を製作すると約束していたヴェンダースでしたが、「彼女の踊りの美しさを映像化するすべがない」と計画は進んでいませんでした。しかし、2008年にデジタル3D技術を使うことでこの問題をクリアし、映画化にこぎつけることができました。

生前にバウシュ自身が選んだ4つの演目と、彼女が残したヴッパタール舞踏団のダンサーたちの追悼メッセージが収められています。

写真展「尾道への旅」を日本で開催

ヴィム・ヴェンダースが妻で写真家のドナータ・ヴェンダースとともに京都から尾道、鞆の浦、直島を旅して撮影した写真を集めた写真展「尾道への旅」が、2006年4月から5月にかけて、表参道ヒルズのイベントスペース「O(オー)」で開催されました。

ヴェンダースが風景を、夫人がモノクロ写真で人物を撮影した作品をあつめた展示です。日本の映画監督、小津安二郎のファンであるヴェンダースが、『東京物語』の第二の舞台となった尾道へのオマージュをちりばめたドキュメンタリー映像も上映されました。

本業の映画と写真との関連について、ヴェンダースは以下のように語っています。

『私の職業は“旅人”というのが正しいかもしれない。映画にしても写真にしても、“場所”をテーマにした作品を多く手掛けているからね。 ただし、映画の場合、ストーリーやキャラクターがメインになるので、“場所”はあくまでもバックグラウンド=背景でしかない。けれども、写真の場合は、“場所”が前景=主人公になりえるんだ。そういう意味で写真が好きなんだ。今まで見たことのない新しい風景に出会えるしね。』
引用:j-wave.co.jp

ヴィム・ヴェンダースのアカデミー賞ノミネート歴がすごい!

ドキュメンタリー映画の巨匠であるヴェンダースは、これまで数々の作品で高い評価を受けています。その中でも、アカデミー賞にノミネートした作品を紹介していきましょう。

長編ドキュメンタリー賞

『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(第72回/2000年) 『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(第84回/2012年) 『セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター』(第87回/2015年)ーこの作品は、第67回カンヌ国際映画祭ある視点部門では最優秀作品賞を受賞しています。

このほか『ことの次第』(1982)で第39回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞するなど、ヨーロッパの映画祭でも数多くの賞にノミネート、受賞しています。

71歳になっても映画を撮り続けるヴィム・ヴェンダース

1945年生まれのヴェンダースですが、現在も精力的に映画製作を続けています。これから公開される作品もあり、今後もまだまだ現役で活躍するのではないでしょうか。

6人の映画監督が思い入れのある建物を撮るドキュメンタリー【2016】

ヴェンダースのほか、オーストリアのドキュメンタリー作家ミハエル・グラウガー、デンマークの映画監督マイケル・マドセン、ロバート・レッドフォードらが「もしも建物が話せたら、なにを語るだろう」という問いをテーマに描いたドキュメンタリー作品です。

ヴェンダースは、製作総指揮も務めており、日本では2016年2月20日に公開される予定です。

悲劇から立ち直るための贖罪『誰のせいでもない』【2015】

妻との口論の後、頭を冷やすためドライブをしていた作家のトマスは、子供をひき殺す事故を起こしてしまいます。その後11年間にわたり葛藤するトマスは、子供を失った母親との交流で立ち直ることができるのでしょうか。

主人公のトーマスにジェームズ・フランコ、子供を亡くした母親にシャルロット・ゲンズブール、トーマスの妻役にレイチェル・マクアダムスを迎えたこの作品は、心理描写を3Dで表現することに挑戦し話題になっています。2016年11月12日に日本で公開されました。

スペインの美しい街で現代の人間関係の危うさを描く『アランフエスの麗しき日々』【2016】

美しいスペインの街・アランフエスを舞台に、気持ちが離れたなかでも肉体関係を続ける危うい人間関係と道徳的な葛藤を描いた物語。

『ベルリン・天使の詩』から30年近くの時を経て再びペーター・ハントケの作品を映画化した本作は、「初めて100%自分の思いのままに撮り上げた」というヴェンダースの意欲作。二人の男女の会話を軸として繰り広げられる実験的な作品となっています。

日本では2017年12月16日に公開されました。